大きな目ととがった顔、長いしま模様の尾を持つ動物がカコミスルです。見た目はネコやキツネを思わせますが、実際にはアライグマに近い仲間です。
夜になると活動を始め、岩壁や木を器用に登りながら、ネズミや昆虫、果実などを探します。かつて北米では、人の近くでネズミを捕る動物として利用されたこともあり、「Miner’s cat(鉱夫のネコ)」という別名も残っています。
ここでは、カコミスルの特徴や食べ物、岩場を移動する能力、繁殖、人間との関わりについて紹介します。
カコミスルはアライグマの仲間
カコミスルの学名は Bassariscus astutus です。食肉目アライグマ科カコミスル属に分類されます。
英語では「Ringtail」や「Ring-tailed cat」などと呼ばれます。「cat」と付いていますが、ネコ科の動物ではありません。カコミスル属には、カコミスルのほか、中米に分布するクロアシカコミスル Bassariscus sumichrasti がいます。
カコミスルは、アメリカ合衆国西部から南部、メキシコにかけて分布しています。アリゾナ、ニューメキシコ、テキサス、カリフォルニアなど、アメリカ南西部では比較的広く見られます。
乾燥した岩山のイメージが強い動物ですが、峡谷や低木地、森林、河川周辺などにも生息しています。岩の隙間や樹洞など、昼間に身を隠せる場所のある環境を利用します。
体と同じくらい長いしま模様の尾
カコミスルは小型の哺乳類です。頭から胴までの長さはおよそ30〜42cmで、体重は1kg前後です。そこに30〜44cmほどの長い尾が付きます。
尾には黒と白の輪状の模様が並び、体と同じくらいの長さがあります。この特徴が英名「Ringtail」の由来です。
体は黄褐色から灰褐色で、腹側は淡い色をしています。顔には大きな黒い目があり、その周囲を白っぽい毛が囲みます。大きな丸い耳と細長い鼻先も特徴です。
夜行性なので、野生のカコミスルを昼間に見る機会は多くありません。暗くなると隠れ場所から出て、食べ物を探し始めます。
岩壁や木を器用に移動する
カコミスルの大きな特徴の一つが、優れた木登りや岩登りの能力です。
岩山や峡谷では、小さな出っ張りや割れ目に足を掛けながら移動します。木にも登り、細い枝の上を歩くことができます。
特に特徴的なのが後ろ足です。足首を大きく回転させられるため、頭を下に向けた状態で木の幹や岩壁を降りることができます。狭い岩の割れ目では、背中と4本の足を左右の壁へ押し付けるようにしながら上へ進むこともあります。
長い尾も、こうした移動を助けています。尾だけで枝につかまることはできませんが、細い枝や急な岩場を移動するときにバランスを取る役割があります。
昼間は岩の割れ目や洞窟、樹洞、倒木の内部などで休みます。場所によっては、建物の屋根裏などを利用することもあります。
ネズミから果実まで食べる雑食性
カコミスルは食肉目に分類されますが、肉だけを食べる動物ではありません。
ネズミなどの小型哺乳類、昆虫、鳥、トカゲ、ヘビ、カエルなどを食べるほか、果実や木の実も利用する雑食性です。何を多く食べるかは、季節や地域によって変わります。動物質の食べ物を多く利用する時期もあれば、果実を盛んに食べることもあります。
夜になると岩や倒木の周囲を歩き回り、隙間にも入り込んで食べ物を探します。小さな体と高い運動能力を生かし、ネズミや昆虫が潜んでいる場所にも入り込めます。
人の生活圏に現れた場合には、放置された食べ物やごみに近づくこともあります。
「鉱夫のネコ」と呼ばれた理由
カコミスルには、「Miner’s cat」という変わった別名があります。
アメリカ西部で鉱山開発が盛んだった時代、鉱夫のキャンプや建物の周辺にカコミスルが現れ、ネズミを捕らえていたことに由来するとされています。若い個体を人に慣らし、建物内のネズミ対策に利用したとも伝えられています。
ただし、これはカコミスルが家畜化されたという意味ではありません。イヌやネコのように、長い世代にわたって人間との暮らしに適した性質を選ばれてきた動物ではなく、現在も基本的には野生動物です。
普段は単独で暮らす
