南米の熱帯雨林には、まるで人工的に染めたような鮮やかな鳥が暮らしています。その一種がムラサキカザリドリです。
オスは全身が深い赤紫色をしており、翼を広げると鮮やかな白色が現れます。一方、メスは灰色を基調とした目立たない姿をしていて、オスとメスでは見た目が大きく異なります。
この記事では、ムラサキカザリドリの特徴や生息地、食べ物、鳴き声、繁殖などを紹介します。
赤紫色のオスと灰色のメス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | ムラサキカザリドリ |
| 学名 | Xipholena punicea |
| 英名 | Pompadour Cotinga |
| 分類 | スズメ目・カザリドリ科・ムラサキカザリドリ属 |
| 全長 | 約19~20cm |
| 体重 | 約58~76g |
| 分布 | 南アメリカ北部からアマゾン地域 |
| 生息環境 | 熱帯雨林などの樹冠部 |
| 食性 | 果実を中心とする雑食性 |
| 産卵数 | 1個の記録が知られる |
| 保全状況 | IUCNレッドリスト LC(低危険種) |
ムラサキカザリドリのオスは、頭から胸、背中、尾にかけて深い赤紫色をしています。光の当たり方によっては、ワインレッドや赤褐色にも見える独特な色です。
さらに大きな特徴となるのが翼です。止まっているときには白い部分があまり目立ちませんが、翼を広げると広い範囲が白く見えます。赤紫色の体との対比が強く、飛翔時には非常に目立ちます。
目も淡い黄色から白っぽい色をしており、暗い体色のなかでよく目立ちます。
これに対してメスは全身が灰色を基調としています。翼はやや暗く、羽の縁に白っぽい部分があります。
オスとメスがまるで別の鳥のように異なるのは、ムラサキカザリドリの大きな特徴です。
オスの紫色を作る珍しい色素

ムラサキカザリドリの赤紫色の羽は、見た目だけでなく、その色が作られる仕組みも研究されています。
鳥の青や紫色には、羽の微細な構造によって光を反射して色を作る「構造色」が関係することがあります。
ムラサキカザリドリも、かつては青い構造色と赤い色素を組み合わせることで紫色になっていると考えられていました。
ところが詳しく羽を分析した研究では、この鳥の赤紫色には構造色ではなく、複数のカロテノイド色素が関係していることが分かりました。
なかでも特徴的なのが、体内で変化して作られる特殊なカロテノイドです。
研究では複数の珍しい色素が確認され、その一つにはムラサキカザリドリの属名にちなんで「xipholenin」という名前も付けられています。
果実を多く食べる鳥ですが、食物から取り込んだ色素をそのまま羽に使っているだけではありません。体内で色素を変化させることで、あの独特な赤紫色を作り出しています。
アマゾンの森の高い場所に暮らす
ムラサキカザリドリは南アメリカに分布しています。
コロンビア東部からベネズエラ南部、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジルのアマゾン地域など広い範囲で見られます。ペルーやボリビア周辺にも分布しています。
主な生活場所は熱帯雨林の高い部分です。
森林では樹木の枝や葉が広がる「樹冠」と呼ばれる場所を利用することが多く、地上近くで見かける機会はあまりありません。
森林の縁や川沿いなどに姿を現すこともあり、実のなった木の周囲で観察されることがあります。
ペルー北部では、栄養分の少ない白い砂の土壌に成立する特殊な森林でも確認されています。
森の高い場所で生活するうえ、比較的静かな鳥でもあるため、鮮やかなオスであっても深い森林では簡単に見つかるとは限りません。
果実を食べて暮らす
ムラサキカザリドリの食事の中心となるのは果実です。
イチジクの仲間やヤシ類など、森林のさまざまな果実を利用します。枝に止まった状態から実を取るだけでなく、飛びながら果実を取ることもあります。
カザリドリ科には果実を主食とする種類が多く、ムラサキカザリドリもその一つです。
果実を丸ごと飲み込み、果肉を消化したあとに種子を別の場所へ運ぶことで、森林植物の種子を移動させることにもつながります。
果実だけでなく、昆虫などの動物性の食物を利用することもあります。ただし、食生活の中心は果実です。
食物となる果実の量は季節や場所によって変わるため、実のなっている木を探しながら森林内を移動します。
白い翼を見せながら飛ぶオスの求愛
