クリオネとはどんな生き物? 特徴や生息地・食べ物を解説

軟体動物

透明な体の両側に翼のような部分を広げ、海の中をふわふわと泳ぐクリオネ。その姿から「海の天使」と呼ばれています。

小さな魚やクラゲのようにも見えますが、クリオネは巻貝の仲間です。ただし、大人になると殻を持たず、海底をはうこともありません。翼のように変化した体の一部を動かしながら、一生のほとんどを海中で過ごします。

見た目はかわいらしいものの、食べ物を捕らえる姿はかなり独特です。クリオネはほかの小さな巻貝を捕まえ、殻の中から柔らかい体を引き出して食べます。

ここでは、クリオネが何の仲間なのか、翼のような部分の正体、食べ物や捕食方法、生息地などを紹介します。


クリオネは魚でもクラゲでもない

クリオネは、カタツムリやサザエなどと同じ巻貝の仲間です。

とはいえ、普段目にする巻貝とは暮らし方が大きく違います。

カタツムリが地面をはったり、海の巻貝が岩の上を移動したりするのに対して、クリオネは海中を泳いで生活します。海の流れに乗って移動する小さな生き物の一つです。

「Sea Angel」と呼ばれる生き物にはクリオネ以外の近縁種も含まれますが、透明な体と羽ばたくような泳ぎ方をするクリオネは、その代表的な存在として知られています。

クリオネには複数の種類があり、大きさも同じではありません。

北海道のオホーツク海で見つかった小型の種類には1センチに満たないものがいる一方、北極圏などに生息する種類では数センチまで成長します。

翼のような部分は「足」

クリオネの姿で最も目立つのが、体の左右に広がった翼のような部分です。

もちろん、本物の翼ではありません。

もともと巻貝が移動するために使っている「足」が、水中を泳ぐのに適した形へ変化したものです。

左右の部分を上下に動かすことで、クリオネは水中を進みます。その姿が羽ばたいているように見えることから、「海の天使」という呼び名がよく似合う姿になっています。

クリオネの体は大部分が半透明です。

そのため、体の内部にある赤やオレンジ色の器官が外から透けて見えます。

透明な体に左右へ広がる翼、そして体内に見える鮮やかな色が組み合わさり、ほかの巻貝とは大きく異なる姿になっています。

大人のクリオネには殻がない

巻貝と聞くと、渦巻き状の殻を思い浮かべるかもしれません。

ところが、大人のクリオネには外から見える殻がありません。

だからといって、最初から殻を作らないわけではありません。

クリオネの仲間では、卵から生まれた幼い時期に小さな殻を持っています。その後、成長する途中で殻を失い、次第に大人の姿へ変化していきます。

翼のような部分も成長とともに発達します。

つまりクリオネは、巻貝として生まれながら、成長する途中で殻を捨て、海中を泳ぐ生活に適した姿になる生き物なのです。

「海の天使」でも肉食

ふわふわと漂っている姿だけを見ると、植物プランクトンなどを静かに食べていそうに見えます。

しかし、クリオネの仲間は捕食者です。

特に重要な獲物となるのが、同じように海中を泳いでいる小さな巻貝です。

この獲物は「Sea Butterfly(海の蝶)」とも呼ばれ、クリオネとは違って大人になっても殻を持っています。

クリオネは獲物を殻ごと丸飲みにするわけではありません。

獲物を捕まえると、口の周辺にある器官を使って殻を押さえ、中に入っている柔らかい体を引き出して食べます。

「海の天使」と「海の蝶」という美しい名前を持つ生き物同士ですが、自然界では捕食する側とされる側の関係になっています。

捕食するときは姿が大きく変わる

普段のクリオネは頭部も小さく、口がどこにあるのか分かりにくい姿をしています。

ところが、獲物を捕まえるときには印象が変わります。

口の周辺から、獲物をつかむための柔らかい突起を広げる種類が知られています。さらに、口の内部には細かなフック状の構造や歯のような器官があり、獲物を殻から取り出すために使われます。

