アトラスオオカブトの飼育方法|大きさ・餌・産卵・幼虫飼育を解説

カブトムシ・クワガタ

3本の大きな角と、黒光りする体が特徴のアトラスオオカブト。コーカサスオオカブトによく似ていますが、やや小型で、日本では古くから外国産カブトムシの定番として親しまれてきました。

流通量が多く、外国産カブトムシの中では比較的手に入れやすいのも特徴です。ホームセンターやペットショップで販売されることもあり、アトラスオオカブトから外国産カブトムシの飼育を始めた人も多いでしょう。

成虫の飼育だけでなく、産卵や幼虫飼育もそれほど難しくありません。ただし、普通に羽化させることと、大型で長い角を持つオスを育てることでは難しさがかなり違います。

ここでは、アトラスオオカブトの特徴から成虫の飼育、産卵、幼虫飼育、コーカサスオオカブトとの違いまで紹介します。


アトラスオオカブトとは?

アトラスオオカブト(Chalcosoma atlas)は、コガネムシ科カブトムシ亜科に分類される大型のカブトムシです。

東南アジアに広く分布し、インドネシア、マレーシア、フィリピンなどで見られます。分布する島や地域によって複数の亜種が知られ、日本ではスマトラ島産やフィリピン産などが流通しています。

オスには、

  • 頭部から伸びる1本の頭角
  • 胸部から伸びる2本の胸角

があり、合計3本の大きな角を持ちます。

大型のオスでは100mm前後に達し、3本の角も長く発達します。メスにはオスのような角はなく、体も一回り小さくなります。

オスの大きさによって角の形が変わる

アトラスオオカブトの面白いところは、単純に小型個体をそのまま拡大すると大型個体になるわけではないことです。

小さなオスでは3本の角が非常に短く、大型になるにつれて角が急激に長く発達します。

大型カブトムシではよく見られる特徴ですが、アトラスオオカブトでも体の大きさと角の長さには強い関係があります。

そのため、幼虫を無事に成虫まで育てても、小型のオスでは想像していたような「3本角」の姿にならないことがあります。

長い角を持つ大型個体を育てることも、アトラスオオカブト飼育の楽しみのひとつです。

3本の角はオス同士の争いに使われる

野外では、オス同士が餌場やメスをめぐって争います。角を相手の体の下へ差し込み、持ち上げたり押し出したりして戦います。

この力はかなり強く、飼育下でもオスを同じケースへ入れると激しく争うことがあります。そのため、基本的に成虫のオスは1匹ずつ飼育します。

アトラスオオカブトの成虫の飼い方

成虫の基本的な飼育方法は、日本のカブトムシとそれほど変わりません。

用意するものは次の通りです。

  • 飼育ケース
  • 昆虫マット
  • 昆虫ゼリー
  • 転倒防止用の枝や樹皮
  • 温度計

外国産だからといって、特別な設備が大量に必要になる種類ではありません。

ただし、日本の冬を無加温で越せる昆虫ではないため、一年を通して飼育する場合は温度管理が必要です。

ケースは1匹ずつ用意する

オスは力が強く、ほかのオスと一緒にすると争います。

角で相手を持ち上げたり、ケースの壁との間に挟んだりする可能性があるため、オス同士の同居は避けます。

繁殖させる場合も、オスとメスをずっと一緒にしておく必要はありません。交尾を確認したらメスを産卵ケースへ移した方が管理しやすくなります。

マットと転倒防止材を入れる

成虫を観賞目的で飼うだけなら、ケースの底へ数cmほど昆虫マットを敷けば十分です。成虫はよく動き、ひっくり返ることもあります。

平らなケースでは脚を引っかける場所がなく、起き上がれないことがあるため、樹皮や太めの枝などを置いておきます。

マットは完全に乾燥させず、軽く湿り気がある状態を保ちます。ただし、握ると水が染み出すほど濡らす必要はありません。

餌は昆虫ゼリー

成虫には昆虫ゼリーを与えます。大型のカブトムシなのでよく食べ、活動の盛んな個体ではゼリーを短期間で食べ切ることもあります。

餌切れにならないよう定期的に確認し、汚れたゼリーは新しいものへ交換します。

バナナなどの果物も食べますが、傷みやすくコバエも発生しやすいため、日常的な飼育では昆虫ゼリーの方が扱いやすいでしょう。

飼育温度は20〜25℃程度

アトラスオオカブトは熱帯に生息するカブトムシですが、「熱帯の昆虫だから暑いほどよい」というわけではありません。

飼育では20〜25℃程度が扱いやすく、25℃前後でもよく飼育・繁殖できます。特に注意したいのが日本の夏です。

30℃を超える高温が長く続く部屋では成虫や幼虫への負担が大きくなり、マットの状態も悪くなりやすくなります。そのため、真夏はエアコンなどを利用して極端な高温を避けます。

