あなたは、ヤツガシラという鳥を知っていますか。
ヤツガシラはサイチョウ目ヤツガシラ科に分類される鳥の一種で、ニワトリのとさかのような形をした冠羽が特徴的な鳥です。日本ではめったに見られない鳥で人気も高く、珍鳥扱いされることもあります。ここでは、このヤツガシラについて、生態等を解説していきます。
ちなみにヤツガシラという野菜もありますが、これはサトイモの一種で、ここで紹介する鳥のヤツガシラとは関係はありません。
ヤツガシラとは
分類 | サイチョウ目ヤツガシラ科 |
学名 | Upupa epops |
全長 | 25~32cmほど |
体重 | 45~90gほど |
生息域 | ユーラシア大陸やアフリカなど |
全長は25~32cm程度で、我々の周りにいる鳩(カワラバト、30cm強)と同じぐらいのサイズです(あるいは少し小さいぐらいかもしれません)。冒頭でも述べましたが、最大の特徴は頭の上についている大きな冠羽です。この冠羽は閉じているときは尖った感じになっていますが、開くと綺麗な扇形になります。体色は薄い茶色で、翼や尾は濃い茶色と白色のツートンカラーになっています。
冠羽を開くのは驚いたときや警戒した時に加え、着地した瞬間にも冠羽を開きます。冠羽を開く頻度はその個体の性格によって差があるようです。
また細長い嘴が特徴的で、この嘴を用いて地中の餌を探るのもヤツガシラの特徴としてあげられます。
ヤツガシラの生息域
ヤツガシラはユーラシア大陸やアフリカなどに広く生息している鳥です。中緯度地域には、冬に高緯度地域へ渡ります。もともと高緯度地域に居る個体の場合、基本的には1年中そこに留まります。
日本は本来の生息地域には含まれていないようですが、一部少数とはいえ日本にも旅鳥などとしてやってくる個体がいます。そのため基本的に見る機会は少ない鳥ですが、一応日本の広い範囲で見かけることはできる鳥で、各地で目撃例があるようです。なので運が良ければ見れる方もいるかもしれません。
3月前後に目撃されることが多く、少し前には、群馬県の館林で目撃されたことが話題になりました。
また、秋田県や長野県、広島県では繁殖の記録も残っているようです。
名前について
「ヤツガシラ」という名前は、頭にある冠羽が8つに分かれているように見えることに由来します。ちなみにヤツガシラは漢字で「載勝」または「八頭」と表記します。
ヤツガシラ科の鳥のことを英語で「Hoopoe」といいますが、これはヤツガシラの鳴き声「ポポポ..」から名づけられました。
ヤツガシラの生態
ヤツガシラの食べ物
ヤツガシラは主に昆虫やミミズなどを食べて暮らしていますが、彼らは地面の下に嘴を突き刺して、地面の下に居る餌を採取します。時折カエルなどの両生類や植物の種や実などを食すこともあります。
ヤツガシラは日中のほとんどの時間を地面の上で過ごし、時々停止して地面の中を探り、食べ物を探します。餌のサイズは主に2~3cmぐらいのものを好み、狩りは1匹で行います。獲物を地面や石に叩きつけて殺し、消化できない部分を取り除いてから食べることもあります。
ヤツガシラは人間が害虫とみなす昆虫を食べてくれるため、多くの国では益鳥としてあつかわれ保護されています。
ヤツガシラの繁殖
ヤツガシラは繁殖期になるとオスメスでつがいを作ります。オスは縄張りを持ち、鳴き声で自身の縄張りをアピールします。ライバル同士で争いに発展することもあり、そうなるとくちばしで突き合うなどしてお互い激しく争うこともあります。
ヤツガシラは樹洞などの場所に巣を作ります。5~8個の卵を産み、抱卵はメスが行います。抱卵期間は15~18日ほどとされていて、その間はオスが狩りをしてメスにも餌を与えます。生まれた子供は親の世話を受けたのち、生まれて1か月以内に巣立つ準備ができます。
ヤツガシラの鳴き声
ヤツガシラの鳴き声は厳密にいうと多数あるようですが、その中でも典型的なものは「ポポポ、ポポポ、..」といった鳴き声です。この鳴き声は先ほども述べた通り、英名「Hoopoe」の由来になっています。
オスは繁殖期になると、このような鳴き声で鳴くようです。以下の動画で鳴き声を聞いてみてください。
ヤツガシラの寿命
野生下でのヤツガシラの寿命はおよそ10年ほどとされています。
昭和天皇の逸話
ヤツガシラに関する昭和天皇のエピソードとして有名なものがあります。それは、天皇陛下が侍従に双眼鏡を持ってくるよう命じたところ、侍従が「どうしてサトイモを見るのに双眼鏡がいるのか」と聞き返し、陛下は笑いながら「鳥のヤツガシラだよ」と答えたというものです。生物学研究にも力を注いだ、昭和天皇らしいエピソードです。
生息数は?
ヤツガシラはLC(Least concern)としてIUCNのレッドリストに記載されています。現状個体数が少ないわけではなく、絶滅の心配がなされているわけではありませんが、生息地の減少などから個体数も減少傾向にあるようです。
最後のまとめ
最後に内容を簡単にまとめておきます。
- ヤツガシラは基本的に日本に住んでいる鳥ではないが、一部旅鳥としてやってくることがある
- 冠羽が特徴的で、この冠羽は興奮した時などに開くことがある
- とがった嘴をもち、この嘴で地面の中の餌を採取する
- ポポポ、などと鳴き、英名「hoopoe」は、この鳴き声からきている