コオイムシについて解説!飼育法や餌は?寿命は?

水生昆虫

水田や池の中で暮らし、大きな前脚で獲物を捕らえるコオイムシ。水生カメムシの仲間で、平たい褐色の体をしています。

この昆虫の大きな特徴が、オスの背中にびっしりと並ぶ卵です。メスがオスの背中に産卵し、オスは孵化するまで卵を背負って守ります。「コオイムシ(子負虫)」という名前も、この変わった繁殖方法に由来します。

ここでは、コオイムシの大きさや生息地、食べ物、呼吸の仕組み、オスが卵を背負う繁殖行動、成長、オオコオイムシとの違い、飼育方法について紹介します。


コオイムシとは

コオイムシは、カメムシ目コオイムシ科に分類される水生昆虫です。

成虫の体長は17〜20mmほどで、体は平たく、上から見ると丸みを帯びた楕円形をしています。体色は黄褐色から褐色で、水底の泥や枯れた植物の中では目立ちにくい姿をしています。

前脚は太く発達しており、獲物を捕らえるのに適した形をしています。成虫には翅もあり、水中だけで一生を過ごすわけではありません。

日本では北海道、本州、四国、九州に分布しています。国外では朝鮮半島や中国にも分布する昆虫です。

水田や池などの浅い水辺に暮らす

コオイムシは、水の流れが弱い浅い場所を好みます。

水田やため池、沼、小川、河川のワンドなどが代表的な生息場所です。ワンドとは、川の本流から入り込んだ、流れの弱い池のような場所を指します。

水草や岸辺の植物がある場所では、その間に隠れて獲物を待つことができます。

山地の清流を中心に暮らす昆虫ではなく、平地の水田や池など、人の生活圏に近い水辺でも見られてきました。しかし、このような浅い湿地や水田周辺の環境は土地利用の変化を受けやすく、生息地が減少した地域もあります。

水中でも空気を吸って呼吸する

コオイムシは水の中で生活していますが、魚のようなえらは持っていません。

腹部の先には数mmほどの短い呼吸管があり、水面から空気を取り込みます。さらに、翅と腹部の間に空気をためておくこともできます。

そのため、ときどき水面近くまで上がり、空気を補給しながら水中生活を送っています。

ミズカマキリやタイコウチにも呼吸管がありますが、コオイムシのものはかなり短いのが特徴です。

前脚で獲物を捕らえる肉食性

コオイムシは、幼虫も成虫も肉食性です。

水草や物陰に潜み、近くにやってきた小動物を発達した前脚で捕らえます。その後、細長い口吻を獲物に刺して体液を吸います。口吻とは、カメムシやセミなどに見られる、液体を吸うための細長い口です。

野外では水生昆虫や巻貝、ヤゴ、オタマジャクシ、小魚など、さまざまな水生動物が獲物になります。

体長2cmほどの昆虫ですが、水中では待ち伏せ型の捕食者として生活しています。

オスが背中に卵を背負う

コオイムシを特に有名にしているのが、オスによる卵の保護です。

交尾したメスは、自分で卵を抱えるのではなく、オスの背中に卵を産み付けます。正確には、成虫の前翅を中心とした背面に卵が接着されます。

産卵は一度で終わるとは限らず、1匹のオスの背中に複数のメスが卵を産むこともあります。卵が増えていくと、背中の大部分が白っぽい卵で覆われます。

オスは卵を背負ったまま生活し、孵化するまで保護します。

この姿が子どもを背負っているように見えるため、「子負虫」という名前が付けられました。

オスは卵の呼吸も助ける

オスは単に卵を背中に乗せているだけではありません。

コオイムシの卵は、発生を続けるために酸素を必要とします。卵を背負ったオスは水面付近へ移動し、卵を空気に触れさせるなど、孵化まで卵の状態を保つ行動をとります。

国土交通省の資料では、オスが卵を約1か月にわたって守る例が紹介されています。

成虫自身も餌を探したり外敵から逃れたりしなければならないため、大量の卵を背負った状態で生活することには負担があります。それでも孵化するまで卵を保持し続けるのが、コオイムシの大きな特徴です。

背負っている卵がすべて自分の子とは限らない

オスが大切に背負っている卵を見ると、すべてそのオス自身の子のように思えます。しかし、実際の繁殖はもう少し複雑です。

2025年に発表された研究では、複数のオスとメスを自由に交尾させ、孵化した幼虫についてDNAを利用した親子判定が行われました。

その結果、オスが世話している卵の中に、別のオスが父親となっている卵が含まれることが確認されました。

研究では、背負った子のうち、そのオス自身が父親だった割合は平均で約65%でした。ただし個体差が大きく、ほかのオスの子を数多く世話している個体も見つかっています。

また、1匹のオスの背中に複数のメスが産卵するため、ひとまとまりに見える卵も、すべて同じメスが産んだものとは限りません。

コオイムシの「父親による子育て」は、見た目以上に複雑な繁殖行動なのです。

幼虫は成虫に似た姿をしている

卵から孵化した幼虫は、成虫を小さくしたような姿をしています。

コオイムシはチョウやカブトムシのような蛹の時期を持ちません。幼虫が脱皮を繰り返しながら少しずつ成虫へ近づいていく「不完全変態」の昆虫です。

幼虫にはまだ成虫のような翅がありませんが、発達した前脚を使って小さな水生動物を捕らえます。

成長するにつれて捕らえられる獲物も大きくなり、最終的に翅を持った成虫になります。

繁殖や成長の時期は地域によって異なります。例えば国土交通省の弥栄ダム周辺の資料では、4〜6月ごろに産卵し、7〜8月ごろに新しい成虫が現れ、その成虫が冬を越す生活が紹介されています。