ムラサキカザリドリの繁殖行動で特に目を引くのが、オスのディスプレイです。
複数のオスが近くに集まり、木から木へ飛び移ったり、互いを追いかけたりする行動が観察されています。
このときオスが翼を広げると、普段は隠れている大きな白い部分が現れます。
赤紫色の体と真っ白な翼の組み合わせは非常に目立ちます。止まっているときと飛んでいるときで姿が大きく変わること自体が、求愛時の視覚的なアピールになっています。
飛翔中には、翼から「ざわっ」とした音が生じることも確認されています。
オス同士が追いかけ合う行動だけでなく、一羽のオスが木々の間を飛びながら翼を目立たせるディスプレイも観察されています。
鮮やかな羽そのものだけでなく、「翼を開いた瞬間に白色を見せる」という動きまで利用した求愛を行う鳥です。
「プッ」と聞こえる短い鳴き声
これほど派手な外見をしていますが、ムラサキカザリドリは大きな歌声で知られる鳥ではありません。
代表的な声は、短く低い、
「プッ」
「ポッ」
といった音に聞こえます。
英語圏の研究では「PURP」と表現されたこともあり、一度だけ鳴くこともあれば、数秒ほど間隔を空けながら何度も繰り返すこともあります。
一方、求愛中のオスが出す音のなかには、声ではなく翼の動きによって生じるものがあります。
そのためムラサキカザリドリのコミュニケーションでは、鳴き声だけでなく、鮮やかな羽の色や飛び方、翼から出る音も重要な要素になっています。
子育てをするのはメス
ムラサキカザリドリは森の高い場所で繁殖するため、野生での巣や子育てについては観察例が多くありません。
ブラジルで報告された巣では、細い枝などを組み合わせた浅い巣が木の枝に作られていました。
確認された巣には1個の卵があり、抱卵や雛の世話を行っていたのはメスでした。
孵化後、メスは果実を雛に運びます。
また、雛が排泄したものを親が取り除く行動も確認されています。巣を清潔に保ち、外敵に巣の存在を気づかれにくくすることにもつながる行動です。
オスは派手な羽とディスプレイによってメスにアピールしますが、巣作りや子育てには参加しないと考えられています。
灰色で目立ちにくいメスの姿は、巣で卵や雛を守る際には、鮮やかなオスより周囲に溶け込みやすい色でもあります。
アマゾンの森林に広く分布する鳥
ムラサキカザリドリは現在、IUCNレッドリストでLC(低危険種)に分類されています。
南米北部からアマゾン地域にかけて広い分布を持ち、現時点では絶滅の危険が特に高い種とはされていません。
一方、生息地の多くは熱帯林です。
アマゾンでは森林伐採や土地利用の変化が続いており、森林に依存して暮らすムラサキカザリドリも、生息環境の変化とは無関係ではありません。
さらに、樹冠という観察しにくい場所で生活するため、繁殖や移動など、現在も詳しく分かっていない部分が残っています。
鮮やかな姿でよく知られている一方、野生での暮らしにかんしては、まだ調べられていないことが多い鳥でもあります。
まとめ
ムラサキカザリドリは、南アメリカの熱帯雨林に暮らすカザリドリ科の鳥です。
- オスは深い赤紫色で、翼を開くと大きな白い部分が現れる
- メスはオスとは大きく異なる灰色の姿をしている
- オスの羽色には特殊なカロテノイド色素が関係している
- 主に森林の樹冠で暮らし、果実を中心に食べる
- オスは白い翼を見せながら飛び回る求愛行動を行う
- 短い鳴き声のほか、翼の動きによって音を出す
- 巣作りや抱卵、雛の世話はメスが行う
深い赤紫色の羽だけでなく、飛んだ瞬間に現れる白い翼や、オスとメスで大きく異なる姿もムラサキカザリドリならではの特徴です。
主要参照元
- Cornell Lab of Ornithology, Birds of the World「Pompadour Cotinga」
- Mandai Wildlife Reserve「Pompadour Cotinga」
- LaFountain et al. (2010), “Novel methoxy-carotenoids from the burgundy-colored plumage of the Pompadour Cotinga Xipholena punicea”
- Barreiros (2016), “First records on nests of Pompadour Cotinga in Brazil, with notes on parental behavior”

