ケヅメリクガメは、アフリカの乾燥した地域に暮らす大型のリクガメです。
販売されている幼体は小さくても、成長すると甲長60cmを超え、大型のオスでは80cmを超えることがあります。体重が100kgを超える例もあり、成体になると一般的な爬虫類用ケージでは飼育できません。
さらに寿命も長いため、飼育を始める前に将来のスペースや設備まで考えておく必要があります。
この記事では、ケヅメリクガメの大きさや特徴をはじめ、飼育スペース、温度、湿度、紫外線、餌、水、寿命などについて紹介します。
ケヅメリクガメとは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | ケヅメリクガメ |
| 学名 | Centrochelys sulcata |
| 英名 | African spurred tortoise、Sulcata tortoise |
| 分布 | アフリカのサヘル地域を中心とした乾燥地 |
| 大きさ | 大型のオスでは甲長80cmを超えることがある |
| 体重 | 大型個体では100kgを超えることもある |
| 食性 | 植物食 |
| 寿命 | 50年以上生きることがある |
ケヅメリクガメは、サハラ砂漠の南側に広がるサヘル地域を中心に分布しています。
乾燥したサバンナや草原、低木のある場所などで暮らし、暑さや乾燥を避けるために地面へ長い穴を掘ります。野生では10mを超える巣穴が確認されることもあります。
名前の由来になっているのが、後ろ脚の付け根付近にある大きな突起です。
アフリカ大陸に生息するリクガメでは最大で、現生のリクガメの中でも特に大型になる種類です。
小さな幼体も大きく成長する
ケヅメリクガメを飼育するうえで、まず考えておきたいのが成長後の大きさです。
生まれたばかりの幼体は甲長5cmほどしかありません。しかし、成長すると大型のオスでは甲長80cmを超え、体重100kg以上になることがあります。
体が大きくなるだけでなく、歩いたり物を押したりする力も強くなります。屋外では地面を掘って柵の下から脱走することもあります。
幼体の大きさだけを基準に飼育設備を考えず、成体になったときに広いスペースを用意できるかまで考えておきましょう。
ケヅメリクガメの飼育環境
幼体でも広めのスペースを用意する
小さな幼体であれば室内飼育が可能です。
ただし、ケヅメリクガメは成長すると急速に飼育場所が手狭になります。小型の水槽やケージを長期間使い続けることはできません。
幼体の段階から、歩き回れる場所だけでなく、暖かい場所と涼しい場所を作れるだけの広さを確保します。
成長に合わせて飼育場所を拡張し、大型になった後は専用の室内スペースや屋外の飼育場所が必要になります。
成体には大きな飼育場所が必要
成体になると、一般的な爬虫類用ケージでの飼育は難しくなります。
十分に歩き回れる広い場所を用意し、屋外では頑丈な柵で囲います。
ケヅメリクガメは穴掘りが得意なので、柵の下から脱走できない構造にすることも重要です。大型個体はかなり力が強く、弱い柵を押したり壊したりすることもあります。
また、日なたと日陰の両方を作り、暑くなったときに自分で涼しい場所へ移動できるようにします。
日本では一年中屋外だけで飼育することは難しいため、寒い時期に利用できる加温された小屋や室内スペースも必要です。
ケヅメリクガメは冬眠するリクガメではありません。
床材
室内飼育では、土を主体とした床材などが利用できます。
ケヅメリクガメは地面を掘るため、ある程度の厚みを持たせると自然な行動を取りやすくなります。
一方で、餌と一緒に飲み込みやすい床材には注意が必要です。特に餌を直接床材の上へ置くと、食事と一緒に床材を口へ入れてしまうことがあります。
餌は皿やトレーの上で与えると安心です。
糞や食べ残しはこまめに取り除き、汚れた床材も交換して清潔な状態を保ちます。
温度
ケヅメリクガメの飼育では、飼育場所全体を同じ温度にするのではなく、暖かい場所と涼しい場所を作ります。
室内では日中の環境温度を25~30℃前後に保ち、バスキングライトの下には35~40℃前後の暖かい場所を作る方法があります。
