日本で見られるアリの種類 | 特徴や巣、暮らし方を解説

蟻や蜂の仲間

アリは、公園や庭、道路脇などで日常的に見かける、とても身近な昆虫です。

普段はひとまとめに「アリ」と呼んでいますが、日本には多くの種類が暮らしています。1cmを超える大型種もいれば、数mmほどしかない小さな種類もいて、体の色や巣を作る場所、食べ物、群れの仕組みまでさまざまです。

さらに、一つの巣に複数の女王がいる種類や、一般的な女王アリを持たない種類、ほかのアリの働きアリに巣の仕事を任せる種類までいます。

ここでは、日本で見られる代表的なアリのなかから、身近な種類や特徴的な暮らしをする種類を紹介します。


クロオオアリ

クロオオアリは、日本で普通に見られる大型のアリです。働きアリの体長は7〜13mmほどで、日本に生息するアリのなかでも最大級の大きさになります。

全身はほぼ黒色で、大型の働きアリでは頭部も大きく発達します。公園や草地、道路脇などの日当たりのよい場所でも見られるため、「大きな黒いアリ」として目にしたことがある人も多いでしょう。

巣は主に地中に作られます。地上ではアブラムシなどが出す甘露や植物の蜜を利用するほか、小さな昆虫を捕らえたり、死んだ昆虫を巣へ運んだりします。

同じ巣でも大きさが違う

クロオオアリを観察すると、大きな働きアリと、それよりかなり小さな働きアリが一緒に歩いていることがあります。

同じ種類、同じ巣の働きアリでも体の大きさに幅があるため、「大きさが違うアリは必ず別の種類」というわけではありません。

アリを見分けるときには、大きさだけでなく、体の形や色、毛の生え方なども手がかりになります。

クロヤマアリ

クロヤマアリも、日本の公園や草地などでよく見られる身近なアリです。

働きアリの体長は4.5〜6mmほどで、クロオオアリよりかなり小さくなります。体色は黒から黒褐色で、一見するとクロオオアリを小さくしたようにも見えます。

日当たりのよい地面に巣を作ることが多く、地下には複雑な巣が広がっています。アブラムシの甘露や植物の蜜を利用するほか、昆虫の死骸なども食べます。

クロオオアリとの見分け方

野外でクロオオアリとクロヤマアリを見分けるときは、まず大きさを見るのが分かりやすいでしょう。

クロオオアリは大型の働きアリなら1cmを超えますが、クロヤマアリは5mm前後です。近くに両方がいれば、体格の違いはかなりはっきりしています。

体形にも違いがあります。横から見るとクロオオアリの胸部は比較的なだらかな曲線を描きますが、クロヤマアリでは形が異なります。ただし、小さなアリを肉眼だけで細かく観察するのは難しいため、身近な場所での識別では大きさが重要な手がかりになります。

女王が複数いる巣もある

「一つのアリの巣には女王が1匹いる」というイメージがありますが、すべてのアリに当てはまるわけではありません。

クロヤマアリでは、地域や集団によって女王の数が異なることが知られています。一つの巣に1匹の女王が暮らす場合だけでなく、複数の女王が同じ巣で暮らす集団もあります。

アリの群れの仕組みは、種類だけでなく、同じ種類のなかでも一様とは限りません。

ムネアカオオアリ

ムネアカオオアリは、クロオオアリと並ぶ日本最大級のアリです。働きアリの体長は8〜12mmほどで、北海道から九州まで分布しています。

頭部と腹部は黒く、胸部を中心に赤褐色になるのが名前の由来です。ただし、色の濃さには個体差や地域差があり、かなり黒っぽく見える場合もあります。

クロオオアリが開けた場所でもよく見られるのに対し、ムネアカオオアリは森林との関わりが深い種類です。山地の林などに多く、朽ち木の内部や立ち木の根元、腐朽した木材などに巣を作ります。

食べ物は昆虫などの動物質だけではありません。植物の蜜や、アブラムシ・カイガラムシが出す甘露も利用します。

トビイロケアリ

トビイロケアリは、働きアリの体長が2.5〜4mmほどの小さなアリです。名前はあまり知られていませんが、日本各地で普通に見られる種類の一つです。

体は黒褐色で、細かな毛に覆われています。土の中や石の下だけでなく、朽ちた木材などにも巣を作り、人家の周辺で見つかることもあります。

小さな体に対してコロニーは大きくなることがあり、多数の働きアリが木の幹や植物の茎を行き来している姿が見られます。

アブラムシとの関係

トビイロケアリは、アブラムシやカイガラムシが出す「甘露」をよく利用します。

アブラムシなどは植物の汁を吸い、その中に含まれる余分な糖分を甘露として排出します。アリにとっては重要な食べ物です。

アリは甘露を得る一方、アブラムシを襲うほかの昆虫を追い払うことがあります。このように、両者がお互いに利益を得る関係が見られます。

トビイロケアリは、木や構造物の表面に土などを使った通路を作ることもあります。見た目がシロアリの蟻道に似ているため、人家ではシロアリと間違えられることもあります。

アミメアリ

アミメアリは、体長2.5mm前後の小さなアリです。日本では北海道から南西諸島まで広く見られ、庭、公園、林など身近な環境にも暮らしています。

頭部や胸部の表面には細かな網目状の模様があり、「アミメアリ」という名前もここから付けられています。

体は小さいものの、その社会の仕組みはほかの多くのアリとは大きく異なります。

働きアリが卵を産む

一般的なアリの巣では、女王が繁殖を担当し、働きアリは餌集めや幼虫の世話などを行います。

ところが、アミメアリでは通常、翅を持つ女王の階級がありません。働きアリ自身が受精せずにメスの子どもを作る「単為生殖」によって、コロニーを増やします。

若い働きアリは巣の中で産卵を行い、年齢を重ねると外へ出て餌を集めるようになります。つまり、同じ働きアリでも年齢によって役割が変化します。

ただし、「アミメアリには女王もオスもまったく存在しない」とする説明は正確ではありません。通常の翅を持つ女王階級はありませんが、一部のコロニーでは通常の働きアリより大型で、繁殖能力の高い無翅のメスが見つかります。また、オスが生じる例も知られています。

