ヘルマンリクガメは、ヨーロッパ南部に生息する比較的小型のリクガメです。丈夫で飼育しやすい種類として知られ、日本でもペットとして広く飼育されています。
一方で、健康に長く飼うためには、十分な飼育スペースや紫外線、適切な温度管理、植物を中心とした餌などを用意する必要があります。
この記事では、ヘルマンリクガメの大きさや特徴から、ケージ、温度、湿度、餌、寿命、冬眠まで、基本的な飼育方法を紹介します。
ヘルマンリクガメとは
ヘルマンリクガメは、ヨーロッパ南部に生息するリクガメです。
スペイン北東部や南フランス、イタリアからバルカン半島、ギリシャ、ヨーロッパ側のトルコまで広く分布しています。
ヘルマンリクガメは比較的小型のリクガメで、一般的な甲長は13〜20cmほどです。ただし、大きさには亜種や地域、性別による違いがあり、20cmを超える個体もいます。
丈夫な種類として紹介されることも多く、日本でもペットとしてよく飼育されています。
ただし、単に室温で飼えるカメというわけではありません。健康に飼育するには、十分な広さ、紫外線、バスキングできる暖かい場所、適切な餌などを用意する必要があります。
ヒガシヘルマンとニシヘルマン
ヘルマンリクガメには、現在おもに2つの亜種が認められています。
- ヒガシヘルマンリクガメ
- ニシヘルマンリクガメ
ヒガシヘルマンはバルカン半島からギリシャ、ヨーロッパ側のトルコなどに分布し、日本でも比較的よく流通しています。
ニシヘルマンはスペイン北東部、フランス南部、イタリアなどに分布します。ヒガシヘルマンより小型の個体が多く、甲羅の黄色と黒の模様がはっきりした個体も見られます。
以前は「ダルマティアヘルマンリクガメ」を別の亜種として扱うこともありましたが、現在の主要な分類ではヒガシヘルマンに含められています。
ギリシャリクガメとの違い
ヘルマンリクガメとよく似た種類に、ギリシャリクガメがいます。
見分けるときに分かりやすい特徴のひとつが、尾の先端です。ヘルマンリクガメには硬い爪のような突起がありますが、ギリシャリクガメには基本的にありません。
また、ヘルマンリクガメでは尾のすぐ上にある甲板が左右に分かれている個体が多いのに対し、ギリシャリクガメでは1枚になっていることが多いという違いがあります。
さらに、ギリシャリクガメには後ろ脚の太もも付近に硬い突起がありますが、ヘルマンリクガメにはありません。
ただし、甲板の分かれ方には個体差があります。尾先や太ももの突起など、複数の特徴を合わせて見分けます。
ヘルマンリクガメの飼育に必要なもの
ケージ
ヘルマンリクガメは活発に歩き回るため、できるだけ広い飼育スペースを用意します。
幼体のうちは比較的小さなケージでも管理できますが、成長に合わせて広いものへ変更します。
成体では、通気性のよいオープン型ケージやトータステーブルなどを利用し、可能な限り広いスペースを確保します。安全な環境を用意できる場合は、暖かい季節に屋外飼育スペースを利用する方法もあります。
広さに余裕があるほど、暖かい場所と涼しい場所、隠れ家などを離して配置しやすくなります。
床材
床材には、掘ることができる土系の素材などを利用します。
自然に近い床材には、リクガメが地面を掘ったり潜ったりできる利点があります。床材全体を常に湿らせる必要はなく、蒸れた状態が続かないようにします。
特に幼体では乾燥しすぎにも注意し、隠れ家の一部を軽く湿らせるなどして調整します。
大きなウッドチップや砂だけを使用すると、餌と一緒に飲み込んでしまうことがあります。餌は床材の上へ直接置かず、皿や平らな石などの上で与えるとよいでしょう。
バスキングライト
ヘルマンリクガメは自分で体温を作り出すことができません。
そのため、ケージの一部に強く暖められる場所を作ります。
目安は次のようになります。
