あなたは、トラツリアブという昆虫を知っていますか。ハエ目ツリアブ科に属し、一見アブのような形をした生き物です。
アブというとあまり可愛いイメージはないかもしれませんが・・・このトラツリアブは、実際に写真を見てみるとすごく可愛さを感じる生き物なんです。
ここでは、そんなトラツリアブについて解説していきます。
外見の特徴
出典:https://imgur.com
上記画像を見て頂けばわかる通り、トラツリアブは普通のアブとは思えないかわいい姿をしています。
全身に毛が生えており、もこもこ、もふもふとした感じでまるでぬいぐるみのように見えますね。
また、メス限定なのですが、つぶらな眼をしていて非常に愛嬌を感じます。
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トラツリアブのオスは、以下のような感じです。
オスは2つの眼がつながっていてハエのような眼をしており、つぶらな感じの眼じゃなくなってしまいかわいさには欠けます。
さらにオスは体の色がメスに比べると濃いという傾向があります。
眼の形や体色などから、オスは悪い意味で「ムシらしさ」が強まってしまうところがあります。
そのため、トラツリアブにおいて可愛いとされるのは、基本的にはメスだけです。
<オスのトラツリアブ>
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大きさや生息域
トラツリアブの大きさは1cm前後と、小型の昆虫です。世界でいえばユーラシア大陸に広く生息していますが、日本の一部でも生息が確認されています。
生息が確認されている県は岡山県をはじめとして兵庫県、大阪府、愛媛県、山口県、三重県、さらには九州でも確認されているようです。
ところどころ確認されている県がとびとびになっており、今一つ規則性は無いようです。
生息数が少ない?
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確認されている県の少なさからも伺えますが、生息数は非常に少なく、1991年に記録されて以降長い間確認報告がありませんでした。
具体的な生息数はわかりませんが、ワンシーズンで見られるのは100匹ほどなどといわれているようです。確実に言えることは、非常に数が少ない昆虫だということです。
そんなトラツリアブですが、2005年になって写真がネット上に掲載されたことで話題になりました。
かといって話題になることが、必ずしも良い結果になるとは限りません。トラツリアブを見よう、撮影しようと多くの人が生息地へ殺到し、結果的に生息地が荒らされてしまうという皮肉なことも起こったようです。
トラツリアブは非常に生息数が少ない生き物である一方、これまで見てきたように話題性のある生き物です。
もし、生息している場所が分かってしまうと同じことが繰り返され、生息地が荒らされてしまうかもしれません。
そのため、見つけた場合も生息地が特定できる画像等をネットにアップするのは避けたほうが良いでしょう。
トラツリアブは比較的人の出入りが少ない場所で発見されていることが多い昆虫です。
現代において生態系の保存の意識は高まりを見せています。その一方で、同じく現在進行形で地方の開発も進んでいるため、絶滅しないかどうかという心配の声もあります。
環境省などからレッドリスト等に掲載されてはいませんが、岡山県のレッドデータブック2009など、一部では行政においても非常に数の少ない昆虫であることが認識されているようです。
トラツリアブの生態
トラツリアブの生態は分かっていないところが多いようです。
トラツリアブの食べ物は花の蜜で、主に秋の終わりごろに発生します。顔の中央部にある細長いストローのような器官で、端の蜜を吸います。
1つの特徴として、バッタの卵しょうに卵を産む(寄生)という特徴があります。
日本でどのバッタに寄生しているのかは不明で、世界においてもそれは同様ですが、生息範囲の重なりなどからセグロイナゴ(セグロバッタ)に寄生しているのではないかといわれています。
セグロイナゴは灰色っぽいイナゴで、大きさはオス3cm,メス4cmほどの大きさです。外見は一般的なイナゴとよく似ています。
<セグロイナゴ>
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セグロイナゴは平成になってから激減したため、現在では数は少ないです。
こちらも日本にも生息しているイナゴですが、トラツリアブと同じく絶滅が心配されています。
トラツリアブは刺す?
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トラツリアブは一見するとハチに似ているので、刺されるのではないかと思う方もいるかもしれませんが、トラツリアブは人間を刺すことはありません。
一口にアブといってもたくさんの種類がいますが、イエシロオビアブ、ウシアブ、シオヤアブなどアブの一部は、人を刺してくることがあります。
これらのアブは、オスは普通に花の蜜などを吸って暮らしているのですが、メスは他の動物を刺して血を吸うことがあります。人間もこの「吸血」の対象になるんですね。
実際にアブにやられると、チクっとするのですぐにわかると思います。チクっとするだけでなく、痒みが残ることもあり、場合によってはアレルギーなどが出る方もいるので意外と厄介です。
メスは、自分が持つ卵を育てるためにこの吸血を行います。あえてアブを少し擁護すると、自分の子孫を残すための手段として、血を吸っているんですね。
※厳密にいうと、皮膚を傷つけて出てきた血を吸うのがアブなので、刺すというよりは「噛む」と表現したほうが正しいです。
先程述べたようにトラツリアブはこのような吸血活動は行わないので、警戒無用です。
最後に
- トラツリアブはマスコットのような可愛い姿をしている(ただし、メスのみ)
- 生息数は非常に少なく、見られる県も限られている
- バッタの卵しょうに卵を産むという性質を持っている
- 刺しません!
虫が苦手な方でも、このトラツリアブのメスであれば全然大丈夫だよという方は多いのではないでしょうか?
なかなか見ることができないのが残念ですが、機会があれば一度見てみたいですね。