頻繁に引っ越す

アミメアリは、一つの巣を長期間使い続けるタイプのアリではありません。

石の下や朽ち木などを一時的な巣として利用し、環境の変化などに合わせてコロニー全体で移動します。大きな集団では数万匹以上になることもあり、引っ越す際には長い行列ができます。

地面を小さなアリが途切れることなく移動していたら、アミメアリの引っ越しに出会っているかもしれません。

サムライアリ

サムライアリは、ほかのアリを利用して暮らす特殊な生態で知られています。

細長く発達した大あごを持ち、夏になると多数の働きアリが隊列を作って、クロヤマアリなどの巣へ向かいます。

しかし、相手の巣そのものを奪い取って住み着くわけではありません。サムライアリには自分たちの巣があります。

ほかのアリの幼虫や蛹を連れ帰る

サムライアリの働きアリは、主にクロヤマアリの巣へ侵入し、幼虫や蛹を自分たちの巣へ運びます。

連れ帰られた幼虫や蛹はサムライアリの巣で成長します。成虫になったクロヤマアリは、そこで餌集めや幼虫の世話などを行うようになります。

この行動は古くから「奴隷狩り」と呼ばれてきました。生物学では、ほかのアリに巣の仕事を依存する社会寄生の一例として研究されています。

サムライアリの働きアリは戦いや襲撃に特化しており、巣の中のさまざまな仕事を、連れ帰ったアリに大きく依存しています。

クロヤマアリがいなければ暮らせない

日本ではクロヤマアリがサムライアリの代表的な宿主です。ハヤシクロヤマアリなど、近縁の種類を利用する例も知られています。

サムライアリが生活するには、こうした宿主となるアリが周囲に生息していることが欠かせません。

名前は勇ましいものの、単独で何でもこなすアリではありません。他種の社会を利用することに極端に特化した、非常に変わった暮らし方をするアリです。

番外編 日本にもグンタイアリの仲間がいる

世界には、多数の働きアリが集団で移動しながら獲物を捕らえる「グンタイアリ」と呼ばれるアリたちがいます。

特に中南米のグンタイアリやアフリカのサスライアリは、大群で地面を移動する姿で有名です。昆虫やそのほかの小動物を集団で捕らえるため、テレビ番組などで見たことがある人もいるでしょう。

日本にも、これらと似た「軍隊アリ型」の生活をするヒメサスライアリ属の仲間が分布しています。

日本の種類は非常に小さい

日本で知られるヒメサスライアリの一種は、南西諸島に分布しています。沖縄島や西表島から標本が確認されており、常緑広葉樹林などに生息します。

働きアリは2〜3mmほどしかありません。

そのため、テレビで見るような大型のアリが巨大な群れで動物を襲う姿とはかなり印象が違います。日本にもグンタイアリ型の生活をする仲間はいますが、非常に小さく、野外で簡単に見つけられるアリではありません。

同じアリでも暮らし方は大きく違う

今回紹介した種類だけを比べても、アリの社会が一つの形ではないことが分かります。

クロオオアリやクロヤマアリのように地面に大きな巣を作る種類がいる一方、ムネアカオオアリは朽ち木を利用します。トビイロケアリはアブラムシなどと深く関わり、アミメアリでは働きアリ自身が単為生殖によって仲間を増やします。

さらに、サムライアリはほかの種類の働きアリに巣の仕事を依存しています。同じアリ科に属していても、繁殖方法や巣の作り方、仲間との関係は驚くほど多様です。

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まとめ

  • クロオオアリは日本最大級のアリで、開けた場所の地中に巣を作ります。
  • クロヤマアリは公園や草地などで普通に見られ、複数の女王が暮らす巣もあります。
  • ムネアカオオアリは森林との関係が深く、朽ち木や立ち木の根元などに巣を作ります。
  • トビイロケアリはアブラムシやカイガラムシの甘露をよく利用します。
  • アミメアリでは通常の翅を持つ女王階級を欠き、働きアリが単為生殖を行います。
  • サムライアリはクロヤマアリなどの幼虫や蛹を連れ帰り、その働きアリに巣の仕事を任せます。
  • 日本の南西諸島には、小型のヒメサスライアリの仲間も生息しています。

普段は何気なく通り過ぎてしまうアリですが、種類を調べてみると、大きさだけでなく社会の仕組みまで大きく違うことが分かります。

公園や庭でアリを見つけたら、まずは体の大きさや色、どんな場所から出てきたのかを観察してみてください。身近な足元にも、それぞれ異なる暮らし方を持つアリたちの世界が広がっています。

主要参考文献

  • Japanese Ant Database Group『Ants of Japan』
  • Tsuji & Dobata (2011) “Social cancer and the biology of the clonal ant Pristomyrmex punctatus”
  • Hasegawa & Yamaguchi (1995) サムライアリの奴隷狩り行動に関する研究
  • Jaitrong & Yamane (2013) ヒメサスライアリ属の分類研究

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