ケープペンギンの生態 | 鳴き声・子育て・寿命まで解説

鳥類

南アフリカの海岸では、白い砂浜や岩場をペンギンが歩いている光景を見ることがあります。その鳥が、ケープペンギンです。

ペンギンというと南極の氷原を思い浮かべるかもしれませんが、ケープペンギンが暮らしているのはアフリカ南部の沿岸です。海では小魚を追って泳ぎ、陸上では多くの仲間と繁殖地を作ります。

かつては非常に多く生息していましたが、20世紀以降に急激に減少しました。2024年にはIUCNレッドリストで「深刻な危機(CR)」に分類されています。

ここでは、ケープペンギンの特徴や生息地、食べ物、繁殖、鳴き声、換羽、個体数が減っている理由について紹介します。


ケープペンギンとはどんな鳥?

ケープペンギンの学名は Spheniscus demersus です。英語ではAfrican Penguinと呼ばれ、日本でも「アフリカペンギン」という名前が使われることがあります。

フンボルトペンギン、マゼランペンギン、ガラパゴスペンギンと同じ属に入り、白い腹部と胸を横切る黒い帯など、よく似た特徴を持っています。

アフリカで繁殖する唯一のペンギン

ケープペンギンが繁殖するのは、ナミビアから南アフリカにかけての沿岸です。アフリカで繁殖するペンギンはケープペンギンだけです。

繁殖地の多くは沿岸の島にありますが、南アフリカには本土側の繁殖地もあります。ケープタウン近郊のボルダーズや、ベティーズベイのストーニーポイントは特によく知られています。

繁殖期以外には繁殖地から離れ、餌を求めて広い海域を移動することもあります。

体長は60cm前後

ケープペンギンは体長55〜65cmほど、体重は3kg前後の中型のペンギンです。

背中は黒く、腹部は白色で、胸には太い黒い帯があります。顔も黒く、目の上には羽毛のないピンク色の部分があります。

お腹の黒い斑点は一羽ずつ違う

白い胸や腹部には、小さな黒い斑点が散らばっています。

この模様は一羽ずつ異なるため、個体を見分ける手がかりとして利用できます。研究や保護活動でも、写真から斑点の配置を読み取って個体を識別する方法が使われています。

若鳥には成鳥のようなはっきりした胸の帯や斑点がなく、全体に青灰色をしています。成長すると羽が生え替わり、成鳥らしい白黒の姿になります。

ピンク色の皮膚から熱を逃がす

目の上にあるピンク色の部分は、暑さに対応するためにも役立っています。

気温が上がると、この部分を流れる血液が増え、体内の熱を外へ逃がしやすくなります。暑いときには色が濃いピンクに見えることもあります。

海の中では冷たい水に耐える必要がある一方、陸上では強い日差しによる暑さにも対応しなければなりません。

海では小魚を追って泳ぐ

陸上では体を左右に揺らしながら歩きますが、海へ入ると動きは大きく変わります。

翼は空を飛ぶためではなく、硬く平たいフリッパーになっています。このフリッパーを動かし、水中を飛ぶように泳ぎながら獲物を追います。

沿岸の海を潜って餌を探す

ケープペンギンは主に沿岸で餌を探します。

普段の潜水では水深80mより浅い場所を利用することが多く、繁殖中は巣へ戻る必要があるため、繁殖地から数十kmほどの範囲で餌を探します。

繁殖をしていない時期には、さらに遠くまで移動することがあります。

イワシやカタクチイワシを食べる

ケープペンギンの重要な食べ物が、イワシやカタクチイワシなどの小型魚です。

このほか、アジの仲間やイカ、小型の甲殻類などを食べることもあります。食べるものは地域や季節によって変化します。

餌となる魚の不足が問題になっている

現在のケープペンギンにとって大きな問題となっているのが、餌となる魚の不足です。

南アフリカ周辺では、イワシなどの分布が以前より南や東へ変化してきました。漁業による影響も加わり、繁殖地の近くで十分な魚を見つけにくくなっている地域があります。

卵やヒナを育てている親鳥は、繁殖地と餌場を何度も往復します。魚のいる場所が遠くなるほど移動に時間がかかり、ヒナへ持ち帰れる餌にも影響します。

若鳥が魚の少ない海へ向かうこともある

2017年に発表された研究では、巣立った若いケープペンギンに発信器を取り付け、その移動先が調べられました。

若鳥は、水温が低く植物プランクトンが多い海域へ向かう傾向を示しました。こうした場所は、かつて小魚が多く集まる目印になっていました。

海の変化によって目印と魚が一致しなくなった

ところが、海洋環境の変化や漁業によって、以前は魚が豊富だった海域でも餌が少なくなっている場所があります。

若鳥はこれまで餌場を探す手がかりとなってきた環境を選んでいるのに、実際には十分な魚が見つからないことがあります。

研究では、このような海域を利用する個体群では若鳥の生存率が低くなっていました。海の環境が変化したことで、長く使われてきた餌場探しの手がかりが役に立たなくなる場合があることを示しています。