- バスキングスポット:約35℃
- ケージの涼しい側:約20〜25℃
- 夜間:約18〜20℃
大切なのは、ケージ全体を同じ温度にしないことです。
暖かい場所から涼しい場所まで温度差を作ることで、リクガメ自身が好きな場所へ移動しながら体温を調節できます。
以前は「春は50W、冬は100W」といった保温球の選び方もよく紹介されていました。
しかし、必要なW数は室温、ケージの大きさ、ライトとの距離によって変わります。
W数だけで決めず、実際のバスキングスポットとケージ内の温度を測りながら調節しましょう。
紫外線ライト
屋内飼育ではUVBを照射できる紫外線ライトも必要です。
紫外線は体内でビタミンDを作るために使われ、カルシウムを正常に利用するうえで重要な役割があります。
以前は「UVB5.0」「UVB10.0」といった製品の数字だけで選ばれることも多くありました。
しかし、実際にカメが浴びる紫外線の強さは、ライトの種類だけでなく、設置する高さや距離、反射板、使用期間などでも変化します。
そのため、使用する製品の推奨距離を確認し、バスキングする場所まで適切にUVBが届くように設置します。
紫外線ライトは点灯していてもUVBの出力が徐々に低下するため、メーカーが指定する時期に交換することも必要です。
屋外で安全に日光浴できる環境があれば、自然の太陽光を利用することもできます。
ただし、窓ガラス越しの日光では必要なUVBの多くが遮られてしまいます。
水入れと隠れ家
ヘルマンリクガメにも水は必要です。
いつでも飲めるように、新鮮な水を入れた浅い容器を置いておきます。
カメが中に入っても簡単に出られる、ひっくり返りにくい容器が向いています。
水は汚れやすいため、毎日確認して交換しましょう。
また、ケージには体がすっぽり入る隠れ家も用意します。
暖かい側と涼しい側の両方に隠れる場所があると、自分で温度を選びながら休むことができます。
ヘルマンリクガメの湿度
ヘルマンリクガメは地中海周辺に生息するため、「乾燥させて飼うカメ」と紹介されることがあります。
しかし、常にカラカラの状態が適しているわけではありません。
野生では草木の下や土のくぼみなども利用しており、場所によって温度や湿度が異なります。
成体では通気性を確保しながら極端な多湿を避けます。一方、幼体では乾燥しすぎないように注意し、適度に湿った床材や湿度のある隠れ家を利用することがあります。
特に日本の夏は高温多湿になるため、「湿度を上げればよい」と単純に考えるのも危険です。
蒸れた状態を作らず、風通しのよい環境を保つことが重要です。
ヘルマンリクガメの餌
ヘルマンリクガメは植物を食べるリクガメです。
飼育下では、繊維質が多く、カルシウムを含むさまざまな葉や野草を中心に与えます。
利用できる餌には次のようなものがあります。
- タンポポ
- オオバコ
- クローバー
- ハコベ
- 小松菜
- 大根の葉
- カブの葉
- チコリ類
- 食用にできる花や葉
野草を利用する場合は、種類を確実に確認し、除草剤や農薬が使用されていない場所から採取します。
スーパーで購入できる葉野菜も利用できますが、一種類だけを大量に与えるのではなく、複数の植物を組み合わせることが大切です。
果物は必要?
リンゴやバナナなどの果物を好んで食べる個体もいます。
しかし、ヘルマンリクガメの主食として果物を与える必要はありません。
野生で食べている植物と比べると果物は糖分が多いため、基本的には与えないか、与えるとしてもごく少量にします。
以前の飼育情報では「果物を食べると糖尿病になる」と説明されることもありましたが、そこまで単純に結びつけることはできません。
果物を控える理由は、ヘルマンリクガメ本来の食生活とは栄養組成が大きく異なるためです。
人工飼料は与えてもいい?
