キジの生態と特徴 | 鳴き声や繁殖、国鳥としての歴史を解説

鳥類

『桃太郎』で犬やサルとともに鬼退治へ向かう鳥として、日本人にはよく知られているキジ。

春になると、田畑や河川敷の近くから「ケン、ケーン」という大きな声が聞こえてくることがあります。声の主であるオスは、緑色に輝く体と赤い顔、長い尾を持つ非常に目立つ鳥です。

一方、メスは地面や枯れ草に溶け込むような茶褐色をしています。

キジは日本に自然分布する固有の鳥で、国鳥としても知られています。昔話や俳句、ことわざにもたびたび登場し、日本文化との関わりが深い鳥でもあります。

今回は、そんなキジの特徴や生息地、食べ物、鳴き声、繁殖、人との関係について紹介します。


日本に固有のキジ

キジはキジ科に属する鳥で、本州、四国、九州とその周辺の島々に自然分布しています。

基本的には一年を通して同じ地域で暮らす留鳥です。ただし、雪の多い山地では冬になると標高の低い場所へ移動することがあります。

以前はユーラシア大陸に広く分布するタイリクキジの一部として扱われることもありましたが、日本鳥学会が2024年に発行した『日本鳥類目録 改訂第8版』では、キジを独立した種として掲載しています。

