バッタは、公園や河川敷、田んぼの周辺などで身近に見られる昆虫です。
草むらを歩いたとき、足元から勢いよく飛び出してきた姿を見たことがある人も多いでしょう。身近な昆虫だけに飼育もしやすく、餌を食べる様子や脱皮、産卵などを間近で観察できます。
ただし、「バッタ」と呼ばれる昆虫には多くの種類があり、食べる植物や冬の越し方も同じではありません。
ここでは、トノサマバッタやショウリョウバッタなど一般的なバッタを中心に、餌や寿命、飼育方法、繁殖について紹介します。
バッタはどんな昆虫?
バッタの仲間は、発達した後ろ脚を使って大きく跳ねる昆虫です。日本ではトノサマバッタ、ショウリョウバッタ、クルマバッタ、コバネイナゴ、オンブバッタなど、さまざまな種類を見ることができます。多くは日当たりのよい草原や河川敷、水田、公園などに暮らしています。
バッタにはチョウやカブトムシのような蛹の時期がありません。卵から孵化した幼虫は、翅がないことを除けば成虫とよく似た姿をしています。何度か脱皮を繰り返し、最後の脱皮を終えると翅を持った成虫になります。
バッタの餌は種類によって違う
身近なバッタの多くは植物を食べます。トノサマバッタやショウリョウバッタ、コバネイナゴなどは、特にイネ科の植物をよく食べます。
飼育するときには、エノコログサ、オヒシバ、メヒシバ、ススキ、チガヤ、オギなどを利用できます。野外で捕まえたバッタであれば、捕まえた場所に生えていた草を一緒に確認しておくと、餌を選びやすくなります。
オンブバッタは食べる植物が違う
すべてのバッタがイネ科の草を好むわけではありません。オンブバッタは、ヨモギ、クズ、ギシギシ、スイバ、シソ、クローバーなど、幅の広い葉を持つ植物もよく食べます。コマツナなどの栽培植物を食べることもあります。
そのため、飼育する前にバッタの種類を確認しておくことが大切です。同じ草を入れているのにまったく食べない場合は、その種類に合った植物ではない可能性があります。
餌は新鮮な草を与える
バッタを飼育するうえで重要なのが、新鮮な植物を切らさないことです。
採ってきた草は、そのままケースへ入れるとすぐにしおれてしまいます。小さな瓶などに水を入れ、切った草を挿しておくと長持ちします。ただし、バッタが水の中へ落ちないように、瓶の口には綿やアルミホイルなどを詰め、草だけが出るようにしておくと安心です。
草が黄色くなったり、葉を食べ尽くしたりしたら新しいものへ交換します。根ごと採取できる植物なら、小さなポットへ植えてケース内に入れる方法もあります。
なお、野外から餌を採集するときは、農薬や除草剤が使用された可能性のある場所を避けましょう。
バッタの飼育方法
高さのあるケースを用意する
バッタはよく跳ねるうえ、草につかまって過ごします。そのため、横に広いだけではなく、ある程度高さのある飼育ケースが向いています。
一般的な昆虫用プラスチックケースでも飼育できますが、大型のトノサマバッタやショウリョウバッタでは余裕のあるサイズを選びます。ケースを縦向きに使い、長い草をそのまま入れる方法もあります。
ふたには十分な通気性が必要です。バッタはふたを開けた瞬間に飛び出すことがあるため、餌の交換や掃除をするときにも注意します。
草や枝を入れる
ケース内には餌になる草を多めに入れておきます。草は餌になるだけでなく、バッタがつかまったり、脱皮したりするときの足場にもなります。
ケースの中を物で埋め尽くす必要はありませんが、何もない容器よりも、縦方向につかまれる草がある方が自然な姿を観察できます。
床はシンプルでも飼育できる
短期間の飼育であれば、ケースの底全面に土を敷く必要はありません。紙などを敷いておくと、フンや枯れた葉をまとめて取り除きやすくなります。
バッタは植物をよく食べるため、飼育数が多いとフンもかなり増えます。汚れた部分をこまめに掃除し、枯れた植物を長期間放置しないようにします。
繁殖させたい場合は、床全体を土にするのではなく、別に産卵用の土を入れた容器を置く方法が簡単です。
水はどうする?
新鮮な植物を食べているバッタは、餌からも水分を取ります。乾燥している場合は、葉の一部へ軽く霧吹きをすると水滴をなめることがあります。
ただし、ケース全体を濡らす必要はありません。水滴が大量に残るほど霧吹きをすると蒸れやカビの原因になるため、通気性を確保しながら管理します。
複数のバッタを一緒に飼える?