カコミスルは基本的に一頭で行動します。繁殖期などを除けば、複数の成獣が常に一緒に生活する動物ではありません。それぞれが活動する範囲を持ち、夜になると食べ物を探して移動します。
繁殖は主に春に行われます。妊娠期間はおよそ7週間で、春の終わりから初夏にかけて1〜4頭ほどの子どもを産みます。
出産場所には、岩の隙間や樹洞などが使われます。生まれたばかりの子どもは目が閉じていて、自分だけでは生活できません。
成長すると母親について巣の外へ出るようになり、次第に固形物も食べ始めます。その後、成長とともに母親から離れ、単独で行動するようになります。
敵に襲われると尾を膨らませる
小柄なカコミスルには、コヨーテ、ボブキャット、大型のフクロウなどの天敵がいます。
危険を感じたときは逃げることが多いですが、追い詰められると尾の毛を逆立て、体を大きく見せることがあります。さらに、大きな声を出したり、肛門付近の臭腺から強いにおいのある分泌物を出したりすることもあります。
木登りや岩登りの能力も、食べ物を探すためだけのものではありません。岩の隙間や高い場所へ素早く逃げ込めることは、捕食者から身を守るうえでも役立っています。
カコミスルはペットにできる?
カコミスルは、かつて人の近くで飼われた記録がある動物です。しかし、現在の一般家庭で飼うペットとしては、かなり扱いにくい動物です。
大きな理由は、野生動物としての性質が強いことです。夜行性なので、人が眠っている時間に活発に動きます。木や岩壁を登る能力が高く、小さな隙間にも入り込めます。
飼育するには、十分な高さと強度を持ち、脱走を防げる設備が必要になります。食事についても、果実だけでなく動物質を含むさまざまな食べ物を利用するため、栄養を考えた管理が必要です。隠れられる場所や、登るための枝や足場、十分に動ける空間も求められます。
臭腺から強いにおいを出すことがある点や、野生動物を診察できる獣医師が限られることも、一般的なペットとは異なる点です。
日本で飼育する場合
日本では、カコミスルが一般的なペットとして流通しているわけではなく、入手する機会は非常に限られています。
海外から日本へ持ち込む場合には、動物の輸入に関する制度や手続きが関係します。規制内容は変更されることもあるため、実際に輸入を検討する場合には、検疫所などの公的機関で最新の情報を確認する必要があります。
飼育環境についても、夜間に十分動けるスペース、登れる立体的な設備、複数の隠れ場所、脱走を防げる構造などが必要になります。
かつて人に慣らして飼われたことがあるからといって、イヌやネコのような感覚で飼育できる動物ではありません。
カコミスルの保全状況
カコミスルは、アメリカ合衆国からメキシコにかけて比較的広い範囲に分布しています。
IUCNのレッドリストでは「低懸念(LC)」に分類されており、現在、種全体が絶滅の危機にある動物とは評価されていません。
夜行性で人目につきにくいため、生息していても姿を見る機会が少ない動物です。グランドキャニオンなどにも生息していますが、昼間の観光中に出会えることは多くありません。
乾燥した岩場だけでなく、森林や河川周辺なども利用できることが、広い分布を支えています。
まとめ
- カコミスルは、アメリカ合衆国やメキシコに分布するアライグマ科の動物です。
- 体重は1kg前後で、体と同じくらい長い白黒のしま模様の尾を持ちます。
- 夜行性で、岩場や木を非常に器用に登ります。
- 後ろ足を大きく回転させ、頭を下にして木や岩壁を降りることもできます。
- ネズミ、昆虫、鳥、爬虫類、果実などを食べる雑食性です。
- かつて人の近くでネズミを捕るために利用されたことがありますが、家畜化された動物ではありません。
- 日本では一般的なペットではなく、飼育には設備や食事、診療先など多くの課題があります。
長いしま模様の尾と大きな目が目立つカコミスルですが、その特徴は見た目だけではありません。
急な岩壁を上下する身軽さや、さまざまな食べ物を利用する雑食性など、乾燥した岩場をはじめ、北米のさまざまな環境で暮らすことに適した動物です。

