ゴイサギの生態と特徴 | ホシゴイや鳴き声、食べ物を解説

鳥類

夕方の池や川で、「クワッ」という低い声が聞こえてくることがあります。その声の主として知られるのが、夜に活動するサギの仲間、ゴイサギです。

成鳥は紺色の頭と灰色の翼、赤い目を持っていますが、幼鳥は褐色の体に白っぽい斑点が入り、まるで別の鳥のような姿をしています。この幼鳥は「ホシゴイ」という名前でも親しまれています。

日本では河川や水田、池などさまざまな水辺に暮らしていますが、近年は確認される場所が大きく減っています。ここでは、ゴイサギの特徴や生息地、食べ物、鳴き声、繁殖、幼鳥の姿などについて紹介します。


ゴイサギとは

ゴイサギは、ペリカン目サギ科に属する鳥です。学名は Nycticorax nycticorax で、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、南北アメリカなど世界の広い範囲に分布しています。

日本では主に本州から九州に分布しています。東北地方では夏鳥として見られることが多く、それより南では一年を通して暮らす個体もいます。北海道や南西諸島でも繁殖や越冬が確認されています。

ずんぐりした体と赤い目

全長は約58cm、翼を広げると約110cmになります。

サギというと長い首と脚を持つ細身の鳥を想像しやすいですが、ゴイサギは首を縮めていることが多く、ずんぐりした姿に見えます。

成鳥は頭から背中にかけて深い紺色で、翼と尾は灰色、顔から腹側は白から明るい灰色をしています。赤い目も大きな特徴です。

後頭部には細長い白い冠羽が伸び、繁殖期には脚が赤みを帯びることがあります。

幼鳥は「ホシゴイ」と呼ばれる

ゴイサギの幼鳥は、成鳥とは大きく異なる姿をしています。

全身は褐色で、翼には白っぽい斑点が並んでいます。この星を散らしたような模様から、幼鳥は「ホシゴイ」と呼ばれています。

目も若いうちは黄色く、成長するにつれて赤くなります。羽も少しずつ灰色や紺色の成鳥羽へ変わっていきます。

ホシゴイは別の種類の鳥ではなく、成長途中のゴイサギです。

水辺で暮らす夜行性のサギ

ゴイサギは河川、湖沼、ため池、水田、農業用水路、干潟など、さまざまな水辺を利用します。

浅い水辺で餌を探し、昼間には水辺の樹林や竹林、ヨシ原などで休みます。公園や庭にある小さな池で見られることもあります。

夕方から夜に活動する

ゴイサギは基本的に夜行性で、日中は木の枝や茂みの中で休んでいます。

夕方になると休息場所から飛び立ち、河川や水田などへ餌を探しに向かいます。英名の「Black-crowned Night Heron」にも、夜に活動するサギという特徴が表れています。

ただし、繁殖期には昼間にも餌を探します。ヒナへ頻繁に餌を運ぶ必要があるため、夜だけではなく日中にも活動するようになります。

青森県津軽地方で行われた研究でも、非繁殖期には夜行性だったゴイサギが、繁殖期には昼間にも餌を探すことが確認されています。

「クワッ」と鳴きながら飛ぶ

ゴイサギは、「クワッ」「クァッ」などと聞こえる短い声で鳴きます。

特に夕方から夜にかけて、姿が見えないまま上空から声だけが聞こえてくることがあります。飛びながらよく鳴く鳥です。

夜に声を上げて飛ぶことから、「ヨガラス(夜烏)」と呼ばれることもあります。

ゴイサギの食べ物

ゴイサギは肉食性で、水辺にいるさまざまな小動物を食べます。

中心となるのは魚で、ドジョウやフナなどを捕らえます。このほかカエル、ザリガニ、水生昆虫なども食べます。

場合によってはネズミなどの小型哺乳類や、同じサギ類のヒナを捕食することもあります。利用できる餌に合わせて、幅広い動物を食べる鳥です。

水際で獲物を待つ

餌を探すときには浅い水辺に立ち、魚などが近づくのをじっと待ちます。獲物を見つけると素早く首を伸ばし、くちばしで捕らえます。

ゆっくり歩きながら獲物を探すこともあり、場所によって狩りの方法を使い分けます。

津軽地方で行われた研究では、水田と河川の両方を餌場として利用していました。特にドジョウが多く食べられており、夜間には水田、昼間には河川を利用する割合が高くなる傾向も確認されています。

