硬い甲羅に覆われた体と、地面を掘るための大きな爪。アルマジロは、ほかの哺乳類にはあまり見られない独特な姿をしています。
危険を感じると丸くなる動物としても有名ですが、すべてのアルマジロがボールのようになれるわけではありません。多くの種類は穴へ逃げたり、体を地面へ押しつけたりして身を守ります。
南北アメリカにはさまざまな種類が暮らし、大きさや食べ物、生活する環境も種によって異なります。ここでは、アルマジロの特徴や生態、繁殖、寿命、人との関係に加え、ペットとして飼育できるのかについても紹介します。
アルマジロとはどんな動物?
アルマジロは、哺乳類の被甲目に属する動物の総称です。現在は複数の科や属に分けられ、南北アメリカに多くの種類が生息しています。
ナマケモノやアリクイと同じ「異節類」と呼ばれるグループの仲間です。見た目は大きく違いますが、進化の歴史をたどると近い関係にあります。
名前は「小さな鎧」に由来する
「armadillo」という名前はスペイン語に由来し、「小さな鎧をまとったもの」といった意味があります。
名前の通り、背中や頭などは硬い甲羅で覆われています。甲羅の内側には骨でできた板が並び、その表面を硬い皮膚が覆っています。
背中には動かせる帯状の部分があるため、甲羅を持ちながら体を曲げたり歩いたりできます。
南北アメリカにさまざまな種類が暮らす
アルマジロの仲間はアメリカ大陸に分布しています。特に種類が多いのは南アメリカです。
熱帯雨林だけでなく、草原、乾燥した低木地、砂地などにも暮らしています。中央アメリカから北へ分布を広げた種類もあり、ココノオビアルマジロは現在アメリカ合衆国でも広い地域に生息しています。
大きさは種類によって大きく違う
アルマジロとひとまとめにされていますが、体の大きさにはかなりの差があります。
小型のヒメアルマジロ類は体長十数cmほどですが、オオアルマジロは体重30kgを超えることもあります。
日本の動物園では、マタコミツオビアルマジロなどを見られることがあります。
すべてのアルマジロが丸くなるわけではない
アルマジロを象徴する姿といえば、甲羅を閉じてボールのように丸くなった状態です。
ところが、完全に体を包み込むように丸くなれるのは、ミツオビアルマジロ属の2種です。
ミツオビアルマジロは完全に丸くなれる
マタコミツオビアルマジロとミツオビアルマジロは、危険を感じると頭や脚、尾を甲羅の中へ収めます。
甲羅の前後が合わさると、柔らかな腹部までほぼ完全に隠れます。捕食者から身を守るための強力な防御方法です。
ほかのアルマジロにも体を曲げる種類はいますが、同じように完全な球状にはなれません。
多くの種類は穴へ逃げる
アルマジロの多くは、丸くなることより穴掘りを得意としています。
敵に襲われると巣穴へ逃げ込み、丈夫な爪や脚を使って踏ん張ります。地面を急いで掘り、体を隠す種類もいます。
硬い甲羅だけでなく、穴を掘る能力もアルマジロを守る重要な武器です。
大きな爪で地面を掘る
多くのアルマジロは、太い前脚と丈夫な爪を持っています。
この爪を使って地面を掘り、餌を探したり、休むための巣穴を作ったりします。土の中へ鼻先を入れながら、においを頼りに獲物を探す姿もよく見られます。
巣穴は休む場所にもなる
巣穴は敵から身を隠すだけでなく、暑さや寒さを避ける場所にもなります。
アルマジロの仲間には体温調節があまり得意ではない種類もいます。外気の影響を受けにくい地中で休むことで、暑い時間帯や冷え込む時間帯をやり過ごします。
活動する時間も季節や気温によって変化します。暑い地域では夜に活発になることが多く、涼しい季節には昼間に活動することもあります。
においを頼りに食べ物を探す
アルマジロは嗅覚をよく使って餌を探します。
地面に鼻先を近づけながら歩き、獲物の気配を感じると爪で土を掘ります。
昆虫を食べる種類が多い
アリ、シロアリ、甲虫の幼虫などは、多くのアルマジロにとって重要な食べ物です。
ただし、すべての種類が昆虫だけを食べているわけではありません。果実や種子などの植物質、小型の脊椎動物などを利用する種類もいます。
マタコミツオビアルマジロではアリやシロアリなどが重要ですが、ムツオビアルマジロなどは、より幅広い食べ物を利用します。
基本的には単独で暮らす
アルマジロの多くは、普段は一頭で行動します。
繁殖の時期や親子で過ごす期間を除けば、大きな群れを作って生活する種類ではありません。自分の行動範囲を歩きながら餌を探し、巣穴などで休みます。
一日の活動時間も種類によって違います。長い時間を休んで過ごし、数時間ほど活発に餌を探す種類もいます。
