体の長さに匹敵するほど大きな大アゴを持つギラファノコギリクワガタ。大型のオスでは110mmを超え、最大では120mm前後に達する、世界最大級のクワガタです。
見た目は非常に迫力がありますが、飼育や繁殖はそれほど難しくありません。温度を管理できれば成虫も比較的丈夫で、メスは発酵マットにもよく産卵します。幼虫も菌糸ビンと発酵マットのどちらでも育てられるため、外国産クワガタの繁殖に挑戦したい人にも飼いやすい種類です。
一方で、100mmを大きく超えるようなオスを育てるには、幼虫時代の餌や温度、容器の大きさなどが重要になります。
ここでは、ギラファノコギリクワガタの大きさや生息地から、成虫の飼育、産卵、幼虫飼育、寿命まで紹介します。
ギラファノコギリクワガタとは?
ギラファノコギリクワガタは、南アジアから東南アジアにかけて広く分布するノコギリクワガタの仲間です。
インドからインドシナ半島、マレー半島、インドネシア、フィリピンなどに分布し、地域によって大きさや体色、大アゴの形などに違いがあります。
学名は現在 Prosopocoilus girafa とする扱いがあります。一方、日本の飼育関係では従来の Prosopocoilus giraffa という表記も広く使われています。
120mm近くになる世界最大級のクワガタ
最大の特徴は、オスの非常に長い大アゴです。
大型個体では110mmを超え、フローレス島などに分布する大型のタイプでは120mm前後に達することがあります。全長には大アゴも含まれますが、それでも現生のクワガタムシでは最大級です。
マンディブラリスフタマタクワガタなども非常に大きくなりますが、全長ではギラファノコギリクワガタが世界最長クラスのクワガタとしてよく知られています。
小型のオスは大アゴが短くなる
大型のオスでは大アゴが長く伸びますが、小型のオスでは大アゴが短くなり、同じ種類でもかなり違った姿になります。
これはノコギリクワガタの仲間によく見られる特徴です。幼虫時代に十分な大きさまで成長できたオスほど、長い大アゴを持つ大型個体になりやすくなります。
そのため、ギラファノコギリクワガタの飼育では、単に羽化させるだけでなく、どこまで大型のオスを育てられるかも楽しみのひとつです。
産地によって姿が違う
ギラファノコギリクワガタは分布が広く、日本の飼育界では産地や従来の亜種名を使って区別されることがあります。
特によく知られているのが、フローレス島産の「ケイスケ」と、フィリピンのネグロス島などに分布する「ダイスケ」です。
フローレス島産のケイスケ
大型化することで人気があるのが、フローレス島などの個体群です。
飼育流通では「ケイスケ」「ケイスケイ」と呼ばれることが多く、110mmを超える大型個体も作出されています。
とにかく大きなギラファを育てたい場合には、代表的なタイプです。
ダイスケ
フィリピンのネグロス島やシブヤン島などの個体群は、飼育界で「ダイスケ」「ダイスケイ」と呼ばれています。
上翅が明るい褐色になる個体が多く、黒っぽいギラファとは少し違った印象があります。大きさだけでなく、体色や大アゴの形など、産地ごとの違いを楽しめるのもギラファノコギリクワガタの魅力です。
なお、ケイスケやダイスケなどは現在の分類では独立した亜種として扱わない場合もありますが、日本の飼育界では現在も産地や系統を示す呼び名として広く使われています。
ギラファノコギリクワガタの成虫の飼い方
成虫の基本的な飼育方法は、ほかの外国産クワガタとそれほど変わりません。
飼育には、
- 飼育ケース
- 昆虫マット
- 昆虫ゼリー
- 転倒防止用の枝や樹皮
- 温度計
などを用意します。
繁殖させず成虫だけを飼育する場合は、ケースの底へ昆虫マットを数cm敷き、昆虫ゼリーと転倒防止材を入れれば十分です。
オスは1匹ずつ飼育する
ギラファノコギリクワガタのオスは気が強く、大アゴも非常に長くなります。
