ホームセンターや昆虫ショップへ行くと、「成虫管理用」「クワガタ用」「カブト用」「発酵マット」など、さまざまな昆虫マットが販売されています。
見た目が似ているものも多いため、初めて飼育する場合はどれを選べばよいのか迷いやすいでしょう。
昆虫マットは、カブトムシやクワガタを入れておく単なる床材ではありません。種類によっては産卵場所になり、幼虫にとってはそのまま餌になります。そのため、成虫を飼うのか、産卵させるのか、幼虫を育てるのかによって選ぶマットも変わります。
ここでは、昆虫マットの種類や特徴、用途に合わせた選び方について紹介します。
昆虫マットとは?
昆虫マットとは、カブトムシやクワガタの飼育に使われる木質系の床材の総称です。
広葉樹の朽ち木やオガ粉を細かく砕いたもの、発酵させたもの、針葉樹を成虫管理用に加工したものなど、さまざまな種類があります。
同じ「昆虫マット」という名前でも用途はかなり違い、大きく分けると次のように考えると分かりやすくなります。
- 成虫を飼育するための管理用マット
- 産卵に使用するマット
- 幼虫の餌になる発酵マット
- 産卵木を埋めるための埋め込みマット
- ミヤマやマルバネなど特定の種類向けに作られた専用マット
商品によって複数の用途を兼ねている場合もあります。
発酵マットとは?
カブトムシやクワガタの飼育でよく登場するのが「発酵マット」です。
広葉樹のオガ粉などを微生物の働きによって分解させ、カブトムシやクワガタの幼虫が利用しやすい状態にしたものです。
発酵の方法や原材料、添加物、粒子の細かさなどによって性質が異なり、カブトムシ向け、クワガタ向けなどさまざまな商品があります。
黒いマットほど発酵が進んでいる?
発酵が進むにつれて色が濃くなる傾向はあります。
そのため、明るい木の色を残したマットは発酵が浅く、黒褐色のマットは発酵が進んでいることが多いでしょう。
ただし、色だけで発酵度を正確に判断することはできません。
原材料や製造方法によっても色は変わるため、
「黒ければカブト用、茶色ならクワガタ用」
といった見分け方だけで購入するのは避けた方がよいでしょう。
商品に書かれている「カブト幼虫用」「クワガタ産卵用」などの用途を確認するのが確実です。
成虫を飼育する場合
産卵させず、カブトムシやクワガタの成虫を飼育するだけなら、マット選びはそれほど難しくありません。
成虫にとってマットは主に、
- 潜って休む場所
- 乾燥を防ぐ場所
- 転倒したときの足場
- 排泄物を受ける床材
として使われます。
幼虫のようにマットそのものを餌として食べるわけではないため、成虫管理用として販売されている商品であれば十分です。
広葉樹の管理用マット
クヌギなどの広葉樹を細かくしたマットは、カブトムシ・クワガタのどちらにも使いやすい定番の床材です。
適度に湿らせて使えば、成虫が潜って休むこともできます。
価格も比較的安いため、数多く飼育する場合にも使いやすいでしょう。
針葉樹マット
成虫管理用として、ヒノキやスギなどを利用した針葉樹マットも販売されています。
針葉樹系の管理マットは、広葉樹の発酵マットに比べてコバエやダニが発生しにくく、臭いも抑えやすいため、成虫だけを清潔に管理したい場合に便利です。
ただし、使用するのは昆虫の成虫管理用として加工・販売されている商品にします。
園芸用や小動物用の針葉樹チップ、削ったばかりのスギやヒノキのオガ粉などを、そのまま昆虫飼育へ流用するのは避けた方がよいでしょう。
また、針葉樹マットは基本的に成虫管理用です。カブトムシの幼虫の餌や、マットへ産卵する種類の産卵床には使いません。
「埋め込みマット」とは?