一卵性の4つ子を産む種類がいる
アルマジロの繁殖方法も種類によってさまざまです。
マタコミツオビアルマジロでは、通常1頭の子どもを産みます。一方、ココノオビアルマジロなどの Dasypus 属には、非常に珍しい繁殖方法が見られます。
一つの受精卵から4頭に分かれる
ココノオビアルマジロでは、一つの受精卵が途中で分かれ、通常4頭の子どもに成長します。
同じ受精卵から育つため、4頭は基本的に同じ性別で、遺伝的にもほぼ同じです。
一つの受精卵から複数の胚が育つこの仕組みは「多胚形成」と呼ばれ、アルマジロの中でも Dasypus 属を特徴づける繁殖方法として知られています。
アルマジロの寿命
寿命は種類によって大きく異なります。
野生では捕食、病気、交通事故などさまざまな影響を受けるため、正確な寿命がよく分かっていない種類もあります。
飼育下では10年以上生きることもある
マタコミツオビアルマジロは、飼育下では15〜20年ほど生きるとされています。動物園で飼育された個体の中には、それ以上の高齢まで生きた例もあります。
一方、ケナガアルマジロの仲間では、飼育下で8〜9年ほどが寿命の目安とされる種類もあります。
種類による違いが大きいため、「アルマジロの寿命は○年」とひとつの数字で表すことはできません。
アルマジロと人間
アルマジロは南北アメリカの各地で、昔から人間に利用されてきました。
地域によっては食用として狩猟され、特徴的な甲羅が道具や工芸品などに利用されたこともあります。
チャランゴに甲羅が使われたこともある
南米アンデス周辺には、「チャランゴ」と呼ばれる小型の弦楽器があります。
かつてはアルマジロの甲羅を胴体に使ったチャランゴも作られていました。現在では木材などを使ったものも広く作られています。
硬く丸みのある甲羅は、アルマジロ自身の体を守るだけでなく、人間の文化の中でも利用されてきました。
ハンセン病との関係
アルマジロは、ハンセン病の研究との関係でも知られています。
アメリカ南部などに生息する野生のアルマジロの一部では、ハンセン病の原因となる細菌への自然感染が確認されています。
すべてのアルマジロが菌を持つわけではない
アルマジロ全体がハンセン病の原因菌を持っているわけではありません。
アメリカ疾病予防管理センターでは、アメリカ南部の一部のアルマジロから人へ感染する可能性があるとしていますが、その危険性は低いとしています。
野生のアルマジロを素手で扱わないことは、アルマジロに限らず野生動物と接するときの基本です。
アルマジロはペットにできる?
アルマジロは動物園などで飼育されており、海外では人に慣れた個体が教育活動に使われることもあります。
家庭で飼育された例もありますが、犬や猫のような一般的なペットとは大きく異なります。アルマジロの保全や研究を行うIUCNの専門家グループも、アルマジロをペットとして飼育することを勧めていません。
家庭での飼育は簡単ではない
アルマジロは床を歩き回り、鼻先や爪を使って地面を探ることに多くの時間を使います。
丈夫な爪で床材を掘るため、狭いケージに入れておくだけでは本来の行動を十分に行えません。隙間を掘り広げたり、飼育設備を傷つけたりする可能性もあります。
診察できる動物病院が限られることも、飼育を難しくする理由のひとつです。
アルマジロの飼育環境
飼育方法は種類によって異なります。ここでは、動物園などで比較的多く飼育されているマタコミツオビアルマジロを中心に紹介します。
床を歩き回れる空間を用意する
アルマジロは木の上へ登って生活する動物ではないため、高さよりも床面積が重要です。
歩き回ったり、においを嗅いだり、床材を掘ったりできる空間を用意します。体を隠して休める巣箱も必要です。
飼育施設では、丸太や箱、床材などを使い、餌を探したり周囲を調べたりできる環境が作られています。
掘れる床材を入れる
床にはウッドチップやバークチップなど、鼻先を入れたり前脚で掘ったりできる素材が使われます。
マタコミツオビアルマジロはほかのアルマジロほど深い巣穴を掘る生活に依存しませんが、飼育下でも床材を掘ったり探索したりします。
硬い床だけで生活させるのではなく、こうした行動ができる場所を作ることが重要です。
暖かい環境を保つ
マタコミツオビアルマジロは南アメリカの比較的暖かい地域に生息しています。
飼育施設では20℃台前半を中心とした室温で管理し、暖かい巣箱などを用意する例があります。暖かい場所と少し涼しい場所を作り、個体が自分で選べるようにすると管理しやすくなります。
日本の冬に屋外へ出したまま飼育するような環境には向きません。