反対側には温度の低い場所を設け、カメ自身が移動して体温を調節できるようにします。
夜間は昼間より温度を下げることができますが、幼体を低温にさらさないよう注意します。室内飼育では20℃前後を下回らないよう管理する方法が一般的です。
使用するライトや測定場所によって表示される温度は変わるため、温度計を複数設置して確認すると管理しやすくなります。
野生では非常に高温になる地域にも生息していますが、暑い時間帯には巣穴や日陰へ逃げ込みます。そのため、飼育場所全体を高温にするのではなく、暑さから逃げられる場所を必ず用意します。
乾燥させすぎにも注意する
ケヅメリクガメは乾燥した地域に暮らすリクガメです。
しかし、飼育環境を常にカラカラに乾燥させればよいわけではありません。
野生では地面に巣穴を掘り、地表とは温度や湿度の異なる場所を利用しています。特に小さな幼体では、慢性的な乾燥を避けることが重要です。
ケヅメリクガメの幼体を使った研究では、乾燥した環境で飼育した個体ほど、甲羅が山状に盛り上がる「ピラミッディング」が強く現れました。
飼育下では通気性を確保しながら、湿度を保てるシェルターや少し湿った場所も作り、カメ自身が選べるようにします。
低温でじめじめした環境が続くことも避け、温度・湿度・換気のバランスを取ることが大切です。
紫外線ライトとバスキングライト
室内で飼育する場合は、UVBを含む紫外線ライトと、体を温めるためのバスキングライトを用意します。
UVBは体内でビタミンD3を作り、カルシウムを利用するために重要です。不足すると甲羅や骨の正常な成長に影響することがあります。
紫外線ライトは「10.0」などの製品表示だけで判断するのではなく、製品ごとに指定されている照射距離を確認して設置します。
ガラスやアクリル板を通すとUVBの多くが遮られるため、ライトとカメの間にこうした素材が入らないようにします。
暖かい季節には自然の日光を利用することもできます。ただし、屋外では必ず日陰やシェルターを用意し、暑くなりすぎないようにします。
シェルター
飼育場所には、ケヅメリクガメが体全体を隠せるシェルターを用意します。
野生では巣穴を使って強い日差しや暑さから逃れています。
飼育下でも、バスキングライトの下だけでなく、暗く落ち着ける場所や涼しい場所を作ります。
幼体では市販のシェルターも使用できますが、成長すると入れなくなるため、大型個体では専用の小屋などが必要になります。
水はいつでも飲めるようにする
ケヅメリクガメは乾燥地域に暮らしていますが、飲み水が必要ないわけではありません。
飼育下では、いつでも新鮮な水を飲めるようにしておきます。
水入れはカメが簡単に出入りできる浅いものを使用します。深い容器では出られなくなる危険があるため、体の大きさに合わせて選びます。
ケヅメリクガメは水入れの中で排泄することもあるため、水が汚れたら交換します。
小さな幼体では、浅いぬるま湯につける方法が水分補給の補助として利用されることもあります。
ケヅメリクガメの餌
ケヅメリクガメは植物を中心に食べます。
野生では草などの繊維質の多い植物を利用しており、飼育下でも草や牧草、野草などを餌の中心にします。
餌として利用できるものには、次のようなものがあります。
- イネ科の草
- チモシーなどの牧草
- タンポポ
- オオバコ類
- クローバー
- ハイビスカスの葉や花
- ウチワサボテン
- 各種の葉野菜
同じ種類だけを与え続けず、複数の植物を組み合わせます。
野草を採取する場合は種類を確実に確認し、農薬や除草剤が使用された可能性のある場所から採らないようにします。
果物は主食にしない
果物はケヅメリクガメの主食には向いていません。
糖分が多く、ケヅメリクガメが本来食べている草とは栄養のバランスが大きく異なります。
日常的に果物を与える必要はなく、草や牧草、野草、葉物を中心にした食事を基本にします。
野菜だけに偏るのではなく、繊維質の多い植物をしっかり食べられるようにすることがポイントです。
動物性の餌は基本的に必要ない
ケヅメリクガメは植物食なので、肉や昆虫などの動物性の餌を積極的に与える必要はありません。
