鎧をまとった哺乳類、センザンコウ――驚異の身体と進化、そして絶滅の危機

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もう一つの可能性が刻まれています。センザンコウは、体の大部分を硬い鱗で覆われた珍しい哺乳類です。丸みを帯びた体に大きな鱗が重なる姿は、松ぼっくりのようにも見えます。

危険を感じると体を丸め、柔らかい腹部や顔を鱗の内側に隠します。一方、長い舌と大きな爪を使ってアリやシロアリを食べるという、独特の暮らしをしています。

現在はアジアとアフリカに8種が生息しています。しかし、肉や鱗を目的とした密猟や違法取引が続き、多くの地域で数を減らしています。この記事では、センザンコウの体の特徴や食べ物、進化、子育て、人間との関わりについて紹介します。


アジアとアフリカに8種が暮らす

現在知られているセンザンコウは8種で、アジアに4種、アフリカに4種が生息しています。

アジアには、ミミセンザンコウ、マレーセンザンコウ、インドセンザンコウ、パラワンセンザンコウが分布します。

アフリカには、オオセンザンコウ、サバンナセンザンコウ、キノボリセンザンコウ、オナガセンザンコウが暮らしています。

大きさも種類によってかなり違います。小型種では体重2キログラム前後ですが、大型のオオセンザンコウでは数十キログラムに達する個体もいます。

森の木の上をよく利用する種類もいれば、地上を歩き、穴を掘って暮らす種類もいます。

硬い鱗で体を守る

センザンコウの最大の特徴が、背中や体の側面、尾などを覆う大きな鱗です。

鱗の主成分はケラチンというタンパク質で、人間の爪や髪にも含まれています。腹部などには鱗がなく、柔らかい皮膚が見えています。

危険を感じると、頭や脚を内側へ入れて体を丸めます。外側には硬い鱗だけが残るため、捕食者から身を守ることができます。

尾も防御に使われます。種類によっては木登りの際に尾を枝へ巻きつけ、体を支えることもあります。

歯を持たず、長い舌でアリを食べる

センザンコウは、主にアリやシロアリを食べます。

前脚には大きな爪があり、アリの巣やシロアリ塚を崩すときに使います。そこへ細長い舌を差し込み、粘り気のある唾液で昆虫をくっつけて食べます。

舌は体の奥まで続いている

センザンコウには、食べ物をかみ砕くための歯がありません。

その代わり、非常に長い舌を持っています。大型の種類では、舌を40センチ近く伸ばせることがあります。舌に関係する筋肉は口の周辺だけに収まらず、胸から腹部の奥まで続く特殊なつくりになっています。

大きな唾液腺から粘り気のある唾液が出るため、小さなアリやシロアリを舌に付着させて次々と口へ運べます。

歯の代わりに胃で細かくする

歯を持たないセンザンコウは、食べ物を口の中でかみ砕きません。

胃には筋肉の発達した部分があり、飲み込んだ砂や小石なども使いながら、アリやシロアリの硬い体を細かくします。

アリの巣を壊すと大量のアリから反撃を受けますが、センザンコウは丈夫な皮膚や鱗を持ち、目や鼻も小さく、こうした食生活に適した体をしています。

嗅覚を頼りに餌を探す

センザンコウは視力が特に優れている動物ではありません。その代わり、嗅覚が発達しており、匂いを頼りにアリやシロアリを探します。

夜に活動する種類が多く、地面を歩きながら鼻先を使って餌を探します。木に登る種類では、鋭い爪と長い尾を使って枝の間を移動します。

センザンコウは水に入ることもあり、泳いで移動する姿も観察されています。マレーセンザンコウなどでは泳ぐ行動が知られています。

子どもを背中や尾に乗せることもある

センザンコウは通常、一度の出産で少数の子どもを産みます。

種類によっては、成長した子どもが母親の背中や尾にしがみついて移動します。危険が迫ると、母親が子どもを内側に抱え込むように体を丸めることもあります。

生まれたばかりの子どもの鱗は成獣ほど硬くなく、成長するにつれてしっかりした鱗になっていきます。

アリクイとは別の仲間

センザンコウは、長い舌でアリを食べる姿からアリクイによく似ています。しかし、両者は近い仲間ではありません。

センザンコウに最も近い現生の大きなグループは、ネコ、イヌ、クマ、イタチなどが属する食肉目だと考えられています。センザンコウと食肉目は、共通の祖先から分かれて進化してきました。