埋め込みマットは、その名前の通り、クワガタの産卵木をケース内へ固定したり埋めたりするために使われるマットです。
オオクワガタやコクワガタ、フタマタクワガタなど、主に朽ち木へ産卵する種類では、メスが卵を産むのはマットではなく産卵木です。
そのため、周囲のマットそのものに高い産卵性能は必要ありません。
埋め込みマットは成虫管理にも使える商品が多いため、結果として「成虫用のマット」として利用されることもありますが、本来は産卵木を埋める用途にも使われるマットです。
商品によっては一次発酵済みで、産卵木から出た幼虫が多少マットへ食い進んでも管理できるよう作られています。
カブトムシを産卵させる場合
カブトムシは、クワガタのように産卵木へ卵を産むのではなく、腐葉土や朽ちた植物質がたまった土の中へ産卵します。
飼育下では、発酵の進んだカブトムシ用マットを使用します。
国産カブトムシだけでなく、
- ヘラクレスオオカブト
- ネプチューンオオカブト
- アトラスオオカブト
- コーカサスオオカブト
- ゾウカブト類
など、多くの外国産カブトムシでも発酵マットを産卵床として利用します。
ただし、好むマットの状態は種類によって多少異なります。
初めて繁殖させる場合は、「カブトムシ産卵用」「カブト幼虫・産卵用」などと表示された商品を選ぶと簡単です。
国産カブトムシ
国産カブトムシは比較的産卵させやすく、外国産の大型カブトムシほどマットの種類を細かく選ばなくても産卵することがあります。
それでも、成虫管理用の針葉樹マットや、ほとんど発酵していないオガ粉を産卵用に使うのは向いていません。
発酵マットを使っておけば、そのまま孵化した幼虫の餌としても利用できます。
クワガタを産卵させる場合
クワガタは、種類によって産卵方法が大きく違います。
ここが昆虫マット選びで最も分かりにくいところです。
大きく分けると、
- 主に産卵木へ産む種類
- マットにも産卵する種類
- 特殊な環境を好む種類
があります。
産卵木へ産むクワガタ
オオクワガタやコクワガタ、フタマタクワガタなどでは、産卵木が主な産卵場所になります。
このような種類では、周囲のマットは産卵木を固定したり湿度を保ったりする役割が中心です。
そのため、埋め込みマットや管理用の広葉樹マットを利用できます。
マットを高価な完熟発酵マットにするより、産卵木の種類や硬さ、状態の方が重要になる場合もあります。
マットにも産卵するクワガタ
ノコギリクワガタやヒラタクワガタ、ニジイロクワガタなどには、発酵マットへ産卵する種類があります。
このような種類では、成虫管理用や単なる埋め込み用マットではなく、クワガタ産卵用の発酵マットを使います。
粒子が細かく、メスが潜って固めやすいマットがよく利用されます。
種類によっては産卵木とマットの両方へ産卵するため、発酵マットへ柔らかめの産卵木を入れる方法もあります。
ミヤマ・ツヤ・マルバネなどは別に考える
クワガタの中には、一般的な「クワガタ用マット」だけでは産卵や幼虫飼育がうまくいかない種類もいます。
代表的なのが、
- ミヤマクワガタ類
- ツヤクワガタ類
- マルバネクワガタ類
などです。
ミヤマクワガタ
ミヤマクワガタ類は、朽ち木が細かく分解されて土のようになった環境を利用する種類が多く、発酵の進んだマットがよく使われます。
昆虫ショップでは、ミヤマクワガタ向けの完熟系マットや専用マットも販売されています。
外国産ミヤマでは種類によって好む環境が違うため、飼育する種類に合わせて選びます。
ツヤクワガタ
ツヤクワガタ類も、発酵の進んだ微粒子マットを好む種類が多いグループです。
産卵や幼虫飼育に癖のある種類も多いため、一般的なクワガタマットを適当に選ぶより、その種類で実績のあるマットを使う方が安定します。
マルバネクワガタ
マルバネクワガタ類は、自然界では大木の洞などにたまった特殊な腐植質を利用します。
飼育では赤枯れ材を細かくしたものや、マルバネ向けに調整された専用マットなどが利用されます。
普通のカブトマットだけで考えるより、マルバネ用として作られたものを選ぶ方が分かりやすいでしょう。
カブトムシの幼虫を育てる場合
カブトムシの幼虫は、発酵した植物質を食べて育ちます。
そのため、幼虫飼育には「カブト幼虫用」「カブトマット」などとして販売されている発酵マットを利用します。
産卵に使ったマットが幼虫飼育にも対応した商品であれば、そのまま餌として利用できます。
幼虫が成長すると、マットは徐々に粒状の糞へ置き換わっていきます。餌になるマットが少なくなったら、新しい発酵マットへ交換します。
国産カブトムシは比較的丈夫ですが、だからといって成虫用の針葉樹マットや未発酵の木屑で育てることはできません。
クワガタの幼虫を育てる場合
クワガタの幼虫飼育は、カブトムシ以上に種類ごとの差があります。
発酵マットで育てる種類もいれば、菌糸ビンを使った方が大型化しやすい種類もいます。
菌糸ビンがよく使われる種類
オオクワガタやヒラタクワガタなどでは、オオヒラタケなどを利用した菌糸ビンで幼虫を育てる方法が広く使われています。
