パンケーキリクガメとは? 名前の通り薄く平たい甲羅を持つリクガメ
パンケーキリクガメは、名前の通りパンケーキのように薄く平たい甲羅を持つリクガメです。
多くのリクガメは丸く盛り上がった硬い甲羅で身を守りますが、パンケーキリクガメの甲羅は薄く、ある程度の柔軟性があります。危険を感じると岩の狭い隙間へ逃げ込み、外敵から身を守ります。
小型ながら動きは素早く、岩場を登ることも得意です。こうした特徴は、東アフリカの岩山で暮らす生活と深く結びついています。
ここでは、パンケーキリクガメの特徴や生息地から、ケージ、餌、温度、湿度、寿命などの飼育方法まで紹介します。
パンケーキリクガメとは
パンケーキリクガメの学名は Malacochersus tornieri です。
リクガメ科に属し、パンケーキリクガメ属には現在この1種だけが知られています。
野生では東アフリカの、
- ケニア
- タンザニア
- ザンビア北部
に分布しています。
広い範囲に均等に暮らしているわけではなく、乾燥したサバンナや低木地に点在する岩山や岩の露出した場所を利用します。
こうした岩山は「コピエ」と呼ばれ、パンケーキリクガメは岩の割れ目や、重なった岩の間にできた狭い空間を隠れ場所にしています。
大きさは最大18cmほど
パンケーキリクガメは小型のリクガメです。
最大甲長はオスで約17cm、メスで約17.8cmとされ、一般にメスの方がやや大きくなります。
一方、成体のオスはメスよりも尾が長く太くなります。
体重も多くの個体で500gを大きく超えることはなく、薄い甲羅と軽い体を生かして岩場を素早く移動します。
なぜ甲羅が平たくて柔らかい?
パンケーキリクガメの甲羅は、ほかの多くのリクガメほど骨が厚く発達していません。
甲羅を作る骨の間にも隙間が残っているため、成体になっても甲羅にはある程度の柔軟性があります。
この構造によって、体を狭い岩の割れ目へ滑り込ませることができます。
危険を感じると甲羅の中へ閉じこもるのではなく、素早く岩の隙間へ逃げ込み、脚を使って体を固定します。
そのため、丸く硬い甲羅を持つリクガメとはかなり違った方法で身を守っています。
岩場を登るのが得意
パンケーキリクガメは、リクガメの中では非常に身軽です。
細長い脚を使って岩場を登り、急な場所でも移動します。飼育下でもシェルターや岩の上へ登ることがあるため、意外なところから脱走することがあります。
野生では一日の多くを岩の隙間で過ごし、気温が適した時間帯になると外へ出て日光浴や食事を行います。
そのため飼育環境でも、広い床面だけでなく、登れる場所と安心して隠れられる狭い空間を用意することが大切です。
パンケーキリクガメの飼育環境
ケージは広めに用意する
パンケーキリクガメは小型ですが、45〜60cm程度の水槽を成体の終生飼育に使うのは狭すぎます。
よく歩くだけでなく、暖かい場所と涼しい場所を移動して体温を調節するため、十分な床面積が必要です。
成体1匹では、幅140×奥行70cm前後の床面積をひとつの目安にし、可能であればさらに広い環境を用意します。
15cm未満の小さな個体では、幅120×奥行60cm程度から飼育する方法もあります。
また、パンケーキリクガメはよく登ります。岩やシェルターを足場にして外へ出ないよう、ケージの高さや囲いにも注意します。
岩の隙間を再現した隠れ場所を作る
パンケーキリクガメの飼育では、隠れ場所が欠かせません。
野生では体がぎりぎり入るような岩の隙間を好んで利用します。
飼育下でも、平たい石やコルクバーク、低いシェルターなどを使い、体を収められる狭い空間を作ります。
暖かい側と涼しい側の両方に隠れ場所があると、カメが体温を調節しながら休む場所を選べます。
石を積んで岩場を作る場合は、崩れないよう必ず固定します。パンケーキリクガメが下へ潜り込んでも、石が落ちたり挟まったりしない構造にします。
床材
床材には、水はけのよい土を中心としたものを利用できます。