反対に冬は室温が大きく下がるため、必要に応じて温室や暖房などを利用します。

アトラスオオカブトの寿命

成虫の寿命は数か月ほどで、5〜6か月程度生きる個体もいます。

もちろん、購入した野外採集個体では羽化した時期が分からないため、購入後にどのくらい生きるかを予測するのは難しくなります。

長く飼いたい場合は、

  • 餌を切らさない
  • 高温を避ける
  • ケースを乾燥させすぎない
  • オス同士を同居させない
  • 転倒したままにならないよう足場を入れる

といった基本的な管理を続けます。

アトラスオオカブトの繁殖

アトラスオオカブトは、外国産大型カブトムシの中では繁殖させやすい種類です。

野外採集されたメスはすでに交尾している場合が多いのですが、確実に繁殖させたい場合はオスとの交尾を確認してから産卵セットへ移します。

飼育繁殖された個体では、羽化した直後ではなく、十分に活動して餌を食べるようになってから繁殖させます。

ペアリング

オスとメスを一緒にすると、オスがメスへ近づいて交尾します。

メスが逃げ続けたり、オスが荒っぽく追い回したりする場合は一度離します。

交尾を確認できたら、メスだけを産卵セットへ移します。同じケースへ長期間入れておく必要はありません。

産卵セットの作り方

アトラスオオカブトは、発酵の進んだマットの中へ卵を産みます。クワガタムシで用意するような、産卵木は必要ありません。

深さのある中型から大型のケースへ、カブトムシ用の発酵マットを十分に入れます。

セットするときは、

  1. ケースの底へ発酵マットを入れる
  2. 底から半分程度までは手でしっかり押し固める
  3. 上部はやや柔らかめに入れる
  4. 昆虫ゼリーと転倒防止材を置く
  5. 交尾済みのメスを入れる

という方法が一般的です。

底のマットをしっかり固めることで、メスが産卵しやすい場所を作ります。マットの水分は、握ると形が残るものの水が染み出さない程度を目安にします。

大きめのケースを使う

アトラスオオカブトのメスは、産卵のためにマットの中をよく動きます。ケースが小さすぎると、すでに産んだ卵をメスが掘り返したり傷つけたりする可能性があります。

ある程度深さのあるケースを使う方が管理しやすく、産卵数が多い場合にも余裕があります。

卵や幼虫の割り出し

産卵セットを組んでしばらくすると、ケースの側面から卵や小さな幼虫が見えることがあります。

そのまま幼虫になるまで待ってから割り出しても構いません。卵の状態で取り出す場合は、指で強くつかまず、周囲のマットごと慎重に扱います。

卵は同じ発酵マットを入れた小さな容器で管理し、乾燥させないようにします。

幼虫は発酵マットで育てる

孵化した幼虫は、カブトムシ用の発酵マットで育てられます。

菌糸ビンを使うクワガタとは違い、アトラスオオカブトでは発酵マットが幼虫の餌になります。

幼虫はマットを食べながら、

初令 → 2令 → 3令 → 蛹 → 成虫

と成長します。

3令幼虫になるとかなり大きくなり、特にオスは大量のマットを食べます。

幼虫は個別飼育がおすすめ

アトラスオオカブトの幼虫は気が強く、触れると大アゴで噛みつこうとすることがあります。

大きなケースで複数の幼虫を育てることもできますが、幼虫同士が接触して傷つく可能性があります。

確実に育てたい場合や大型個体を狙う場合は、ある程度成長した段階で1匹ずつ容器へ分けた方が管理しやすくなります。

オスにはメスより大きな容器を用意し、十分な量のマットを食べられるようにします。

マット交換のタイミング

幼虫がマットを食べると、ケースの中に糞が増えていきます。マットの大部分が糞に変わったり、劣化が目立ってきたりしたら新しい発酵マットへ交換します。

すべての古いマットを捨てる必要はなく、状態のよいものを少量だけ新しいマットへ混ぜても構いません。

交換するときは幼虫を落としたり、強くつかんだりしないようにします。

幼虫が成熟して黄色みを帯び、蛹室を作り始める時期になったら、頻繁なマット交換は避けます。

幼虫期間は1年前後

アトラスオオカブトは、ゾウカブトなどの長い幼虫期間を持つ種類に比べると成長が早いカブトムシです。

飼育温度や性別、成長状態によって変わりますが、孵化から羽化まで1年前後がひとつの目安になります。

飼育例では、オスが11か月ほど、メスが10か月ほどで羽化した例もあります。

低めの温度では成長がゆっくりになり、高めの温度では早く成長する傾向があります。

ただし、早く羽化させればよいわけではありません。大型のオスを狙う場合は、十分に幼虫を成長させることが重要です。

大型で長角のオスを育てるのは難しい

アトラスオオカブトは、幼虫を成虫まで育てること自体はそれほど難しくありません。

難しいのは、十分に大きく、3本の角が長く伸びたオスを育てることです。

小型のオスでは頭角も胸角も短くなり、同じ種類とは思えないほど姿が変わります。

大型個体を狙う場合は、

  • 幼虫に十分な量の発酵マットを与える
  • マットを極端に劣化させない
  • 大型のオスには余裕のある容器を使う
  • 高温で成長を急がせすぎない
  • マット交換の際に大きな温度変化を与えない

