地面を叩いてミミズを狩る?アメリカヤマシギの驚異の生存術

鳥類

アメリカヤマシギは、北アメリカ東部の森林や草地で暮らす鳥です。

ずんぐりした体に長いくちばし、大きな目という少し変わった姿をしています。日中は落ち葉の上でじっとしていることが多く、茶色や黒、灰色が入り混じった羽毛によって周囲によく溶け込みます。

地面に長いくちばしを差し込んでミミズを探す一方、春の夕暮れにはオスが空高く舞い上がる求愛飛翔を行います。さらに近年の追跡調査からは、春の渡りと繁殖を重ねながら北上する独特な行動も明らかになりました。

ここでは、アメリカヤマシギの姿や食べ物、求愛、渡りなどの生態を紹介します。


アメリカヤマシギとは

アメリカヤマシギは、シギ科ヤマシギ属に分類される鳥です。

分布の中心は北アメリカ東部で、カナダ南東部からアメリカ東部・中部にかけて繁殖します。冬になると多くの個体が南へ移動し、アメリカ南東部やメキシコ湾岸などで過ごします。

シギの仲間というと海岸や干潟を歩く鳥を想像しやすいですが、アメリカヤマシギは森林や低木地、古い草地、湿った林縁などを主な生活場所としています。

体長は約25〜31cm。体は丸く、脚は短く、頭から前方へ長いくちばしが伸びています。オスとメスの模様はよく似ていますが、メスの方が大きくなる傾向があります。

落ち葉の中で目立たない体

アメリカヤマシギの背中には、茶色、黒、黄褐色、灰色などが複雑に混じった模様があります。林床に積もった枯れ葉の色とよく似ており、動かずにいる個体を見つけるのは簡単ではありません。

日中はこうした場所でじっと休み、危険が近づいてもすぐには飛び立たないことがあります。

もうひとつ特徴的なのが目の位置です。大きな目が頭の高い位置、やや後方についているため、地面へくちばしを差し込んで餌を探しているときにも、周囲や上方を確認しやすい体のつくりになっています。地面の餌を探すことと、外敵を警戒することを両立させた姿です。

長いくちばしでミミズを探す

アメリカヤマシギの主な食べ物はミミズです。そのほか、昆虫、クモ、ヤスデ、カタツムリなど、土や落ち葉の中にいる小動物も食べます。

餌を探すときは、長いくちばしを湿った土へ差し込みます。くちばしの先には獲物を感じ取るための感覚が発達しているうえ、地中に差し込んだ状態でも上側の先端部分を動かすことができます。そのため、土の中でミミズを見つけると、くちばしの先でつかんで引き抜くことができます。

アメリカヤマシギにとって、柔らかく湿った土がある場所は重要な餌場です。

体を揺らしながら歩くのはなぜ?

アメリカヤマシギには、歩きながら体を前後に揺らす独特な行動があります。動画などでは、首や頭の位置を比較的安定させながら、体をリズミカルに動かして進む姿を見ることができます。

この動きが何のために行われているのかは、完全には分かっていません。ひとつの考えとして、足を使って地面へ振動を伝え、ミミズを動かすことで位置を探りやすくしている可能性があります。動いたミミズが出すわずかな音や振動を感じ取っている可能性も考えられています。

ただし、アメリカヤマシギがこの歩き方をする理由はまだ十分に解明されておらず、現在も特徴的な行動のひとつとして知られています。

春の夕暮れに始まる求愛飛翔

普段は林床で目立たずに暮らしているアメリカヤマシギですが、繁殖期になるとオスの行動は大きく変わります。

夕暮れや明け方、オスは草地や林の中にある開けた場所へ出て、「ピーント」と聞こえる特徴的な声を繰り返します。その後、地面から飛び立ち、らせんを描くように上空へ上昇します。

高度が上がるにつれて、翼から高いさえずりのような音が聞こえてきます。この音の一部は声ではなく、飛んでいるときに翼を通る空気によって生じます。上空まで達すると、オスは鳴きながらジグザグに降下し、再び地面へ戻ります。

