南米アンデスの高原では、長い首と大きな耳を持つリャマの姿を見ることがあります。山道で荷物を運ぶ姿や、色とりどりの飾りを付けた姿でも知られる、南米を代表する家畜の一つです。
リャマは野生の動物をそのまま飼っているわけではありません。数千年前からアンデスの人々によって家畜化され、荷物の運搬をはじめ、毛や肉などさまざまな形で利用されてきました。
一方で、柔らかな足裏、高地で草を食べるための口、仲間どうしで使う鳴き声や「つばを吐く」行動など、ラクダの仲間らしい特徴も持っています。ここでは、リャマの体の特徴からアルパカとの違い、食べ物、繁殖、人との長い関わりまでを紹介します。
リャマは南米に暮らすラクダの仲間
リャマの学名は Lama glama です。偶蹄目ラクダ科に分類されます。
ラクダ科には、砂漠で知られるヒトコブラクダやフタコブラクダのほか、南米に暮らすグアナコ、ビクーニャ、アルパカなどが含まれます。
リャマにはラクダのようなコブはありません。長い首と脚、小さめの頭、先端のとがった大きな耳を持っています。
成獣は肩までの高さが1メートルを超え、頭の高さは1.5メートル以上になることがあります。体重も100キログラムを大きく超えるため、南米のラクダ類では大型です。
毛色は白、黒、茶色、灰色などさまざまで、一頭の体に複数の色が入ることもあります。人によって長く飼育されてきたため、見た目にはかなり大きな個体差があります。
野生のリャマはいない
現在のリャマは家畜です。
その祖先になったと考えられているのが、現在も南米に野生で暮らすグアナコです。遺伝子を調べた研究でも、リャマはグアナコの系統から生まれたことが強く支持されています。
家畜化が始まった時期には幅がありますが、少なくとも数千年前にはアンデスの人々がリャマを飼っていました。
ペルーやボリビアを中心としたアンデスでは、急な山道を通って物を運ぶ必要があります。そこで大きな役割を果たしたのがリャマでした。
車も鉄道もない時代から、荷物を背負って山道を歩く運搬動物として利用されてきたのです。
肉や毛、皮も利用され、乾燥させた糞は燃料として使われることもありました。インカ帝国が成立するより前から、南米の高地に暮らす人々とリャマは深く結びついていました。
アルパカとは何が違う?
リャマとよく似た動物がアルパカです。
どちらも南米原産の家畜で、長い首と柔らかな毛を持つため、写真だけでは見分けにくいことがあります。大きな違いは体格です。
一般にリャマのほうが大きく、脚や顔も長めです。耳も長く、内側へ曲がった形が目立ちます。一方、アルパカはリャマより小柄で、耳も短めです。
また、大きさだけでなく人が利用してきた目的にも違いがあります。リャマは特に荷物を運ぶ動物として発達してきました。一方、アルパカは細く柔らかな毛を得る家畜として重視されてきました。
もちろんリャマの毛も利用されます。しかしアルパカと比べると、リャマの毛は一般に太く、個体による違いも大きくなります。
また、現在の研究ではアルパカにはビクーニャの系統が強く関わっていると考えられています。見た目は似ていても、家畜化の歴史はまったく同じではありません。
高地を歩く柔らかな足
リャマの足先を見ると、ウマやウシとはかなり違っています。
2本の指があり、その下には柔らかな肉球のような部分があります。硬いひづめだけで地面を踏む動物ではありません。
この足は、岩や乾いた土の多いアンデスを歩くのに役立ちます。また、ウシやウマの硬いひづめと比べ、地面を強く削りにくいという特徴もあります。
リャマが暮らしてきたアンデス高地は、空気が薄く、乾燥し、昼と夜の気温差も大きな場所です。
厚い毛は寒さから体を守ります。さらに、南米のラクダ類は高地の低酸素環境で生活できる体の特徴を備えています。
こうした体を持つリャマは、標高の高い土地で長い距離を歩きながら荷物を運ぶことができます。
草や低木を食べる
リャマは植物食です。
主にイネ科の草や低木などを食べます。乾燥した高地では植物が豊富とは限らないため、さまざまな植物を利用します。
上唇は左右に分かれていて、それぞれを動かすことができます。これを使って植物を選び、口へ取り込みます。
リャマは食べた植物を一度飲み込んだあと、口へ戻して再び噛むことがあります。ウシの反すうとよく似ています。
ただし、リャマを含むラクダ科の胃はウシやヒツジとは構造が異なり、3つの区画に分かれています。植物から効率よく栄養を得るため、胃の中の微生物の働きも利用しています。
乾燥した土地で暮らしてきたため、水分を効率よく利用できることも特徴です。
群れで暮らし、声でもやり取りする
リャマは仲間と関わりながら暮らす社会性のある動物です。
体の向きや耳の位置などを使って相手へ意思を伝えます。また、「ハミング」と表現される低い声を出すこともあります。
母親と子どもが声を交わしたり、周囲に危険があると警戒する声を出したりします。
複数のリャマを飼育すると、決まった場所に糞をすることがあります。同じ群れの個体が共同で利用するため、一か所に糞が集まることも珍しくありません。
こうした習性は飼育時の管理にも利用されています。
リャマはなぜつばを吐く?