といった管理が重要になります。

それでも必ず長角になるわけではありません。普通に羽化させる飼育と、100mm近い大型の長角個体を狙う飼育では、かなり難しさが違います。

蛹室を作ったらなるべく触らない

成熟した幼虫はマットの中に空間を作り、その中で蛹になります。

これが蛹室です。

蛹室を作り始めた幼虫は動きが少なくなり、体も黄色みを帯びてきます。

この時期にマットを交換したり、ケースを激しく動かしたりするのは避けます。特に長い角を持つオスでは、蛹室にも十分な空間が必要です。

ケース側面から蛹室が見えても、問題がなければそのまま羽化まで待ちます。

羽化した成虫もすぐに掘り出さず、体が十分に固まり、自分から活動を始めるまで待つ方が安全です。

アトラスオオカブトとコーカサスオオカブトの違い

アトラスオオカブトによく似ているのがコーカサスオオカブトです。

コーカサスオオカブトは現在 Chalcosoma chiron という学名で扱われています。古い図鑑などでは Chalcosoma caucasus と書かれていることがあります。

どちらも3本の角を持ち、慣れていないとかなりよく似て見えます。

オスは頭角を見ると分かりやすい

大型から中型のオスでは、頭部中央から伸びる頭角を見ると判別しやすくなります。

コーカサスオオカブトでは、頭角の下面に目立つ歯状の突起があります。

アトラスオオカブトでは、この部分にコーカサスほど明瞭な大きな突起がありません。

個体の大きさによって角の形も変わるため、小型個体では分かりにくい場合がありますが、大型のオスでは比較しやすい特徴です。

コーカサスの方が大型になる

両種とも大型のカブトムシですが、コーカサスオオカブトの方がより大型になります。

アトラスオオカブトも100mm級になる大型種ですが、コーカサスではさらに大きな個体が知られています。

一方、アトラスオオカブトは広い地域に分布し、地域によってさまざまな亜種や個体群を見ることができます。

メスだけでの判別は難しい

メスの場合は背中の質感も見分ける手がかりになります。コーカサスオオカブトは背面に細かな毛があり、触るとややふわっとした感触があります。一方、アトラスオオカブトは毛が少なく、ざらざらした感触があります。

オスのように分かりやすい角がないため、メスだけを外見から確実に判別するのは簡単ではありません。購入する場合は、産地や学名が確認できる個体を選ぶ方が確実です。

モーレンカンプオオカブトにも似ている

同じカルコソマ属には、モーレンカンプオオカブト(Chalcosoma moellenkampi)もいます。

ボルネオ島に分布する種類で、こちらもオスに3本の長い角があります。

アトラスやコーカサスと比べると、胸角が比較的まっすぐ前方へ伸び、付け根も近いのが特徴です。

日本ではアトラスオオカブトほど頻繁には流通しませんが、カルコソマ属を集めている人には人気があります。

アトラスオオカブトの価格

アトラスオオカブトは、外国産大型カブトムシの中では比較的安価な種類です。

夏になると野外採集個体がまとまって輸入され、ホームセンターなどで販売されることもあります。

価格は個体の大きさ、産地、野外採集品か飼育繁殖品かによって変わりますが、標準的な個体なら数千円台で見つかることがあります。

大型個体や珍しい産地の個体は価格が高くなります。

ヘラクレスオオカブトなどと比べて手を出しやすい価格で販売されることが多いのも、アトラスオオカブトが外国産カブトムシの入門種として親しまれてきた理由のひとつです。

名前の由来

「アトラス」の名前は、ギリシャ神話に登場する巨人アトラスに由来します。

アトラスは天空を支える巨人として知られ、その巨大な姿から大型のカブトムシに名前が付けられました。

アフリカ北西部にあるアトラス山脈も同じ神話上のアトラスに由来する名前ですが、アトラスオオカブトがアトラス山脈に生息しているわけではありません。

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まとめ

アトラスオオカブトは、東南アジアに広く分布する3本角の大型カブトムシです。

  • オスには1本の頭角と2本の胸角がある
  • 大型のオスでは100mm前後になる
  • 昆虫ゼリーと発酵マットで比較的簡単に飼育できる
  • 20〜25℃程度が管理しやすく、夏の高温には注意する
  • オス同士は争うため単独飼育する
  • 産卵には発酵の進んだカブトマットを使う
  • 幼虫も発酵マットで育てられる
  • 幼虫期間は1年前後が目安
  • 幼虫は気が強いため個別飼育が管理しやすい
  • 羽化させること自体は難しくないが、大型の長角オスを育てるのは難しい
  • コーカサスオオカブトとは頭角の形などで見分けられる
  • 外国産大型カブトムシの中では比較的手に入れやすい

流通量が多く、成虫の飼育から繁殖まで楽しめるアトラスオオカブト。普通に育てるだけなら比較的扱いやすい一方、大型の長角個体を狙い始めると奥深い飼育を楽しめるカブトムシです。

主要参照元

  • Catalogue of Life / GBIF「Chalcosoma atlas」
  • Kawano(1995)“Horn and Wing Allometry and Male Dimorphism in Giant Rhinoceros Beetles”
  • Kawano(2002)“Character Displacement in Giant Rhinoceros Beetles”
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