地面で鳴いてから上空へ飛び立ち、翼から音を出しながら上昇し、鳴きながら降下して再び地面で鳴く。こうした一連の流れを何度も繰り返します。

この求愛飛翔は「スカイダンス」と呼ばれ、アメリカヤマシギを観察しやすい数少ない機会でもあります。

オスは子育てをしない

求愛飛翔を行ったオスは複数のメスと交尾することがあり、その後の巣作りや抱卵、雛の世話には参加しません。子育てを担当するのはメスです。

巣は地面に作られ、落ち葉や植物に囲まれた浅いくぼみに卵を産みます。通常は4個前後の卵を産み、メスが約3週間抱卵します。

孵化した雛はすでに綿羽に覆われ、比較的よく動くことができます。孵化から数時間ほどで巣を離れ、母親について移動します。数日すると自分でも地面をつついて餌を探すようになり、約1か月でかなり独立した生活ができるようになります。

渡りながら何度も巣を作る?

アメリカヤマシギの繁殖については、近年の追跡調査から意外な行動が明らかになっています。

2024年に発表された研究では、200羽を超えるメスにGPSを装着し、春の移動と営巣を調べました。繁殖期を詳しく追跡できた個体では、8割以上のメスが複数回の営巣を試みており、中には1シーズンに6回の営巣が推定された個体もいました。

さらに特徴的なのが、巣を作り直す場所です。最初の営巣から次の営巣まで、メスは平均約800km北へ移動していました。その後の営巣の間にも、平均数百km規模の移動が確認されています。

つまり、同じ繁殖地にとどまって何度も巣を作るだけではなく、春の北上を続けながら別の場所で再び営巣していたのです。このように、渡りと繁殖の時期が重なる生活は「移動繁殖」と呼ばれます。

何度も雛を育てているわけではない

ここで少し注意したいのは、「1シーズンに最大6回営巣した」という結果が、そのまま「6回子育てに成功した」という意味ではないことです。

アメリカヤマシギは地上に巣を作るため、卵や巣が捕食されることもあります。巣を失ったメスが再び産卵することがあり、その再営巣の間に長い距離を北へ移動する個体が多いことが、今回の研究で明らかになりました。

研究者たちは、早い時期から繁殖を始められること、雛が孵化直後から動けること、オスが渡りの途中でも求愛を行っていることなどが、この珍しい生活を可能にしていると考えています。

アメリカヤマシギは、春の移動と繁殖を完全に分けるのではなく、両方を重ねながら北へ進むことがある鳥なのです。

若い森林や草地を使い分ける

アメリカヤマシギが暮らすには、単に森林があればよいわけではありません。

餌を探すには湿った土のある林や低木地が必要で、求愛には開けた場所も利用します。巣や雛を隠すには、若い木や低木が密生した環境も重要です。そのため、若い森林、低木地、古い草地、湿った林などが組み合わさった環境を利用しています。

アメリカ東部では森林の成熟や土地利用の変化によって、こうした若い森林や低木地が減少してきました。アメリカヤマシギの個体数も長期的には減少しており、アメリカ魚類野生生物局では若い森林などの生息環境の減少を大きな要因のひとつとして挙げています。

森を守るだけでなく、さまざまな成長段階の森林や開けた草地が残ることも、この鳥の生活には必要です。

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まとめ

アメリカヤマシギは、北アメリカ東部の森林や草地で暮らすシギの仲間です。

  • 茶褐色の羽毛で落ち葉の中に溶け込む
  • 大きな目が頭の高い位置についている
  • 長いくちばしを土へ差し込んでミミズを探す
  • 体を前後に揺らしながら歩くことがある
  • 春にはオスが「スカイダンス」と呼ばれる求愛飛翔を行う
  • 巣作りや子育てはメスだけで行う
  • 春の北上途中に複数回営巣する個体が多い
  • 若い森林や低木地、草地などを使い分けて暮らす

昼間は落ち葉の中でひっそりと過ごしていますが、餌の探し方や春の求愛飛翔、渡りながら営巣する生活など、ほかの鳥とは少し違った特徴をいくつも持っています。

主要参照元

  • Cornell Lab of Ornithology「American Woodcock」
  • U.S. Fish & Wildlife Service「American Woodcock Population Status」
  • U.S. Fish & Wildlife Service「American Woodcock Conservation Plan」
  • Slezak, C. R. et al. (2024) “Unconventional life history in a migratory shorebird: desegregating reproduction and migration”, Proceedings of the Royal Society B

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