オス同士を同じケースへ入れると、大アゴで相手を挟んだり持ち上げたりして激しく争うことがあります。狭いケースでは逃げ場もないため、脚が欠けるなどの事故につながる可能性があります。
基本的にオスは1匹ずつ飼育し、オスとメスも繁殖させるとき以外は別々に管理した方が安全です。
餌は昆虫ゼリー
成虫には一般的なクワガタ用の昆虫ゼリーを与えます。繁殖させるメスには、高タンパクタイプのゼリーを利用しても構いません。
大型のオスは大アゴが非常に長いため、深いゼリー容器では食べにくそうにすることがあります。その場合はゼリーを半分に切ったり、浅い皿に移したりすると食べやすくなります。
ゼリーを食べ切っていないか定期的に確認し、餌切れにならないようにします。
温度は20℃台前半を中心に管理する
ギラファノコギリクワガタは熱帯に生息する昆虫ですが、高温にし続ける必要はありません。
飼育では20℃台前半を中心に管理し、20〜25℃程度を目安にすると扱いやすくなります。
特に注意したいのが日本の夏です。30℃近い高温が長時間続く環境は避け、必要に応じてエアコンなどを利用します。
反対に冬は日本の室温では低くなりすぎることがあるため、飼育を続ける場合は温室や暖房などで加温します。
羽化直後はすぐに繁殖させない
クワガタムシは、成虫へ羽化した直後から繁殖できるわけではありません。
ギラファノコギリクワガタも羽化後しばらくは休眠し、やがて活動を始めて餌を食べるようになります。この最初に餌を食べ始めることを「後食」と呼びます。
個体差や温度にもよりますが、羽化後1〜2か月ほどで後食を始める個体が多く、さらに長く休眠する場合もあります。
繁殖させる場合は羽化日だけで判断せず、オスとメスの両方がしっかり後食し、活動が安定してからペアリングします。
ギラファノコギリクワガタの繁殖
ギラファノコギリクワガタは、大型の外国産クワガタとしては比較的繁殖させやすい種類です。
メスは発酵マットへ直接産卵することが多く、必ずしも産卵木を用意する必要はありません。温度とマットの状態を整えれば、初めて外国産クワガタを繁殖させる場合でも十分に狙えます。
ペアリング
成熟したオスとメスを同じケースへ入れて交尾させます。
ただし、ギラファのオスは大アゴが長く、メスに対して攻撃することがあります。特に大型のオスと小さなメスを組み合わせる場合は注意が必要です。
安全に繁殖させるなら、オスとメスを入れたまま長時間放置せず、様子を見ながら交尾させます。交尾を確認できたら、メスだけを産卵ケースへ移します。
野外採集メスは交尾済みの場合がある
野外採集されたメスは、すでに野外で交尾を済ませていることがあります。
その場合はオスと改めて交尾させなくても産卵する可能性があります。一方、飼育下で羽化した新成虫では未交尾なので、繁殖させるにはペアリングが必要です。
産卵セットの作り方
ギラファノコギリクワガタの産卵には、発酵の進んだクワガタ用マットを利用します。
粒子が細かく、十分に発酵したマットが使いやすいでしょう。ケースにはメスが十分に潜れる深さまでマットを入れ、下の方はある程度押し固め、表面付近は少し柔らかくしておきます。
そこへ昆虫ゼリーと転倒防止材を入れ、交尾済みのメスを投入します。
産卵木を入れてもよい
ギラファノコギリクワガタはマットだけでも産卵できますが、柔らかめの産卵木を入れても産みます。
産卵木を利用する場合は、十分に加水したものをマットへ埋めて使用します。
マットにも木にも産卵するため、「産卵木がなければ産まない」というタイプではありません。飼育を簡単にしたい場合は、発酵マットだけのセットでも十分です。
マットの水分
マットは乾燥させないようにします。
手で握ったときにまとまり、軽く触ると崩れる程度の水分が目安です。握っただけで水が染み出すほど濡らす必要はありません。
新しい発酵マットは再発酵して温度が上がることがあるため、発熱していないことを確認してからメスを入れます。
卵と幼虫の割り出し
産卵セットを組んでしばらくすると、ケースの側面から卵や幼虫が見えることがあります。
