熱帯の森を見上げたとき、木のてっぺん近くに鮮やかな青色の鳥がとまっていることがあります。ルリカザリドリです。
オスは青と紫の目立つ羽を持つ一方、メスは全体的に茶色で、同じ種類とは思えないほど姿が異なります。
ルリカザリドリは森の高い場所で過ごし、主に果実を食べて暮らしています。派手な姿とは対照的に、大きなさえずりで存在を知らせる鳥ではありません。
この記事では、ルリカザリドリの特徴、生息地、オスとメスの違い、食べ物、繁殖などについて紹介します。
中南米に暮らすカザリドリの仲間
ルリカザリドリの学名は Cotinga nattererii、英名は「Blue Cotinga」です。
スズメ目カザリドリ科に分類されます。
カザリドリ科には、中南米の熱帯地域に暮らすさまざまな鳥が含まれています。種類によって姿はかなり異なり、鮮やかな色の羽を持つものも少なくありません。
ルリカザリドリは全長18〜20センチメートルほどの鳥です。丸みのある体に小さめの頭を持ち、くちばしは短めです。
それほど大きな鳥ではありませんが、オスは鮮やかな青色をしているため、姿を確認できれば強い印象を受けます。
オスは鮮やかな青と紫
ルリカザリドリのオスは、体の大部分が鮮やかな青色です。
光の当たり方によっては、青緑色やターコイズブルーのようにも見えます。ただし、全身が同じ色ではありません。
翼や尾は黒っぽく、目の周囲にも黒い部分があります。喉から胸には黒紫色から紫色の部分があり、腹にも紫色の斑があります。
青、黒、紫が組み合わさった羽色は、ルリカザリドリのオスを見分ける大きな特徴です。
一方、森の下から高い枝を見上げると、鮮やかな青色が意外に目立たないこともあります。
空を背景にした鳥は逆光で暗い影に見えやすく、オスが高い枝でじっとしていると、青い鳥だと気づきにくい場合があります。
メスは茶色い羽を持つ
メスはオスとは大きく異なる姿をしています。鮮やかな青色ではなく、全体的に茶色です。
背中側の羽には淡い色の縁取りがあり、細かなうろこ模様のように見えます。胸や腹にも褐色の模様があります。
そのため、オスとメスだけを別々に見ると、同じ種類とは思えないかもしれません。
オスの青い羽が目立つ一方、メスの茶色い羽は枝や葉の影が多い森林の中では目立ちにくい色です。
ルリカザリドリを観察するときには、青い鳥だけを探しているとメスを見落とすことがあります。
パナマから南米北西部に分布する
ルリカザリドリは、中米南部から南米北西部にかけて分布しています。
パナマ、コロンビア、エクアドル北西部、ベネズエラ西部などで見られます。
主な生息地は湿った熱帯林です。
森の上のほうや森林の縁、大きな木が残る場所などを利用します。人の手が入っていない森林だけでなく、伐採後に背の高い木が再び育った森林でも確認されています。
特に低地の森林で多く見られます。
地面近くを歩き回る鳥ではなく、一日の多くを木の高い場所で過ごします。
そのため、生息している地域でも簡単に姿を見つけられるとは限りません。
森の高い場所で暮らす
ルリカザリドリは、森の上部で過ごすことが多い鳥です。
高い木の枝や、周囲の木より上へ伸びた枝にとまっている姿が見られます。
普段は一羽で行動していることが多いものの、食べ物の多い場所では複数の個体が集まることがあります。
特に果実をたくさん付けた木には、何羽ものルリカザリドリがやってくる場合があります。
こうした木には、ルリカザリドリだけでなく、ほかの果実を食べる鳥も集まります。
普段は高い枝にいて見つけにくい鳥ですが、実の多い木の周辺では観察できる機会が増えます。
主な食べ物は果実
ルリカザリドリは、果実を主に食べる鳥です。
森の高い場所に実るさまざまな果実を利用します。
枝にとまって食べるだけでなく、短く羽ばたきながら果実を取ることもあります。
エクアドルでは、イチジクの仲間やヤドリギ類、ヤシ類など、複数の植物の果実を食べることが記録されています。
熱帯林では、同じ木に一年中果実があるわけではありません。
ある木の実がなくなれば、別の場所で実っている果実を探す必要があります。
ルリカザリドリが森の中を移動したり、果実の豊富な木に複数個体が集まったりするのも、こうした食生活と関係しています。
鮮やかな姿に比べて静かな鳥
ルリカザリドリは、姿の派手さに比べて鳴き声が目立たない鳥です。
大きな声で長くさえずり続けるタイプではありません。
そのため、森の中では鳴き声を頼りに探すより、高い木の枝や果実のなる木を観察して姿を見つけることがあります。