複数のバッタを同じケースで飼育することもできます。ただし、狭いケースへ多くの個体を入れると、餌や止まる場所が不足します。
脱皮中の個体がほかのバッタに邪魔されたり、跳ねた個体同士がぶつかったりすることもあります。大型種ほど広い空間が必要になるため、観察目的なら少数で飼育した方が管理しやすいでしょう。個体数が増える場合は、餌の量とケースの広さも増やします。
バッタの寿命はどのくらい?
バッタの寿命は種類によって異なります。
ショウリョウバッタでは、春から初夏に卵から幼虫が孵化し、夏に成虫になります。成虫は秋まで見られ、産卵された卵が土の中で冬を越します。オンブバッタも春ごろに幼虫が現れ、夏から秋に成虫となり、卵で冬を越します。
このように、日本で身近に見られるバッタの多くは、春に孵化し、幼虫として成長したあと夏から秋に成虫となり、秋に産卵して卵のまま冬を越す、という一年の流れを繰り返します。
そのため、野外で成虫として活動する期間は数か月ほどの種類が多く、秋が深まると姿を消していきます。「飼育しても12月までしか生きない」という決まった期限があるわけではなく、種類や羽化した時期、温度などによって変わります。
成虫で冬を越すバッタもいる
バッタの仲間すべてが卵で冬を越すわけではありません。代表的なのがツチイナゴです。
ツチイナゴは秋に成虫になり、そのまま冬を越します。暖かい日には冬でも動くことがあり、翌年の春に再び活動します。バッタを飼うときには、種類が分かると寿命や冬越しの方法も理解しやすくなります。
バッタを繁殖させるには
トノサマバッタやショウリョウバッタなど、多くのバッタは土の中に卵を産みます。
繁殖を観察したい場合は、ケース内に産卵用の容器を用意します。小さなタッパーなどへ、軽く湿らせた土や砂を5cm程度の深さまで入れておくと利用できます。
交尾を終えたメスは腹部の先を地面へ深く差し込み、土の中にまとまった卵を産みます。産卵した容器は乾燥させすぎず、かといって常に水浸しにもならないように管理します。
卵で冬を越す種類では、翌年の春になると小さな幼虫が土から出てきます。一度の産卵でも複数の幼虫が孵化するため、繁殖を狙う場合は幼虫を飼育できるケースや餌もあらかじめ準備しておきましょう。
幼虫の飼育
バッタの幼虫は、基本的には成虫と同じ植物を食べます。たとえばトノサマバッタでは、幼虫も成虫もイネ科の植物を利用できます。
孵化したばかりの幼虫は非常に小さいため、細く柔らかい新鮮な葉を用意すると食べやすくなります。
幼虫は成長するたびに脱皮します。脱皮するときには草などにつかまり、古い皮から体を抜き出します。脱皮中や脱皮直後は体が柔らかいため、ケースを揺らしたり直接触ったりせず、そのままにしておきます。
脱皮を繰り返すにつれて少しずつ体が大きくなり、最後の脱皮で翅を持った成虫になります。
捕まえた種類を確認してから飼おう
バッタ飼育で一番分かりやすいコツは、「そのバッタが暮らしていた場所を見ること」です。
イネ科の草原で見つけたショウリョウバッタなら、そこに生えているイネ科植物を餌にできます。クズやヨモギの葉にいたオンブバッタなら、その植物を利用できます。
種類によって好む植物が違うため、「バッタならエノコログサだけ与えておけばよい」と考えるより、採集場所の植物も一緒に観察した方が飼育しやすくなります。身近な昆虫だからこそ、何を食べ、どこで休み、どのように脱皮するのかをじっくり見ることができます。
まとめ
バッタは身近な草原で見られ、比較的飼育しやすい昆虫です。
- トノサマバッタやショウリョウバッタはイネ科植物をよく食べる
- オンブバッタはヨモギやクズなど幅広い植物を利用する
- 餌には新鮮な草を切らさない
- 高さと通気性のあるケースで飼育する
- ケース内には草を入れて足場を作る
- 産卵させる場合は軽く湿らせた土を用意する
- 多くの種類は卵で冬を越す
- ツチイナゴなど成虫で冬を越す種類もいる
身近なバッタでも、種類によって食べる植物や一年の過ごし方には違いがあります。捕まえた場所の草と一緒に観察すると、それぞれのバッタの暮らしがより分かりやすくなります。
主要参照元
- 東京動物園協会「学校向け昆虫観察・飼育資料」
- 伊丹市昆虫館「昆虫飼育資料」
- 甲賀市「バッタを飼う」
- NPO法人こどもとむしの会『ひょうごのばった』
- Honda「生きもの図鑑」ショウリョウバッタ・オンブバッタ

