タイコウチとは?生態・餌・飼育方法を紹介

水生昆虫

タイコウチは、池や水田などの浅い水辺で暮らす水生昆虫です。

お尻から伸びる長い呼吸管と、獲物を捕らえる鎌のような前脚が大きな特徴です。水中を泳ぎ回るよりも、水草や泥の近くで待ち伏せし、オタマジャクシや水生昆虫などを捕らえます。

ここでは、タイコウチの特徴や餌、呼吸、繁殖、冬越しから飼育方法まで紹介します。


タイコウチとは

タイコウチは、カメムシ目タイコウチ科に分類される水生昆虫です。

日本では本州、四国、九州、南西諸島に分布し、水田、池や沼、流れのゆるやかな河川、水路などに生息しています。

成虫の体長は呼吸管を除いて約3〜3.5cmです。全身は暗い茶褐色で平たく、泥や枯れ葉のある水底では目立ちません。

「タイコウチ」という名前は、前脚を動かす姿が太鼓を打っているように見えることに由来するといわれています。

お尻の長い管で呼吸する

タイコウチのお尻から伸びている細長い部分は、尾ではなく呼吸管です。

タイコウチは水面まで呼吸管の先端を伸ばし、空気を取り込みます。体全体を水面まで出す必要がないため、水草などにつかまったまま呼吸することができます。

この呼吸管と大きな前脚がサソリを思わせることから、タイコウチの仲間は英語で「Water scorpion」と呼ばれています。

泳ぐよりも待ち伏せが得意

タイコウチは水生昆虫ですが、ゲンゴロウのように活発に泳ぎ回るタイプではありません。水底を歩いたり、水草につかまったりしながら生活し、獲物が近づくのを待ちます。

前脚は太く、鎌のような形をしています。獲物が近づくと前脚を素早く伸ばして捕らえ、尖った口を突き刺します。消化液によって獲物の体内を液状にし、それを吸って食べます。

主な獲物には、水生昆虫、ボウフラ、オタマジャクシ、小魚、小さなカエルなどがあります。幼虫も肉食性で、小さな水生動物を捕らえて成長します。

成虫は空を飛ぶ

水中で暮らしているタイコウチですが、成虫には翅があり、飛ぶこともできます。

水田や浅い池などは季節によって水がなくなることがあります。成虫は飛翔することで、別の水辺へ移動できます。夜間に灯りへ飛来することもあります。

飼育するときにも飛び出す可能性があるため、容器にはふたを用意します。

湿った泥やコケに産卵する

タイコウチは春から夏に繁殖します。メスは水中に卵をばらまくのではなく、水際にある湿った泥やコケなどに産卵します。

卵には「呼吸糸」と呼ばれる細い突起があり、ここから酸素を取り込むことができます。飼育下ではミズゴケや吸水性のある素材に産卵した例もあります。

卵は2〜3週間ほどで孵化し、生まれた幼虫は成虫を小さくしたような姿をしています。

5回の脱皮で成虫になる

タイコウチには、チョウやカブトムシのような蛹の時期がありません。幼虫は獲物を食べながら成長し、5回の脱皮を経て成虫になります。

水族館での飼育例では、生まれたばかりの幼虫は6mmほどです。小さな幼虫にはアカムシなどを与え、成長すると小さなコオロギなども捕らえるようになります。

春から初夏に生まれた幼虫は夏の間に成長し、夏から秋にかけて成虫になります。

成虫で冬を越す

タイコウチは成虫の姿で冬を越します。水田周辺の調査では、冬でも水が残っている水路や泥のある場所で越冬する個体が確認されています。春になると活動を再開し、再び繁殖します。

タイコウチの一年は、春から初夏に繁殖し、夏に幼虫が成長して夏から秋にかけて成虫になり、そのまま成虫の姿で冬を越して翌春にまた繁殖する、という流れになります。

タイコウチの飼育方法

タイコウチは、自宅でも比較的飼育しやすい水生昆虫です。ただし、深い水の中を活発に泳ぐ昆虫ではないため、自然の生息場所に近い浅い水辺を作ることがポイントです。

飼育容器

プラスチックケースや小型の水槽などを利用できます。

水深は深くしすぎず、タイコウチが水草や枝につかまりながら簡単に呼吸管を水面へ出せるようにします。水中には水草、枝、落ち葉、石などを入れて、つかまったり隠れたりできる場所を作ります。

特に幼虫は深い水では管理しにくいため、浅めの環境で飼育します。成虫は飛ぶことがあるので、ふたも必要です。

水

カルキを抜いた水を使用し、極端に水が汚れないように管理します。

タイコウチは流れの弱い水辺に暮らすため、強い水流を作る必要はありません。直射日光が当たる場所では水温が急激に上がることがあるため、夏場は特に注意します。

餌

タイコウチは肉食性なので、動物性の餌を与えます。成虫では、メダカなどの小魚、アカムシ、小さなコオロギ、水生昆虫などを利用できます。獲物を前脚で捕まえられる大きさにすることが重要です。

水族館では、孵化したばかりの幼虫に冷凍アカムシを与え、成長した幼虫には小さなコオロギを与えた飼育例があります。食べ残した餌は水を汚すため、残っている場合は取り除きます。

基本は単独飼育

タイコウチは肉食性で、幼虫同士では共食いすることがあります。実際に水族館でも、成長した幼虫は共食いを避けるため個別に飼育されています。安全に育てるなら、基本的には1匹ずつ飼育した方が管理しやすいでしょう。

繁殖

繁殖を狙う場合は、水際に湿ったミズゴケなどを用意します。自然界では湿った泥やコケなどに産卵します。飼育下でもミズゴケや吸水スポンジなどに産卵した例があります。

孵化した幼虫は小さく、共食いもするため、親やほかの幼虫とは分けて育てます。

タガメやミズカマキリとの違い

タイコウチと似た水生昆虫には、タガメとミズカマキリがいます。

タガメはタイコウチより大型で、幅広くがっしりした体をしています。また、タイコウチのような長い呼吸管はありません。

ミズカマキリはタイコウチと同じタイコウチ科ですが、体が非常に細長いのが特徴です。タイコウチは幅広く平たい体をしているため、体形を見れば区別できます。

関連記事:ミズカマキリとは?特徴・生息地・呼吸のしくみを解説

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まとめ

タイコウチは、浅い水辺で獲物を待ち伏せする水生昆虫です。

  • 体長は約3〜3.5cm
  • 長い呼吸管を水面へ出して呼吸する
  • 鎌のような前脚で獲物を捕らえる
  • 水生昆虫やオタマジャクシ、小魚などを食べる
  • 湿った泥やコケなどに産卵する
  • 5回脱皮して成虫になる
  • 成虫の姿で冬を越す
  • 飼育では浅い水とつかまる場所を用意する

水中生活に適応していながら、泳ぎ回るのではなく、泥や水草に紛れて獲物を待つのがタイコウチの特徴です。

主要参照元
  • Honda「生きもの図鑑 タイコウチ」
  • 世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ「タイコウチの産卵」「タイコウチの成長」
  • 東京動物園協会「水生昆虫たちの裏側」「タイコウチの孵化」
  • 佐用町昆虫館「むしみっけ」
  • Ohba, S. & Perez Goodwyn, P. J. (2010) “Life Cycle of the Water Scorpion, Laccotrephes japonensis, in Japanese Rice Fields and a Pond”
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