土と砂などを混ぜ、適度に締まった地面を作る方法もあります。
パンケーキリクガメは野生で主に岩の割れ目を隠れ場所としているため、深い床材へ潜らせることよりも、安定した地面と岩の隙間を用意することを優先します。
フンや食べ残しはこまめに取り除き、汚れた部分の床材を交換します。
温度には差をつける
飼育ケース全体を同じ温度にするのではなく、暖かい場所と涼しい場所を作ります。
目安としては、
- バスキングスポット:38〜42℃前後
- 涼しい側:24〜30℃前後
- 夜間:20℃以上
となるようにします。
バスキングスポットとは、ライトの下で体を温められる場所です。
一方、反対側には温度の低い場所を残し、暑くなったときには自分で移動できるようにします。
温度はライトのワット数だけで決めず、実際に温度計で測って調整します。
UVBライトを用意する
室内で飼育する場合は、UVBを照射できるライトも必要です。
UVBは、体内でのビタミンD3の合成やカルシウムの利用に関係しています。
ただし、「5.0」「10.0」など製品に表示された数字だけで適否を判断することはできません。
同じライトでも、カメまでの距離や反射板、ケージの金網などによって実際に届く紫外線量が変わります。
製品ごとの推奨距離を確認し、バスキング場所へ十分なUVBが届くように設置します。同時に、隠れ場所など紫外線から離れられる場所も残します。
湿度は乾燥一辺倒にしない
パンケーキリクガメは乾燥したサバンナに暮らします。
そのため、ケージ全体が常にじめじめしていたり、空気がこもったりする環境には向きません。
一方、野生では多くの時間を岩の狭い隙間で過ごします。こうした隙間の中は、外の乾いた空気より湿度が高くなることがあります。
飼育下でも全体の通気性を確保しながら、涼しい側に少し湿り気のある隠れ場所を用意すると、カメ自身が環境を選べます。
特に幼体では極端な乾燥を避けます。
「乾燥地に暮らすリクガメだから、できるだけ乾燥させればよい」という管理にはしない方がよいでしょう。
水はいつでも飲めるようにする
新鮮な水は常に用意します。
水入れには、カメが自分で簡単に出入りでき、ひっくり返りにくい浅い容器を使います。
パンケーキリクガメは野生では食べ物から多くの水分を得ていますが、飼育下で飲み水を与えなくてよいという意味ではありません。
水は毎日確認し、汚れていたら交換します。
餌は草や葉を中心にする
パンケーキリクガメは植物を中心に食べます。
野生では乾いた草やさまざまな植物、多肉植物などを利用します。
飼育下では、繊維質の多い草や葉を中心に与えます。
餌として利用できるものには、
- イネ科の牧草
- タンポポ
- オオバコ
- 桑の葉
- ハイビスカスの葉や花
- クローバー
- チコリ
- エンダイブ
などがあります。
市販のリクガメ用フードを補助的に利用することもできます。
同じ野菜だけを大量に与えるのではなく、利用できる植物をいくつか組み合わせます。
果物は主食にしない
果物を日常的な主食として与える必要はありません。
糖分の多い果物はごく少量にとどめ、草や葉を中心にします。
豆類や肉、ドッグフードなどを通常の餌として与える必要もありません。
また、甲羅や骨の成長にはカルシウムも必要です。食事内容を整えたうえで、必要に応じて爬虫類用のカルシウム剤を利用します。
複数で飼育できる?
野生では同じ岩場に複数のパンケーキリクガメが暮らし、ひとつの岩の隙間を複数個体が利用することもあります。
ただし、飼育下であれば何匹でも一緒に飼えるわけではありません。
特に繁殖期にはオス同士で争うことがあります。
複数飼育する場合は、単独飼育よりも広いスペースを確保し、それぞれが利用できる隠れ場所や餌場を用意します。
追い回される個体や、餌を十分に食べられない個体がいる場合は分けて飼育します。
初めて飼育する場合は、単独飼育の方が個体の状態を把握しやすいでしょう。
人には慣れる?