菌糸ビンでなければ羽化できないわけではなく、発酵マットで育つ種類も多いのですが、大型個体を狙う場合には菌糸ビンがよく選ばれます。
発酵マットが向いている種類
ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタ、ツヤクワガタなど、発酵マットで育てることが多い種類もいます。
ただし、同じ「クワガタ用マット」でも発酵の深さや粒子などが異なります。
アンタエウスオオクワガタのように、飼育界で「根食い系」と呼ばれ、発酵の進んだマットがよく利用される種類もいます。
逆に、発酵の深いマットがすべてのクワガタ幼虫に適しているわけではありません。
そのため、幼虫を購入した場合は、販売元がどのマットや菌糸で育てていたのか確認しておくと管理しやすくなります。
マットの粒子にも違いがある
昆虫マットは、発酵度だけでなく粒子の大きさにも違いがあります。
細かな微粒子マットは隙間が少なく、メスが産卵床を作りやすいため、マットへ産卵するクワガタでよく使われます。
一方、幼虫飼育では種類や成長段階によって、多少粗い粒子が混ざったマットでも問題なく育ちます。
商品によっては、
- 産卵用超微粒子
- 幼虫飼育用
- 産卵・幼虫兼用
など、用途ごとに粒子を調整しています。
発酵の深さだけでなく、こうした表示も確認すると選びやすくなります。
昆虫マットは色だけで選ばない
店頭でマットを見ると、明るい茶色からほとんど黒に近いものまでさまざまです。
色は選ぶ際の参考にはなりますが、それだけで用途を判断するのはおすすめできません。
同じ黒色のマットでも、
- カブトムシ用
- ミヤマ用
- ツヤクワガタ用
- 完熟マット
など中身は異なります。
逆に、比較的明るい色でもクワガタの幼虫飼育や産卵に使える発酵マットがあります。
最も簡単なのは、商品の説明に書かれている対象種と用途を確認することです。
迷ったときの選び方
昆虫マット選びを簡単にまとめると、次のようになります。
成虫だけを飼う
成虫管理用マット
広葉樹マットや、昆虫成虫用に作られた針葉樹マットなどを利用します。
カブトムシを産卵させる
カブトムシ産卵・幼虫用の発酵マット
国産カブトから外国産カブトまで、基本的には発酵マットを使います。
カブトムシの幼虫を育てる
カブトムシ幼虫用の発酵マット
マット自体が幼虫の餌になります。
オオクワガタなどを産卵させる
産卵木+埋め込みマット
産卵場所は主に産卵木です。
ノコギリ・ヒラタなどをマットへ産卵させる
クワガタ産卵用の微粒子発酵マット
種類によっては産卵木を併用します。
クワガタの幼虫を育てる
クワガタ幼虫用発酵マット、または菌糸ビン
どちらが向くかは種類によって異なります。
ミヤマ・ツヤ・マルバネなど
対象種向けの専用マット
一般的な「クワガタ用」という表示だけで選ばず、その種類に合ったものを確認します。
発酵マットを使う前に確認すること
発酵マットは、購入した袋を開けてそのまま使える場合もありますが、状態によっては再発酵していることがあります。
まず袋を開けて、
- 強い発酵臭がしないか
- マットが熱を持っていないか
- 水分が多すぎたり少なすぎたりしないか
を確認します。
強い発酵臭や発熱がある場合は、広い容器やシートなどへ広げて空気に触れさせ、状態が落ち着いてから使用します。この作業が一般に「ガス抜き」と呼ばれています。
発酵マットは微生物が働いているため、輸送中や加水後に再び発酵が活発になることがあります。再発酵すると温度が上がり、幼虫がマットの表面へ出てきたり、状態を崩したりする原因になります。
加水後も発熱を確認する
乾いているマットには水を加えます。
水分量は、手で強く握ると形が残るものの、水が染み出してこない程度がひとつの目安です。
加水したマットをケースや容器へ詰めた後は、すぐに幼虫やメスを入れず、しばらく置いて発熱していないことを確認すると安全です。
まとめ
昆虫マットは見た目が似ていても、用途によって中身が大きく異なります。
- 成虫管理だけなら管理用マットで十分
- 針葉樹マットは成虫管理用として加工されたものを使う
- 埋め込みマットは主に産卵木を固定・埋めるためのマット
- カブトムシの産卵と幼虫飼育には発酵マットを使う
- マット産みするクワガタにはクワガタ産卵用マットを使う
- 材産みのクワガタではマットより産卵木が重要になる
- クワガタ幼虫は種類によって発酵マットと菌糸ビンを使い分ける
- ミヤマ、ツヤ、マルバネなどは専用マットを利用する方法もある
- マットの色だけで用途を判断しない
- 粒子の細かさも産卵や幼虫飼育に関係する
- 発酵臭や発熱があるマットは状態を落ち着かせてから使用する
昆虫マット選びで最も大切なのは、「黒いか茶色いか」ではなく、何の昆虫を、どの段階で飼育するためのマットなのかを確認することです。
飼育する種類と、成虫管理・産卵・幼虫飼育のどれに使うのかが分かれば、数多く並んだ昆虫マットの中から必要なものを選びやすくなります。