映像では、この様子が「クリオネの頭が割れる」と表現されることがあります。

実際に頭が割れているわけではありません。

普段は目立たない捕食用の器官が頭部から大きく広がるため、そのように見えるのです。

小さく透明な体から突然これらの器官が現れる姿は、普段のクリオネとの違いが大きく、インターネットなどでもよく知られるようになりました。

獲物を食べるのは一瞬とは限らない

クリオネの捕食は見た目のインパクトがありますが、獲物を捕まえれば一瞬ですべて食べ終わるとは限りません。

よく研究されているクリオネでは、捕獲してから短時間で食べ終わる場合もありますが、獲物を殻から取り出す作業には時間がかかることがあります。

重要なのは、クリオネが小さな巻貝を殻ごとかみ砕く捕食者ではないということです。

殻そのものではなく、中にある柔らかい部分を食べます。

そのためクリオネの口の周辺には、殻を持つ獲物を捕まえ、中身を取り出すことに適した仕組みがあります。

寒い海でよく見られる

クリオネの仲間は世界のさまざまな海に生息していますが、特に北極や南極、その周辺の冷たい海でよく知られています。

日本では北海道のオホーツク海沿岸で見られることが有名です。

オホーツク海は冬になると流氷がやってくるため、日本では「流氷の天使」という呼び名も広く使われています。

ただし、クリオネが流氷そのものに住んでいるわけではありません。

クリオネの生活場所は海中です。冷たい海の中を泳ぎながら暮らしており、その海域に冬になると流氷が現れるため、両者が強く結びついたイメージになっています。

北太平洋だけでなく、北大西洋や北極海、南極海にもクリオネの仲間が生息しています。

食べ物がない時期にも耐えられる

特定の小さな巻貝を主な獲物としていると、いつでも十分な食べ物を見つけられるとは限りません。

そこでクリオネには、長期間の空腹に耐えられる種類がいます。

北極圏に生息するクリオネを使った研究では、100日間食べ物を与えなくても生き残った個体が確認されました。

食べ物がなくなると、体内に蓄えていた脂肪などを利用します。それだけではなく、長期間の絶食では体そのものを小さくするような変化も確認されています。

研究結果をもとにした計算では、エネルギーを十分に蓄えている個体なら、条件によっては200日を大きく超える期間を食べずに生きられる可能性も示されています。

もちろん、すべてのクリオネが必ずそれだけ絶食できるという意味ではありません。

それでも、獲物がいつ現れるか分からない海で生きるために、食べ物の少ない期間を乗り切る能力を持つことが分かります。

クリオネも卵から生まれる

クリオネもほかの多くの巻貝と同じように、卵から生まれます。

クリオネの仲間には、成長するにつれて雄から雌へ変化するものも知られています。

交尾した後には小さな卵が産み出され、そこから幼いクリオネが誕生します。

生まれた直後は大人とはかなり違った姿をしており、小さな殻を持っています。

成長するにつれて殻を失い、体の左右に泳ぐための部分が発達していきます。こうして、私たちがよく知る「海の天使」の姿になります。

クリオネの一生を考えると、最初から透明な体で羽ばたいているわけではなく、成長の途中で体の形を大きく変えていることが分かります。

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まとめ

クリオネは、透明な体と翼のような部分を持つ海の巻貝です。

  • 魚やクラゲではなく巻貝の仲間
  • 大人になると殻を持たない
  • 翼のような部分は、巻貝の「足」が変化したもの
  • 幼い時期には小さな殻を持っている
  • 小さな巻貝などを捕らえて食べる
  • 捕食するときには口の周辺にある特殊な器官を使う
  • 北海道のオホーツク海をはじめ、寒い海でよく知られている
  • 長期間の空腹に耐えられる種類もいる

透明な体でゆっくり泳ぐ姿から「海の天使」と呼ばれるクリオネですが、その正体は海中生活に適応した巻貝です。

翼のような足だけでなく、成長すると殻を失うことや、殻を持つ小さな巻貝を捕らえて食べることなど、見た目からは想像しにくい特徴を数多く持っています。

📚主要参照元

  • Smithsonian Ocean「Angels of the Sea」
    クリオネの分類、泳ぎ方、成長途中で殻を失うこと、食性、繁殖などを参照。
  • University of Alaska Fairbanks「Sea Angel」
    大きさ、体の特徴、幼生、生活史などの基本情報を参照。
  • Yamazaki, T. & Kuwahara, T. (2017). “A new species of Clione distinguished from sympatric C. limacina (Gastropoda: Gymnosomata) in the southern Okhotsk Sea, Japan, with remarks on the taxonomy of the genus.” Journal of Molluscan Studies, 83(1), 19–26.
    オホーツク海のクリオネ、体の特徴、捕食行動、北太平洋の個体群について参照。
  • Kattner, G. et al. (2006). “Impact of feeding and starvation on the lipid metabolism of the Arctic pteropod Clione limacina.” Journal of Experimental Marine Biology and Ecology, 328, 98–112.
    長期間の絶食、体内のエネルギー利用、体の縮小について参照。
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