成虫の状態で冬を越す

コオイムシは成虫で越冬します。

水中や水辺の落ち葉などの隠れ場所を利用するほか、水田が乾燥する地域では、地面のひび割れなどに入り込んで冬を越すこともあります。

春になって気温が上がると活動が活発になり、再び繁殖の時期を迎えます。

水田のように季節によって水量が大きく変わる環境でも生活できるのは、こうした移動や越冬の仕方と関係しています。

オオコオイムシとの違い

日本には、非常によく似たオオコオイムシも生息しています。

両種は外見が似ているため、野外で見つけた個体を単純に大きさだけで判断するのは難しい場合があります。

生息環境にはある程度の傾向があり、コオイムシは平地の水田や池など開けた水域でよく見られます。一方、オオコオイムシは丘陵地や山地寄りの湿地などでも見られます。

ただし、生息場所が重なることもあります。

どちらもオスが背中に卵を背負うため、「背中に卵があるからコオイムシ」とだけ判断することもできません。

コオイムシの飼育方法

コオイムシは飼育下でも観察できます。水生昆虫なので、陸生のカメムシとは異なり、水を張った容器を用意します。

浅い水槽と足場を用意する

自然界では水深の浅い水域を利用しているため、極端に深い水槽にする必要はありません。

水草や枝など、水中でつかまれるものを入れておくと、自然に近い環境を作れます。コオイムシは空気呼吸をするため、水面へ容易に上がれる状態にしておくことも重要です。

成虫は翅を持っているため、逃げ出さないようにふたも用意します。

水が汚れた場合は交換しますが、一度に環境を大きく変えるより、汚れ具合を見ながら管理するとよいでしょう。

餌は動物質を与える

コオイムシは肉食性なので、植物性の餌では飼育できません。

小型の巻貝や水生昆虫など、生きた小動物を餌として利用できます。自然界でもモノアラガイなどの巻貝を捕食します。

餌を食べ残した場合は、水質悪化を防ぐために取り除きます。

餌が少なすぎると、特に幼虫同士では共食いが起こることがあります。幼虫を多数育てる場合は、個別に分けるか、十分な隠れ場所と餌を確保した方が管理しやすくなります。

繁殖するとオスの背中に卵が並ぶ

成熟したオスとメスを一緒に飼育すると、繁殖行動を観察できることがあります。

メスが産卵すると、オスの背中に白い卵が並びます。卵を背負ったオスは孵化まで世話をするため、水面へ移動しやすい環境を保ち、必要以上に触らないようにします。

孵化した幼虫は小さな生き餌を必要とするため、成虫だけを観察する場合よりも繁殖後の飼育は手間がかかります。

素手ではつかまない

コオイムシは人を獲物として襲う昆虫ではありませんが、身を守ろうとして口吻で刺すことがあります。

水生カメムシ類は、つかまれると人の皮膚を刺すことがあり、コオイムシに刺されると強い痛みを感じる場合があります。

水槽の掃除や個体の移動をするときは、素手で握らず、網などを使って扱う方が安全です。

水辺の環境変化によって減少している

コオイムシは、かつて水田や池などで普通に見られた地域もありました。

しかし、水田周辺の環境変化、湿地や池の減少、水質の悪化などによって、生息できる場所が少なくなった地域があります。

特にコオイムシが好む浅く流れの弱い水域は、埋め立てや水路の改修などの影響を受けやすい環境です。

環境省レッドリスト2020では、コオイムシは「準絶滅危惧(NT)」に分類されています。これは、現時点ですぐに絶滅するほどではないものの、生息環境の変化などによって将来的に絶滅危惧種へ移行する可能性がある区分です。

地域によって状況には違いがあり、各都道府県のレッドデータブックでも希少種として扱われている場合があります。

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まとめ

コオイムシは、水田や池などの浅い水辺で暮らす肉食性の水生カメムシです。

  • 体長は17〜20mmほど
  • 北海道、本州、四国、九州に分布する
  • 水田や池、沼、流れの弱い小川などに暮らす
  • 水生昆虫や巻貝、オタマジャクシ、小魚などを捕食する
  • 短い呼吸管を使って空気呼吸をする
  • メスがオスの背中に卵を産み付ける
  • オスは孵化するまで卵を背負って保護する
  • 1匹のオスの背中には複数のメスが産卵することがある
  • 背負っている卵がすべてそのオス自身の子とは限らない
  • 成虫で冬を越す
  • 環境省レッドリスト2020では準絶滅危惧に分類されている

背中いっぱいに卵を載せた姿から「子負虫」と名付けられたコオイムシ。その繁殖方法だけでも十分に変わった昆虫ですが、水中で空気をためて呼吸したり、大きな前脚で獲物を待ち伏せしたりと、水辺で暮らすためのさまざまな特徴を持っています。

さらに、近年の研究ではオスがほかのオスの子まで世話していることも分かってきました。身近な水田や池に暮らしてきた小さな水生昆虫ですが、その生活には意外なほど複雑な仕組みがあります。

主要参考資料

  • 環境省「環境省レッドリスト2020」
  • 国土交通省 中国地方整備局「弥栄ダム周辺の生き物 コオイムシ」
  • 国土交通省 中部地方整備局「天竜川上流の主要な昆虫類」
  • 京都府「京都府レッドデータブック2015 コオイムシ」
  • 長崎大学「“イクメン昆虫”の意外な素顔? コオイムシの仔育て事情に新発見!」
  • Suzuki, T., Ohba, S. & Tojo, K. (2025) “Reproductive Strategies in Paternal Care and Remarkably Low Paternity Level in a Giant Water Bug.” Ecology and Evolution.
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