ロバのような声で鳴く

ケープペンギンは、大きな声で鳴くことでも知られています。

成鳥が出す声はロバの鳴き声に似ており、かつて英語では「Jackass Penguin」と呼ばれることもありました。

鳴き声で仲間と連絡を取る

多くのペンギンが集まる繁殖地では、さまざまな鳴き声が聞こえます。

つがいの相手とのやり取りや縄張りの主張など、状況によって異なる声を使います。ヒナも親へ餌をねだるときなどに声を出します。

繁殖地では巣の周囲を守るため、近づいてきた別の個体をくちばしやフリッパーで追い払うこともあります。

オスとメスで子育てをする

ケープペンギンは多くの個体が集まる繁殖地で子育てをします。

同じ相手と何度も繁殖することがあり、以前使った繁殖地や巣へ戻ってくる個体もいます。卵を温めることもヒナへ餌を運ぶことも、オスとメスの両方が行います。

卵は1〜2個

一度に産む卵は通常1〜2個で、2個の場合もよくあります。

オスとメスが交代で卵を温め、約38〜41日でふ化します。一方が巣を守っている間、もう一方は海へ餌を探しに出ます。

ヒナが生まれると、親は海で捕まえた魚を持ち帰り、吐き戻して与えます。

ヒナは70〜90日ほどで巣立つ

小さなヒナは綿羽に覆われており、この羽には十分な防水性がありません。そのため、すぐに海へ入ることはできません。

成長すると青灰色の羽に生え替わり、およそ70〜90日で巣立ちます。

巣立った若鳥は海へ出て、自分で魚を捕まえながら生活するようになります。成鳥の白黒の羽になるまでには、さらに時間がかかります。

かつてはグアノに穴を掘っていた

ケープペンギンの繁殖には、巣を作る環境も重要です。

かつて多くの島では、海鳥のふんが長い年月をかけて積み重なり、厚い「グアノ」の層ができていました。ケープペンギンはそこへ穴を掘り、巣として利用していました。

グアノ採掘によって巣穴が作れなくなった

19世紀以降、グアノは肥料として大量に採掘されました。

厚いグアノ層が失われた繁殖地では、以前のような巣穴を作れなくなり、地表や岩陰、植物の下などで繁殖する個体が増えました。

地表の巣では、強い日差しや大雨、捕食者などの影響を受けやすくなります。卵や小さなヒナにとって、巣穴は単なる産卵場所ではなく、厳しい環境から身を守る場所でもあります。

人工巣も使われている

現在では、巣穴を作れる場所が少ない繁殖地に人工巣を設置する取り組みも行われています。

人工巣は、強い日差しや雨、捕食者から卵やヒナを守ることを目的にしています。自然のグアノの巣穴に近い環境を再現するため、内部の温度が上がりすぎない構造も研究されています。