リャマと聞くと、「つばを吐く動物」というイメージを持つ人もいるでしょう。
実際にリャマは、相手に向かって口の中のものを吐き出すことがあります。ただし、いつでも人間へつばを吐いているわけではありません。
つばを吐く行動は、仲間どうしの順位争いや食べ物をめぐる争いなどで見られます。相手へ「近づくな」と伝える方法の一つです。
強く興奮した場合には、唾液だけでなく胃の内容物が混じることもあります。
人間に対しても、強いストレスを感じたり、不快な扱いを受けたりすると吐くことがあります。一方、人に慣れ、適切に扱われている個体が理由もなく常につばを吐くわけではありません。また、耳を後方へ倒すなど吐く前に不快感を示すこともあります。
約11か月かけて1頭の子を産む
リャマの妊娠期間はおよそ11か月です。
通常、一度に生まれる子どもは1頭です。リャマやアルパカの子どもは「クリア(cria)」と呼ばれます。
生まれた子は比較的早く立ち上がることができます。野外に近い環境では、いつまでも地面に横たわっていると危険なため、早く歩けることは重要です。
子どもは母乳を飲みながら成長し、数か月すると草などを多く食べるようになります。
リャマのメスには、人間のような一定周期の排卵がありません。交尾による刺激を受けて排卵する「交尾排卵」と呼ばれる仕組みを持っています。
この特徴はアルパカなど、ほかの南米ラクダ類にも見られます。
羊を守るために使われることもある
現在のリャマは荷物を運ぶだけではありません。北米などでは、ヒツジやヤギの群れを守るためにリャマを一緒に飼育する例があります。
リャマは周囲への警戒心を持ち、イヌ科の動物などが近づくと注意を向けます。相手に接近したり、蹴ったりして追い払おうとする場合もあります。
この性質を利用したのが「ガードラマ」です。
ただし、どのリャマでも同じように家畜を守るわけではありません。個体の性格や飼育環境によって行動は変わります。
現在ではほかにも、観光牧場や動物とのふれあい、トレッキングなど、さまざまな場面でリャマが飼育されています。
まとめ
- リャマは南米アンデスで家畜化されたラクダ科の動物です。
- 野生のリャマはおらず、野生のグアナコを祖先として家畜化されたと考えられています。
- アルパカより大型で、古くから荷物を運ぶ動物として利用されてきました。
- 2本の指と柔らかな足裏を持ち、岩や土の多い高地を歩くのに適しています。
- 草や低木を食べ、胃の中で植物を発酵させて栄養を得ます。
- 仲間どうしの争いなどでは、相手へつばや胃の内容物を吐きかけることがあります。
- 妊娠期間は約11か月で、通常は1頭の子どもを産みます。
リャマは、単に「つばを吐く変わった動物」ではありません。アンデスの高地で荷物を運び、毛や肉を提供し、人々の暮らしを長く支えてきた家畜です。柔らかな足や植物を利用する消化の仕組みなど、その体にもアンデスで暮らしてきた特徴が表れています。
📚 主要参考文献・参照ソース
- Animal Diversity Web
Lama glama - Denver Zoo Conservation Alliance
Llama - Smithsonian Institution / National Zoo
南米ラクダ類の家畜化・系統に関する資料 - Smithsonian Folklife Festival
アンデスにおけるリャマ・アルパカ利用に関する資料