北海道などには大陸系のキジもいる

日本固有のキジは、北海道には自然分布していません。

一方、北海道や対馬などには、狩猟などを目的として人為的に持ち込まれた大陸系のキジが定着しています。一般に「コウライキジ」と呼ばれてきた鳥です。

本州、四国、九州の一部にも大陸系のキジが移入された地域があります。

そのため、日本国内で見られるキジの仲間が、すべて日本固有のキジというわけではありません。

オスとメスで大きく姿が違う

キジは、オスとメスで羽の色が大きく異なります。

オスはメスより体が大きいうえ、特に尾が長く伸びます。

オスは緑色に輝く

オスの胸は黒っぽく、暗い緑色の金属光沢があります。首や頭も青緑色に輝き、光の当たり方によって青や紫がかった色に見えることがあります。

目の周囲には羽毛のない赤い皮膚が広がり、繁殖期になるとさらに目立つようになります。

長い尾は灰色から緑がかった色で、黒い横縞が並びます。

日本の野鳥のなかでも、かなり華やかな姿をした鳥です。

メスは茶褐色

メスはオスとは対照的に、全身が黄褐色から茶褐色です。

黒っぽい模様も入っており、地面や枯れ草の中では目立ちにくくなります。

キジは地上に巣を作り、メスが卵を抱くため、周囲に溶け込む羽色は巣で過ごす際にも役立ちます。

田畑や草地で暮らす

キジは深い森林の中よりも、草地や農耕地と林が入り交じった開けた環境をよく利用します。

生息地としては、

  • 農耕地
  • 河川敷
  • 草原
  • 雑木林とその周辺
  • 竹や笹の茂み
  • 丘陵地

などが挙げられます。

田畑の近くや住宅地に残された草地に現れることもあり、人の生活圏から遠く離れた鳥ではありません。

ただし、地上を歩きながら草むらに隠れていることが多いため、近くに暮らしていても姿を見る機会が少ない場合があります。

春になるとオスがよく鳴くため、姿よりも先に声で存在に気づくこともあります。

地上を歩いて食べ物を探す

キジは地上で過ごすことの多い鳥です。

飛ぶこともできますが、普段は地面を歩きながら食べ物を探します。

食性は雑食性で、植物では葉や芽、花、種子、木の実、果実、穀物、根などを利用します。

動物では、

  • バッタ
  • コオロギ
  • 甲虫
  • アリ
  • クモ
  • カタツムリ
  • ナメクジ
  • チョウやガの幼虫

など、さまざまな小動物を食べます。

季節や生息地によって、利用する食べ物も変わります。

「ケンケン」というキジの鳴き声

春になると、オスは「ケンケン」「ケーンケン」などと聞こえる大きな声で鳴くようになります。

特に繁殖期によく聞かれる鳴き声で、オスは数分おきに繰り返し鳴くことがあります。

この声には、ほかのオスに自分の存在を知らせて縄張りを守る役割があります。また、メスに自分の存在を知らせる働きもあると考えられています。

鳴き声から個体を見分けられる

キジの鳴き声には個体差があります。

オスの鳴き声を詳しく調べた研究では、声の長さや高さ、音の特徴などを組み合わせることで、それぞれの個体を区別できることが確認されています。

人間の声に一人ひとり違いがあるように、キジの「ケンケン」にも個性があるのです。

鳴いた直後に行う「母衣打ち」

オスは「ケンケン」と鳴いた直後、翼を激しく動かして「ドドドドッ」という大きな羽音を立てます。

この行動を「母衣打ち(ほろうち)」と呼びます。

鳴き声と母衣打ちはセットで行われることが多く、春の野外では姿が見えなくても、この二つの音からキジが近くにいることが分かります。

繁殖期のオスは縄張りを持ち、ほかのオスと対立することもあります。向かい合ってにらみ合ったり、ときには飛び上がって蹴り合ったりします。

一方、メスに対しては翼を広げ、腰の羽を膨らませ、尾を扇のように開いて見せる求愛行動を行います。

地震が起きるとキジが鳴く?