ゴイサギの繁殖

日本では主に4〜7月ごろに繁殖します。

ゴイサギは一羽ずつ離れて巣を作るのではなく、多数のサギが集まる場所で繁殖する鳥です。

木の枝を組み合わせて皿状の巣を作り、1回に3〜6個ほどの淡い青緑色の卵を産みます。オスとメスの両方が抱卵し、ヒナの世話も行います。

抱卵期間は21〜27日ほどです。卵は数日にわたって順番に産まれるため、ヒナも同時ではなく少しずつ時期をずらして孵化します。

ヒナは約28日を巣の上で過ごし、巣を離れた後もしばらくは繁殖地の周辺で親から餌をもらいます。

ほかのサギと一緒にコロニーを作る

ゴイサギが集団で繁殖する場所は「コロニー」と呼ばれます。

ゴイサギだけでコロニーを作ることもあれば、アオサギやダイサギ、コサギなど、ほかのサギ類と同じ林で繁殖することもあります。カワウと一緒に繁殖する場合もあります。

主な繁殖場所は、平地にある樹林や竹林です。繁殖が終わるとコロニーから分散し、非繁殖期にはヨシ原や水辺の樹林などに集団でねぐらを作ります。

「五位鷺」という名前の由来

ゴイサギは漢字で「五位鷺」と書きます。

この名前の由来として有名なのが、『平家物語』に登場する話です。

醍醐天皇が神泉苑へ出かけた際、池のほとりにいたサギを捕らえるよう家来に命じました。サギは天皇の命令だと告げられると逃げずに捕らえられ、その行動を感心した天皇から「五位」の位を与えられたとされています。

この説話が「五位鷺」という名前の由来として伝えられてきました。

物語に登場する「鷺」が現在の分類上のゴイサギだったかどうかとは別に、ゴイサギの和名と結びついた古くからの説話として知られています。

日本では数を減らしている

ゴイサギは、かつて日本のサギ類の中でも特に数の多い鳥でした。

1980年の全国調査では、37都道府県79か所のコロニーで確認された集団繁殖性のサギ類のうち、ゴイサギは約半数を占めていました。

しかし、その後は全国各地で減少が目立つようになっています。

全国鳥類繁殖分布調査では、1997〜2002年に調査された1,947地点のうち236地点で確認されていましたが、2016〜2021年の調査では93地点まで減少しました。

2026年に絶滅危惧II類へ

2026年3月に公表された環境省の第5次レッドリストでは、ゴイサギが新たに「絶滅危惧II類(VU)」に掲載されました。

レッドリスト2020までは掲載されていなかったため、今回が初めての掲載となります。

一方で、ゴイサギは夜行性で、昼間には茂った樹林や竹林の中で休むため、ほかのサギ類より確認しにくい鳥でもあります。このため、記録地点の減少だけでは実際の個体数の変化を正確に捉えにくい部分もあります。

なぜ減っている?

ゴイサギが減少している原因は、まだ十分には分かっていません。

河川改修や湖沼の護岸化によって浅い水辺が変化することや、繁殖地となる樹林の伐採などが影響する可能性があります。

住宅地の近くにコロニーが作られると、鳴き声や大量の糞が問題となり、追い払いや営巣林の伐採が行われる場合もあります。

小型魚類の減少が影響している可能性も指摘されていますが、ゴイサギは水田、河川、池、干潟などさまざまな餌場を利用する鳥です。現在の減少を一つの原因だけで説明できる段階にはありません。

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まとめ

  • ゴイサギはペリカン目サギ科に属する鳥です。
  • 全長は約58cm、翼を広げると約110cmになります。
  • 成鳥は紺色の頭と灰色の翼、赤い目が特徴です。
  • 幼鳥は褐色に白っぽい斑点があり、「ホシゴイ」と呼ばれます。
  • 河川、池、水田、干潟などさまざまな水辺を利用します。
  • 主に夕方から夜に活動し、飛びながら「クワッ」と鳴きます。
  • 魚を中心に、カエルやザリガニ、水生昆虫などを食べます。
  • 繁殖期には樹林や竹林に集まり、コロニーを作ります。
  • 1回に3〜6個ほどの卵を産み、雌雄でヒナを育てます。
  • 「五位鷺」という名前には『平家物語』に登場する説話があります。
  • 2026年の環境省第5次レッドリストで、絶滅危惧II類に新たに掲載されました。

昼間は茂みの中で静かに休み、暗くなると水辺へ飛び出していくゴイサギ。成鳥とホシゴイでは見た目も大きく異なり、夜行性ならではの生活を送っています。

かつては各地で普通に見られた鳥ですが、現在は確認される場所が減っています。夕暮れの水辺で「クワッ」という声が聞こえたら、上空や岸辺にゴイサギがいないか探してみるとよいでしょう。

主要参考文献

  • 環境省『第5次レッドデータブック 鳥類』「ゴイサギ」
  • 日本野鳥の会 BIRD FAN「ゴイサギ」
  • 環境省 生物多様性センター「鳥類アトラスWEB版 ゴイサギ」
  • 遠藤菜緒子・佐原雄二(2000)「ゴイサギの繁殖期の日周活動と採餌場の利用」『日本鳥学会誌』
  • Cornell Lab of Ornithology “Black-crowned Night Heron”
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