アリクイとセンザンコウが似ているのは、どちらもアリやシロアリを食べる生活を続ける中で、長い舌や大きな爪など似た特徴を持つようになったためです。

血縁関係の遠い生き物が、似た環境や食生活によって似た姿へ進化する例の一つです。

センザンコウの歴史は数千万年前までさかのぼる

センザンコウの仲間は、非常に古くから地球上に存在しています。

ドイツのメッセルからは、約4500万年前に生きていた初期のセンザンコウ類「エオマニス」の化石が見つかっています。

さらに約3500万〜3700万年前の北米からは、「パトリオマニス」という別のセンザンコウ類の化石も見つかっています。現在はアジアとアフリカにしかいませんが、過去には北米にもセンザンコウの仲間が暮らしていました。

こうした化石は、現在のセンザンコウの直接の祖先そのものとは限りません。センザンコウの仲間が長い時間をかけて、歯を失い、アリやシロアリを食べる現在の姿へ変化してきたことを知る手がかりになっています。

鱗は伝統薬にも利用されてきた

センザンコウの鱗は、長く伝統薬の材料として利用されてきました。

鱗の主成分はケラチンです。伝統的にはさまざまな効能があるとされてきましたが、その薬効を裏付ける十分な科学的証拠は確立していません。

中国では2020年、センザンコウが薬典の主要な生薬一覧から削除されたことが大きく報じられました。

ただし、これによってセンザンコウ由来の成分が完全に使われなくなったわけではありません。2020年版の薬典にも、センザンコウの鱗を材料に含む複数の処方が残っていたことが確認されています。

新型コロナウイルスとの関係は?

新型コロナウイルスの流行が始まった2020年、センザンコウが人への感染に関わったのではないかという説が大きく報道されました。

きっかけになったのは、密輸されたマレーセンザンコウからSARS-CoV-2に近いコロナウイルスが見つかったことです。

特に、人の細胞へ感染するときに重要となる部分ではSARS-CoV-2とよく似た特徴が確認されました。一方、ウイルス全体の遺伝情報はSARS-CoV-2とはかなり異なっています。

この発見から分かるのは、センザンコウもSARS-CoV-2に近いコロナウイルスに感染することがある、ということです。

センザンコウがSARS-CoV-2を人へ運んだ動物だったことを示す証拠は確認されておらず、パンデミックの中間宿主だったと断定することはできません。

違法取引によって数を減らしている

現在のセンザンコウにとって、大きな問題となっているのが密猟と違法取引です。

肉を食用にする目的や、鱗を伝統薬として利用する目的で捕獲されてきました。IUCNのセンザンコウ専門家グループでは、過去10年間に100万頭以上が野生から捕らえられたとする推計も紹介されています。

押収記録をもとにした別の推計でも、2000年から2019年までに約89万5000頭分に相当するセンザンコウが違法取引された可能性が示されています。

2016年には、ワシントン条約で現生8種すべてを附属書Iに掲載することが決まり、2017年から適用されました。現在は商業目的の国際取引が原則として認められていません。

飼育も簡単ではない

センザンコウは、アリやシロアリを中心に食べる特殊な食生活をしています。

そのため、飼育施設では野生と同じ食事を用意することが難しく、人工飼料や飼育環境の工夫が必要になります。ストレスや消化器の問題なども起こりやすく、長期飼育が難しい動物として知られています。

一方で、飼育下で19年以上生きた記録もあります。センザンコウの野生での寿命については、まだ分かっていない部分が多く残されています。

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まとめ

  • センザンコウは、体の大部分を硬い鱗で覆われた哺乳類です。
  • 現在はアジアに4種、アフリカに4種の計8種が生息しています。
  • 歯を持たず、長く粘り気のある舌でアリやシロアリを食べます。
  • アリクイとは別の仲間で、進化的には食肉目に近い動物です。
  • センザンコウの仲間は少なくとも約4500万年前には存在していました。
  • 肉や鱗を目的とした密猟や違法取引によって、多くの地域で数を減らしています。
  • 現生8種はすべてワシントン条約の附属書Iに掲載されています。

硬い鱗や長い舌、歯を持たない口など、センザンコウにはアリやシロアリを食べて暮らすための特徴がそろっています。現在の8種は、数千万年にわたって続いてきたセンザンコウの系統を今に伝える動物です。

📚 主要参考文献・参照ソース

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