日本では昔から、キジは地震に敏感な鳥だといわれてきました。

実際に、地震の際にオスが普段より頻繁に鳴いた観察例があります。

ただし、キジが地震を事前に予知できることが確認されているわけではありません。

キジのオスは地震だけでなく、雷や車のドアを閉める音などにも反応して鳴くことがあります。

1971年に発表された研究でも、地震に伴う音などの刺激に反応して鳴いている可能性が指摘されています。

そのため、「キジが地震を予知して鳴く」というより、揺れや音などに反応して鳴くことがある、と考えると分かりやすいでしょう。

キジの繁殖

キジの繁殖時期は地域によって異なります。

関東では3〜6月ごろに繁殖活動が活発になり、寒い地域ではそれより1か月ほど遅れることがあります。

繁殖期になると、オスは縄張りを持ち、「ケンケン」という鳴き声や母衣打ちで存在を知らせます。

キジのオスとメスの関係については、一夫多妻とされることもあれば、メスが複数のオスの縄張りを行き来することも観察されています。

草むらの地面に巣を作る

キジは木の上ではなく、地上に巣を作ります。

農耕地や草地、雑木林などで浅いくぼみを作り、枯れ草や葉などを敷きます。周囲を植物に覆われた、目立ちにくい場所が選ばれます。

産卵は主に4〜6月ごろです。

一度に産む卵は6〜12個ほどで、卵を温めるのはメスです。

抱卵を始めてから23〜25日ほどで孵化します。

雛は母親について歩く

キジの雛は、孵化した時点ですでに綿羽に覆われています。

孵化後は母親について歩きながら生活し、自分でも食べ物を探すようになります。

成長は比較的速く、観察例では生後2か月ほどでメスの成鳥に近い大きさになり、オスでは数か月すると特徴的な羽色などが現れ始めます。

子育ては主にメスが行います。

地上で繁殖するため、卵や雛はさまざまな外敵や環境の影響を受けます。

キジと日本文化

キジは日本の昔話や文学、ことわざなどにたびたび登場します。

なかでも特に有名なのが『桃太郎』です。

桃太郎は鬼ヶ島へ向かう途中で犬、サル、キジを仲間にします。

犬やサルと並んで誰もが知る昔話に登場するほど、キジは古くから日本人に知られてきた鳥でした。

キジが登場することわざ

日本語には、キジが登場することわざや慣用表現がいくつもあります。

雉も鳴かずば撃たれまい

「余計なことを言わなければ、自分から災いを招くこともなかった」という意味で使われます。

鳴かなければ猟師に居場所を知られずに済んだキジの姿にたとえた言葉です。

このことわざは「長柄の人柱」と呼ばれる伝説と結びついて伝えられてきました。

頭隠して尻隠さず

悪事や欠点などの一部分を隠し、それですべてを隠せたと思っている状態を表す言葉です。

もともと「雉の草隠れ」という表現があり、キジが草むらに頭を隠しても長い尾が見えている様子にたとえられています。

焼け野の雉、夜の鶴

親が子を思う深い愛情を表すことわざです。

巣のある野が焼けるとキジが危険を顧みず子を助けようと戻るという言い伝えと、寒い夜にツルが翼で子を覆うという話から生まれた表現です。

これは昔から伝わることわざ上の表現で、キジの繁殖行動をそのまま科学的に説明したものではありません。

松尾芭蕉も詠んだキジ

松尾芭蕉には、

「父母の しきりに恋し 雉子の声」

という句があります。

高野山を訪れた際に詠まれた句で、キジの声を聞きながら亡き父母への思いを重ねたものとして知られています。

春の野に響くキジの鳴き声は、昔から日本人の耳に残る存在だったのでしょう。

キジは日本の国鳥

キジは日本の国鳥として知られています。

1947年、日本鳥学会の第80回例会で、日本を代表する鳥としてキジが選ばれました。

ただし、法律によって「国鳥」と指定されているわけではありません。

日本に固有の鳥であることに加え、姿が美しく、昔話や文学などを通じて広く親しまれてきたことも、日本を代表する鳥として定着した背景にあります。

国鳥でありながら狩猟鳥

国鳥として親しまれている一方、キジは現在も狩猟鳥獣に指定されています。

環境省が定める狩猟鳥獣には26種類の鳥類が含まれており、キジもその一つです。

過去には狩猟資源を維持するために人工繁殖したキジが全国各地で放鳥されてきました。

こうした放鳥によって、本来は地域ごとに見られた羽色などの特徴が分かりにくくなった地域もあると考えられています。

日本固有の野鳥であり、国鳥であり、同時に長く狩猟の対象にもなってきたことは、キジと日本人との関わりの深さを表しています。

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まとめ

  • キジは本州、四国、九州などに自然分布する日本固有の鳥です。
  • オスは緑色の金属光沢を持ち、赤い顔と長い尾が目立ちます。
  • メスは地面や草むらに溶け込む茶褐色の羽を持っています。
  • 農耕地、河川敷、草地、雑木林の周辺などで暮らしています。
  • 植物の葉や種子、果実のほか、昆虫やクモなども食べる雑食性です。
  • 春になるとオスは「ケンケン」と鳴き、その直後に母衣打ちを行います。
  • 巣は地上に作り、メスが6〜12個ほどの卵を23〜25日ほど抱卵します。
  • 『桃太郎』をはじめ、ことわざや俳句など日本文化にも数多く登場します。
  • 1947年に日本鳥学会によって国鳥に選ばれました。
  • 国鳥として知られる一方、現在も狩猟鳥獣に指定されています。

華やかなオスの姿や、春に響く「ケンケン」という声だけでも、キジは十分に特徴的な鳥です。

そこに『桃太郎』やことわざ、俳句、国鳥としての歴史まで加わると、日本人が古くからこの鳥を身近な存在として見てきたことが分かります。

田畑や河川敷の近くで「ケンケン」という声が聞こえたら、周囲の草むらを探してみると、長い尾を持つキジの姿が見つかるかもしれません。

主要参考文献
  • 日本鳥学会『日本鳥類目録 改訂第8版』
  • Bird Research「生態図鑑 キジ」
  • 林暁央「雄キジのさえずりと繁殖行動」Strix
  • Hayashi T.「Individuality of crow calls in male Japanese Green Pheasants」Ornithological Science
  • 山本弘「地震に関係するキジの“鳴き”について」鳥
  • 環境省「狩猟制度の概要」
  • 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「日本の国鳥『キジ』について」
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