以前は「タンパク質を与えると甲羅がデコボコになる」と単純に説明されることもありましたが、甲羅のピラミッディングには一つだけではなく、さまざまな飼育条件が関係しています。
ケヅメリクガメを使った研究では、餌に含まれるタンパク質量よりも、飼育環境の湿度の違いの方が大きな影響を示しました。
餌だけに原因を求めず、紫外線、水分、温度、成長速度などを含めた飼育環境全体を整えることが大切です。
カルシウムも大切
甲羅や骨の成長にはカルシウムが必要です。
カルシウムを含む植物を取り入れながら、必要に応じてリクガメ用のカルシウム補助剤などを利用します。
ただし、サプリメントは多ければよいというものではありません。
餌の内容やUVBライトの使用状況によって必要量も変わるため、特定の回数を一律に決めるより、食事と飼育環境全体のバランスを考えます。
餌は日常的に食べられる環境を作る
ケヅメリクガメは草を食べながら長い時間を過ごします。
そのため、草や牧草などの低カロリーで繊維質の多い餌を日常的に食べられる環境が向いています。
屋外飼育では、安全な草を飼育場所に生やし、自分で食べられるようにする方法もあります。
一方で、栄養価の高い餌を大量に与え続け、急激に体重を増やさないようにします。
幼体では定期的に体重を測っておくと、成長の変化にも気づきやすくなります。
健康状態も確認する
毎日の世話では、餌を食べているかだけでなく、体の状態も確認します。
特に見ておきたいのは次のような部分です。
- 食欲
- 体重
- 糞や尿酸の状態
- 目や鼻の状態
- 呼吸の様子
- 甲羅の成長
- 歩き方
食欲が落ちた状態が続く、鼻水が出る、呼吸の様子がおかしい、急激に体重が減るなどの変化があれば、爬虫類を診察できる動物病院へ相談します。
大型になる種類なので、飼育を始める前に診察してもらえる動物病院を探しておくと安心です。
ケヅメリクガメの寿命
ケヅメリクガメは非常に長寿なリクガメです。
飼育下では50年以上生きることがあり、飼育資料では50~80年ほどの寿命が目安として紹介されることもあります。
そのため、飼育を始めるときには現在の生活環境だけでなく、10年後や20年後にも大型のカメを飼育できるかを考える必要があります。
小さな幼体から飼育を始めても、付き合いは数十年単位になる可能性があります。
まとめ
ケヅメリクガメの飼育で覚えておきたいポイントは次のとおりです。
- 大型のオスでは甲長80cmを超え、体重100kg以上になることがある
- 成体になると非常に広い飼育スペースが必要になる
- 草や牧草、野草など繊維質の多い植物を餌の中心にする
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
- 室内ではUVBライトとバスキングライトを使用する
- 幼体は慢性的に乾燥させないよう注意する
- 50年以上生きる可能性を考えて飼育を始める
ケヅメリクガメは、小さな幼体からは想像できないほど大きく成長します。
飼育を始める場合は、現在用意できるケージだけではなく、大型になった後の飼育場所や冬場の設備まで考えておくことが大切です。
主要参照元
- Merck Veterinary Manual「Management and Husbandry of Reptiles」
- Merck Veterinary Manual「Nutrition in Tortoises」
- IUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group「Centrochelys sulcata」
- LafeberVet「Care of the Sulcata or African Spurred Tortoise」
- Wiesner, C. S. & Iben, C. (2003)「Influence of environmental humidity and dietary protein on pyramidal growth of carapaces in African spurred tortoises」