年に一度すべての羽が生え替わる

ケープペンギンは年に一度、体の羽を短期間でまとめて交換します。

換羽が始まる前には海で多くの魚を食べ、普段より体重を増やします。換羽中に餌を取れなくなるため、あらかじめエネルギーを蓄えておく必要があります。

換羽中は海へ入らない

古い羽が抜けて新しい羽が生える途中は、十分な防水性がありません。

そのため、換羽中は海へ入らず、2〜3週間ほど陸上で過ごします。その間は餌を食べず、体に蓄えた脂肪を使って生活します。

換羽を終えると新しい羽の防水性が整い、再び海へ戻って魚を捕まえます。

ケープペンギンの寿命

野生のケープペンギンは長く生きる鳥です。

個体によって差がありますが、野生で20年以上生きることがあり、27年ほど生きた例も知られています。

繁殖を始めるのは一般に4〜6歳ほどです。長寿の鳥ですが、繁殖できるようになるまでにも数年かかるため、成鳥が減少すると個体数の回復には時間がかかります。

海にも陸にも天敵がいる

海では、ミナミアフリカオットセイなどがケープペンギンを襲います。

繁殖地ではカモメ類が卵や小さなヒナを狙います。本土にある繁殖地では、カラカルやマングース、犬などの哺乳類による被害が起こることもあります。

捕食者の種類や影響は繁殖地によって異なり、必要に応じて柵の設置などの対策も行われています。

油流出でも大きな被害を受けてきた

ケープペンギンが暮らす南部アフリカ沿岸は、船舶の往来が多い海域でもあります。

海へ流れ出した油が羽に付くと、防水性と保温性が失われます。羽を整えるときに油を飲み込めば、体内にも影響が及びます。

2000年には約1万9,000羽が油に汚染された

2000年には、南アフリカ沖で貨物船「Treasure」が沈没し、大規模な油流出事故が起きました。

この事故では約1万9,000羽のケープペンギンが油に汚染され、さらに約1万9,000羽が油の広がる海域から離れた場所へ移送されました。

南アフリカではSANCCOBなどが、油に汚染されたペンギンを洗浄・治療し、回復した個体を野生へ戻す活動を続けています。

20世紀以降に急速に減少した

ケープペンギンは、20世紀初頭には現在とは比べものにならないほど多く生息していました。

初期の減少には、食用として行われた卵の大量採取や、繁殖地でのグアノ採掘が大きく関係しています。その後は油流出、生息地の変化、捕食などさまざまな問題が加わりました。

近年の減少では、特にイワシやカタクチイワシなどの餌不足が重要な要因となっています。

2024年に「深刻な危機」へ

ケープペンギンは2024年、IUCNレッドリストで「絶滅危惧(EN)」から「深刻な危機(CR)」へ変更されました。

世界の個体数は約1万9,800羽とされ、南アフリカでは2025年の評価で約8,750組の繁殖ペアが残っているとされています。

繁殖地の周辺で漁業を制限

ペンギンが子育てをしている期間は、繁殖地と餌場を何度も往復しなければなりません。そのため、繁殖地の近くに十分な魚がいることが重要です。

2025年3月、南アフリカの高等裁判所は、主要な6か所の繁殖地周辺でイワシやカタクチイワシを対象とした漁業を制限する区域を10年間設けるよう命じました。

魚不足だけで個体数減少のすべてを説明できるわけではありませんが、繁殖地の近くで餌を確保できる環境を残すことは、現在の主要な保護策のひとつになっています。

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まとめ

  • ケープペンギンは、南アフリカとナミビアで繁殖するペンギンです。
  • アフリカで繁殖する唯一のペンギンで、英名はAfrican Penguinです。
  • 体長は55〜65cmほど、体重は3kg前後です。
  • 胸や腹にある黒い斑点は一羽ずつ模様が異なります。
  • 主にイワシやカタクチイワシなどの小型魚を食べます。
  • ロバに似た大きな鳴き声を出すことでも知られています。
  • 一度に1〜2個の卵を産み、オスとメスが交代で温めます。
  • ヒナは70〜90日ほどで巣立ちます。
  • かつては厚いグアノ層に巣穴を掘っていましたが、採掘によって繁殖環境が失われた場所があります。
  • 年に一度換羽し、その間は2〜3週間ほど海へ入りません。
  • 野生で20年以上生きることがあり、27年ほど生きた例もあります。
  • 餌不足や油流出、生息地の変化、捕食などによって個体数が減少しています。
  • 2024年にはIUCNレッドリストで「深刻な危機(CR)」に分類されました。

ケープペンギンは、暖かなアフリカ南部の陸上と、冷たい海を行き来して暮らすペンギンです。海では小魚を追い、陸に戻るとつがいで卵やヒナを育てます。

現在は個体数の減少が続き、絶滅の危険が非常に高い状態です。餌となる魚を確保するとともに、安全に繁殖できる海岸や島を残すことが、ケープペンギンの生存を支える重要な取り組みになっています。

主要参考文献・参照ソース

  • BirdLife International / IUCN Red List「Spheniscus demersus」
  • BirdLife South Africa「African Penguin」
  • South African National Biodiversity Institute(SANBI)「African Penguin」
  • South African National Parks(SANParks)「African Penguin」「Boulders Penguin Colony」
  • South African Foundation for the Conservation of Coastal Birds(SANCCOB)
  • Sherley, R. B. et al. (2017). “Metapopulation Tracking Juvenile Penguins Reveals an Ecosystem-wide Ecological Trap.” Current Biology, 27, 563–568.

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