シオヤアブは、ハエ目ムシヒキアブ科に分類される昆虫の一種です。比較的普通に見られる種で特に気に留める方は少ないと思いますが、実はスズメバチの天敵?といわれたりもする意外な面を持っているとか。
ここでは、そんなシオヤアブについて解説していきたいと思います。
大きさ、生息域、外見の特徴
分類 | ハエ目ムシヒキアブ科 |
学名 | Promachus yesonicus |
大きさ | 2~3cm程度 |
大きさはだいたい2~3cm程度で、大型のアブです。だいたい6~9月ごろにみられます。
だいたい一般的なアシナガバチ(セグロアシナガバチ)が2~2.6cmぐらいだから、それと同じか少し大きいぐらいです。
2~3cmというと一見大したことないように感じるけど、アシナガバチぐらいの大きさと考えると、想像以上にでかいと感じるかもしれませんね。
シオヤアブは北海道から九州まで、日本全国に分布しています。海外でも中国や朝鮮半島などにも生息しています。
外見は一見するとハエだかハチだか、エイリアンのような外見をしていて、あまり好意的に見れる方はいないかもしれません。体色は茶色っぽく、翅や足は黒色(ただし足の中間点は黄褐色)をしています。
名前の由来
シオヤアブは、漢字では、「塩谷虻」と書きます。
名前の由来は、オスの腹端部に白い毛が密集して生えており、それが塩のように見えるから、という説があります。腹端部が白くなるのはオスのみです。
シオヤアブの生態
シオヤアブの食べ物
アブといえば花の蜜などを吸っているイメージがあるかもしれませんが、このシオヤアブは肉食で、主にほかの昆虫などを食べて暮らしています。
視力が発達しており、数メートル先にいる獲物も見つけることができます。
オヤアブは、アブの中でも一番獰猛だといわれるぐらい、勇猛果敢な狩りをします。
彼らの狩りはすさまじく、飛んでいるほかの虫たちを背後から奇襲し、太い口器を突き刺して麻痺させ、体液を吸い取ります。
基本的には自分より小さな生き物を襲いますが、稀に自分より大きな生き物(トンボ、スズメバチ、カマキリetc..)などを襲うこともあります。もっともこれらの昆虫だと、逆にシオヤアブが襲われることもありそうですが..
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また、コガネムシなどの硬い外骨格を持った甲虫であってもおかまいなしです。
このことから一見無敵と思われるスズメバチであっても、このシオヤアブは恐れる存在ともされています。
実際に小型~中型のスズメバチであれば、シオヤアブの捕食の対象になることもしばしばです。
<スズメバチを捕らえたシオヤアブ>
狩りをする際にはまずは葉の上などにひそみ、自分の近くを獲物が通るのを待つ待ち伏せスタイルを取ります。そして、獲物が近づくと襲い掛かり、そして太い口器を突き刺すのです。
狩りの様子が見たい方は、以下の動画を参考にしてください。
※捕食動画なので、苦手な方は注意してください。
繁殖や幼虫の生態
シオヤアブの幼虫については、詳しくは分かっていないことも多いですが、幼虫は地面や朽ち木の中に潜って暮らし、地面の中の虫(コガネムシの幼虫など)を食べるといわれています。また、シオヤアブは幼虫の状態で越冬します。
繁殖の際には、カマキリの卵嚢のような形で白い泡状の物を産みつけ、その中に多くの卵が入っています。産卵は6~7月ごろにおこないます。
シオヤアブは危険?
アブの仲間の虫は日本にも数多くいますが、人間を刺してくることがあるのはそのうちの一部で、刺してくるアブの代表的なものとしてはイエシロオビアブやウシアブなどがいます。
これらはヒトやウマなどといった大型動物にたいして吸血しますが、シオヤアブのターゲットは昆虫のような生き物なので、性質は異なります。
一口にアブといっても様々で、なかにはトラツリアブというアブみたいに、全然刺さない&もふもふとしててとっても可愛いものもいます。
そうはいっても場合によっては勘違いからか、刺してくる可能性もないわけではありません。ハチのように毒針を持っているわけでもなく、刺される可能性も低いので見かけたからといって特にビビったり、慌てたりする必要はありません。
とはいえ、シオヤアブの口器は太いため、もし刺されると場合によっては腫れたりすることがあるかもしれません。仮に刺されても大きな害はないですが、痛かったり腫れたりすることはあるでしょうから、厄介といえば厄介です。
シオヤアブはこのように人に害を与えることもないとまではいえませんが、肉食で他の昆虫などを食べることから、益虫として扱われることもあります。
最後に
最後に、当記事で紹介したことを簡単に纏めます。
- シオヤアブは、体長2~3cmの大型のアブである
- 背後から獲物を奇襲し、体液を吸う
- 獰猛でスズメバチなど自分と同じぐらいかそれより大きなものを襲うこともある
- 幼虫は朽ち木や土の中で暮らしているといわれている
- 人間を刺すことも無いわけではないが、出くわしても刺される可能性は低く、危険性も低い
こんな感じで、シオヤアブにはスズメバチにもひるまず襲うことがあるなど、驚きの要素が詰まっています。
地味な昆虫ですが、是非頭の片隅にでも置いておいてくださいね。
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