一方、まったく音を出さないわけではありません。
オスが飛ぶ際には、翼から「ガラガラ」「羽ばたくような音」と表現される機械的な音を出すことがあります。
実際に複数のオスが飛びながらこうした音を出している録音も残されています。
声だけでなく、翼そのものを使った音もルリカザリドリの特徴の一つです。
繁殖については分かっていないことも多い
ルリカザリドリの繁殖については、まだ詳しく分かっていない部分があります。
森の高い場所で生活するため、巣を見つけて長期間観察することが簡単ではありません。
パナマでは、2月から3月に繁殖していた記録があります。
また、パナマで確認された巣では、2羽のヒナが記録されています。
巣に関わる行動はメスが行うとされています。
コロンビアでは、1月から4月ごろに繁殖状態の個体が確認された記録もあります。
ただし、抱卵にかかる日数や、ヒナが生まれてから巣立つまでの期間など、詳しい繁殖の様子については情報が限られています。
よく知られた見た目とは対照的に、繁殖についてはまだ分からないことが残る鳥です。
青いオスは高い枝に姿を現す
オスは、周囲の木より高く伸びた枝にとまることがあります。
鮮やかな青い体は近くで見ると目立ちますが、高い場所で動かずにいると意外に見つけにくくなります。
空を背景にすると鳥の体が影になり、青い色が分かりにくくなるからです。
一度飛び立つと、青い体と黒っぽい翼の組み合わせがよく分かります。
果実のある木へ飛んだあと、再び高い枝へ戻る姿も見られます。
茶色いメスはさらに森の色に紛れやすいため、同じ場所にいてもオスほど簡単には気づけません。
よく似たカザリドリもいる
カザリドリ属には、青や紫の美しい羽を持つ種類が複数います。ルリカザリドリと特によく似ているのが、ターコイズコティンガです。
どちらもオスは鮮やかな青色をしており、紫色の部分もあります。ただし、分布する地域は異なります。
ルリカザリドリはパナマから南米北西部に分布するのに対し、ターコイズコティンガは主にコスタリカ南西部からパナマ西部に分布します。
鳥を見分けるときには、羽の色や模様だけでなく、どの地域で見られたのかも重要です。なお、ソライロカザリドリの学名は Cotinga cayana で、ルリカザリドリとは別の種類です。
現在は低懸念に分類されている
ルリカザリドリは、IUCNのレッドリストでは「低懸念(LC)」に分類されています。
現在のところ、種全体が絶滅の危機にある鳥とは評価されていません。
一方、生息地である中南米の熱帯林では、地域によって森林の伐採や農地への転換が続いています。
ルリカザリドリは森林の縁や背の高い木が残る場所でも見られるため、完全な原生林だけに暮らす鳥ではありません。
それでも、食べ物となる果実を付ける木や、生活場所となる高い木がある森林は、この鳥が暮らすうえで重要です。
まとめ
- ルリカザリドリの学名は Cotinga nattererii です。
- 中米南部から南米北西部の熱帯林に分布しています。
- オスは鮮やかな青と紫、メスは茶色い羽を持っています。
- 主に森の高い場所で生活します。
- 食べ物は果実が中心です。
- 普段は単独で見られることが多いものの、果実のなる木には複数個体が集まることがあります。
- 大きなさえずりは目立たず、オスは飛翔時に翼から音を出すことがあります。
- パナマでは2〜3月の繁殖記録があり、巣では2羽のヒナが確認された例があります。
- IUCNでは低懸念に分類されています。
ルリカザリドリは、オスの鮮やかな青色で知られる一方、普段は熱帯林の高い場所で静かに暮らす鳥です。茶色いメスとの大きな違いや、果実を探して森の上を移動する暮らしにも、この鳥らしい特徴があります。
主要参考文献・参照ソース
- Cornell Lab of Ornithology / eBird
Blue Cotinga (Cotinga nattererii) - Cornell Lab of Ornithology / Macaulay Library
Blue Cotinga recordings - BioWeb Ecuador, Pontificia Universidad Católica del Ecuador
Cotinga nattererii - Smithsonian Institution
Birds of Barro Colorado Island - Avibase
Blue Cotinga (Cotinga nattererii)