餌は種類に合わせて用意する
野生のアルマジロは昆虫をよく食べますが、飼育下でミルワームだけを与えればよいわけではありません。
動物園では、昆虫食動物向けの専用飼料や昆虫などを組み合わせて与えています。種類によっては果物や野菜などを利用することもあります。
餌を探す時間も大切
野生では、アルマジロは鼻と爪を使って長い時間をかけて餌を探します。
飼育下でも、餌を床材の中に隠したり、容器の中から探させたりすることで、本来の探索行動を引き出せます。
餌を皿へ入れて与えるだけでなく、「探して食べる」時間を作ることも飼育環境の一部です。
無理に触ったり丸めたりしない
マタコミツオビアルマジロがボールのように丸くなる姿は印象的ですが、これは身を守るための行動です。
頻繁に触って丸くさせたり、無理に抱き上げたりする必要はありません。
人に慣れた個体もいますが、抱っこや触れ合いを目的として作られたペットではありません。個体が自分から離れられる環境を用意し、落ち着いて過ごせるようにします。
日本へ持ち込む場合には手続きが必要
アルマジロを海外から日本へ輸入する場合は、厚生労働省の「動物の輸入届出制度」の対象になります。
輸出国の政府機関が発行する衛生証明書などを準備し、日本到着時に検疫所へ届出を行う仕組みです。個人がペットとして持ち込む場合も対象となります。
種類によってはCITESも関係する
アルマジロのすべてがCITESの対象になっているわけではありませんが、オオアルマジロなど一部の種類は附属書に掲載されています。
こうした種類を国際取引する場合には、動物の輸入届出制度とは別にCITESに関する手続きも関係します。
規制は種類や由来によって異なるため、海外からの輸入を考える場合には、対象となる種類を確認する必要があります。
ペットとして飼いやすい動物ではない
アルマジロは飼育そのものができない動物ではありません。しかし、家庭向けのペットとして飼いやすい動物でもありません。
歩き回れる空間、掘れる床材、温度管理、適切な食事、隠れ場所などが必要です。さらに、種類によっては15年以上生きるため、長期間にわたって飼育環境を維持する必要があります。
特徴的な外見だけでなく、野生でどのように暮らしているのかまで知ったうえで飼育環境を考える必要がある動物です。
まとめ
- アルマジロは南北アメリカに生息する被甲目の哺乳類です。
- 甲羅の内側には骨でできた板が並んでいます。
- 完全なボール状になれるのは、ミツオビアルマジロ属の2種です。
- 多くの種類は丈夫な前脚と爪を使って地面を掘ります。
- 昆虫をよく食べますが、食生活は種類によって異なります。
- 基本的には一頭で生活する種類が多く見られます。
- ココノオビアルマジロでは、一つの受精卵から通常4頭の子どもが育ちます。
- 寿命は種類によって異なり、飼育下で10年以上生きる種類もいます。
- アメリカ南部では、一部の野生個体からハンセン病の原因菌が確認されています。
- 家庭で飼育された例はありますが、一般的なペットとして飼いやすい動物ではありません。
- 飼育には床面積、床材、温度管理、適切な食事、隠れ場所などが必要です。
- 日本へ輸入する場合には動物の輸入届出制度の対象になります。
甲羅に覆われた姿が目を引くアルマジロですが、その暮らしを支えているのは甲羅だけではありません。鋭い嗅覚を使って餌を探し、丈夫な爪で地面を掘りながら生活しています。
種類による違いも大きく、丸くなれるもの、深い巣穴を掘るもの、昆虫を中心に食べるものなど暮らし方はさまざまです。飼育する場合にも、こうした野生での生活に合わせた環境を用意する必要があります。
主要参考文献・参照ソース
- American Society of Mammalogists, Mammal Diversity Database「Cingulata」
- Smithsonian’s National Zoo and Conservation Biology Institute「La Plata Three-banded Armadillo」「Screaming Hairy Armadillo」
- 平川動物公園「マタコミツオビアルマジロ」
- IUCN SSC Anteater, Sloth and Armadillo Specialist Group
- Centers for Disease Control and Prevention(CDC)「About Leprosy」
- 厚生労働省「動物の輸入届出制度」
- 経済産業省「ワシントン条約(CITES)」