飼育を続けていると、人が近づいても逃げなくなったり、餌を持ってくる人に反応したりする個体もいます。
ただし、犬や猫のようにスキンシップを楽しむことを目的とした動物ではありません。
頻繁に持ち上げたり、隠れている個体を無理に引っ張り出したりすることは避けます。
日常的に撫でることよりも、安心して隠れられる環境を作り、必要なときだけ扱う方がパンケーキリクガメには合っています。
繁殖は一度に1個の卵が基本
パンケーキリクガメは、一度にたくさんの卵を産むリクガメではありません。
2024年に発表されたケニアでの野外調査では、交尾は12〜4月に確認され、巣作りは4〜6月に行われました。
確認された産卵では、1回につき1個の卵が産まれています。
卵は土の中に埋められ、調査で孵化した2個では、産卵から約半年後の173日と181日で孵化しました。
一度に産む卵が少なく、野生では卵や幼体が捕食されることもあります。この繁殖の遅さは、個体数が減少したときに回復しにくい理由のひとつです。
寿命は30年以上
パンケーキリクガメは長寿の動物です。
飼育下では30年以上生きることがあり、さらに長く生きた例を紹介している動物園もあります。
寿命には個体差があるため、決まった年数まで必ず生きるわけではありません。
それでも、健康に飼育すれば数十年にわたって世話をする可能性があるリクガメです。
値段はどのくらい?
パンケーキリクガメの価格は、以前と比べて大幅に高くなっています。
2026年に確認できる国内の販売例では、1匹あたり20万〜50万円前後の個体が見られます。
サイズや性別、繁殖個体などによって価格には大きな差があります。
古い記事にある「1〜2万円程度」という価格は、現在の流通状況とは合いません。
絶滅の危機にあるパンケーキリクガメ
パンケーキリクガメは、IUCNレッドリストでCritically Endangered(CR)に分類されています。
2019年にはCITES(ワシントン条約)の附属書IIから附属書Iへ移されました。
野生個体が減少してきた主な原因には、ペット取引を目的とした採集や、生息する岩場の破壊、農地化などによる環境の変化があります。
また、パンケーキリクガメは岩の隙間という限られた環境に依存し、一度に産む卵も少ないため、減少した個体数が回復するまでには時間がかかります。
現在でも飼育されているリクガメですが、野生では非常に厳しい状況にある種類です。
まとめ
パンケーキリクガメは、東アフリカの岩場で暮らす小型のリクガメです。
- ケニア、タンザニア、ザンビア北部に分布する
- 最大甲長は約18cm
- 平たく柔軟性のある甲羅を持つ
- 危険を感じると岩の隙間へ逃げ込む
- 小型ながらよく歩き、岩場を登るのも得意
- 飼育では広い床面と岩の隙間のような隠れ場所を用意する
- バスキング場所と涼しい場所を作る
- 室内飼育ではUVBライトを使用する
- 草や野草など、繊維質の多い植物を中心に与える
- 水はいつでも飲めるようにする
- 飼育下では30年以上生きることがある
- IUCNではCR、CITESでは附属書Iに分類されている
パンケーキリクガメの薄い甲羅は、単に見た目が変わっているだけではありません。
岩の隙間へ入り込んで暮らすための体のつくりであり、飼育するときにも、広さだけでなく岩場のような隠れ場所や温度差を作ることが大切です。
📚主要参照元
- Turtle Taxonomy Working Group (2025), Turtles of the World: Annotated Checklist and Atlas of Taxonomy, Synonymy, Distribution, and Conservation Status, 10th Edition
- Mwaya, R. T. et al. (2018), “Malacochersus tornieri – Pancake Tortoise”, Chelonian Research Monographs
- Ngwava, J. M. et al. (2024), “Reproductive ecology of the critically endangered pancake tortoise (Malacochersus tornieri) in the wild”, Wildlife Biology
- ReptiFiles “Pancake Tortoise Care Sheet”
- 国内販売価格:トータス・スタイル、レプタイルズショップ アライブ