市販されているリクガメ用フードもあります。
人工飼料を食べたからといって、それだけで甲羅が変形するわけではありません。
一方で、人工飼料だけに頼った食生活にする必要もありません。
基本はさまざまな野草や葉を中心とし、使用する場合は製品の栄養成分を確認しながら補助的に利用するとよいでしょう。
また、犬や猫の餌など動物性タンパク質を多く含む餌は与えません。
カルシウムも重要
甲羅や骨を作るためにはカルシウムも必要です。
食事内容に応じて爬虫類用のカルシウム剤を餌に添加したり、カトルボーンを置いたりする方法があります。
ただし、カルシウムだけを与えても十分ではありません。
適切なUVB、温度、餌を組み合わせて飼育することが重要です。
ヘルマンリクガメは冬眠する?
野生のヘルマンリクガメは、気温が下がる冬になると活動を低下させ、冬眠に近い状態で過ごします。
そのため、健康な個体では飼育下でも冬眠させることがあります。
ただし、「冬になったらヒーターを切ればよい」というものではありません。
健康状態や体重を確認し、冬眠前には消化管を空にする期間を設け、冬眠中も温度や体重を管理する必要があります。
体調が悪い個体や十分な体力がない個体は冬眠させません。
冬眠させずに冬を越させる場合は、冬でもバスキングライトやUVBを使用し、活動できる温度を維持します。
冬眠には失敗した場合のリスクもあるため、初めて行う場合はリクガメを診察できる動物病院などに相談した方がよいでしょう。
ヘルマンリクガメの寿命
ヘルマンリクガメは非常に長生きする動物です。
飼育環境にもよりますが、50年以上生きることがあり、さらに長寿になる個体もいます。
犬や猫よりもはるかに長く付き合う可能性があるため、飼育を始める前に将来の生活環境まで考えておく必要があります。
小さなベビーを購入しても、その後何十年にもわたって飼育する可能性がある動物です。
ヘルマンリクガメの値段
日本では特にヒガシヘルマンリクガメが多く流通しています。
ヒガシヘルマンでは1万円台から数万円程度で販売される個体が見られます。
ニシヘルマンはヒガシヘルマンより流通量が少なく、産地や血統によって数万円から10万円を超えることもあります。
価格は個体の大きさ、性別、産地、繁殖個体の系統などによって大きく変わるため、あくまで目安です。
ヘルマンリクガメの病気
丈夫といわれるヘルマンリクガメでも、飼育環境が合っていなければ体調を崩します。
特に注意したいのが、温度やUVB、カルシウムなどが関係する骨や甲羅の異常です。
そのほかにも、呼吸器の病気、寄生虫、脱水、消化管への異物の詰まりなどが起こることがあります。
次のような変化が見られる場合は注意が必要です。
- 鼻水や泡が出ている
- 口を開けて呼吸している
- 目が腫れている
- 甲羅が異常に柔らかい
- 長期間餌を食べない
- 急激に体重が減った
- 元気がなく動かない
リクガメは体調不良を外から判断しにくい動物です。
普段から体重や食欲、排泄の状態を確認しておくと、変化に気付きやすくなります。
異常が続く場合は、爬虫類を診察できる動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
ヘルマンリクガメは小型で丈夫なリクガメですが、適切な設備を用意せずに飼える動物ではありません。
- ヒガシヘルマンとニシヘルマンの2亜種が認められている
- 成体にはできるだけ広い飼育スペースを用意する
- バスキングスポットは35℃前後を目安にする
- 屋内ではUVBライトが必要
- 餌は野草や葉野菜など繊維質の多い植物を中心にする
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
- 50年以上生きる可能性がある
- 冬眠させる場合は健康状態や温度を適切に管理する
ヘルマンリクガメは、環境を整えれば長期間飼育できるリクガメです。
小さな体ですが非常に長生きするため、飼育スペースや設備だけでなく、長期的に世話を続けられるかも考えてから迎えることが大切です。