卵は柔らかく扱いにくいため、無理に早く取り出す必要はありません。幼虫になってから割り出した方が扱いやすくなります。
メスを長期間入れたままにすると、マットを掘り返す際に卵や幼虫へ影響することもあります。ある程度産卵させたらメスを取り出し、その後幼虫が確認できるまで待つ方法もあります。
取り出した幼虫は、1匹ずつ容器へ分けて飼育します。
幼虫は菌糸ビンでも発酵マットでも育てられる
ギラファノコギリクワガタの幼虫は、菌糸ビンと発酵マットのどちらでも飼育できます。
発酵マットだけでも羽化まで育てることはできますが、100mmを超えるような大型のオスを狙う場合には菌糸ビンを利用する飼育もよく行われています。
菌糸ビンで育てる
菌糸ビンを使う場合は、幼虫が小さいうちに投入し、成長に合わせて大きな容器へ交換します。
大型のオスになると幼虫もかなり大きくなるため、飼育後半では十分な容量を確保します。容器が小さすぎると餌の量が不足しやすく、蛹室を作るスペースも狭くなります。
特に大型個体を狙う場合は、終齢幼虫の容器サイズに余裕を持たせます。
発酵マットでも飼育できる
発酵マットを使う場合も、基本的には幼虫1匹ずつ容器へ入れて育てます。
クワガタ幼虫用として販売されている、十分に発酵した広葉樹系のマットを利用できます。
マットの多くが糞へ置き換わったり、劣化が目立ったりしてきたら、新しいマットへ交換します。
菌糸ビンでなければ大型化しないわけではなく、マット飼育でも十分なサイズまで育つ個体はいます。
大型個体を育てるポイント
ギラファノコギリクワガタは、幼虫を羽化させること自体は比較的難しくありません。
しかし、100mmを大きく超えるオスを育てるとなると、幼虫時代の管理が重要になります。
大型化を狙う場合は、
- 大型化しやすい産地や系統を選ぶ
- 幼虫に十分な餌を与える
- 成長に合わせて大きな容器を使う
- 菌糸やマットを劣化させすぎない
- 高温で成長を急がせすぎない
- 蛹化前は必要以上に触らない
といった点を意識します。
特に大型のオスでは、大アゴを含めると羽化後の全長が非常に長くなります。そのため蛹室にも十分な長さが必要で、成熟したオスの幼虫を小さな容器で飼い続けるのは避けた方がよいでしょう。
幼虫期間は半年〜1年以上
幼虫期間は温度や餌、性別、最終的な大きさによって変わります。
メスは比較的早く羽化し、オスは大型になるほど幼虫期間が長くなる傾向があります。
飼育下では半年ほどから1年以上が目安で、大型のオスでは1年前後かけて成長することも珍しくありません。
温度を高くすると成長は早くなりますが、必ずしも大型化に有利になるわけではありません。大きなオスを狙う場合は、20℃台前半を中心にじっくり成長させる方法がよく使われます。
蛹室を作ったら触らない
成熟した幼虫は餌を食べる量が減り、やがて容器の中に蛹室を作ります。
この段階に入ったら、菌糸ビンやマットの交換はできるだけ避けます。
大型のオスは長い大アゴを伸ばして羽化するため、蛹室もかなり大きくなります。正常な蛹室ができている場合は、そのまま羽化まで待つのが基本です。
人工蛹室へ移す方法もありますが、蛹室が壊れた場合などに利用する方法なので、問題がなければ無理に掘り出す必要はありません。
成虫の寿命
ギラファノコギリクワガタの成虫の寿命は、半年〜1年ほどが目安です。
国産ノコギリクワガタと比べると成虫期間が長く、温度を管理すれば冬でも飼育できます。ただし外国産のため、日本の冬に無加温のまま越冬させる飼い方には向きません。
長く飼育するには、高温を避け、昆虫ゼリーを切らさず、マットの乾燥にも注意します。また、オスは単独で飼育し、転倒したときにつかまれる足場も入れておきます。
ギラファノコギリクワガタの値段
ギラファノコギリクワガタは、世界最大級のクワガタとしては比較的入手しやすい種類です。
価格はサイズや産地によって大きく変わります。小型の成虫や幼虫は比較的安価ですが、100mmを超える大型個体になると価格も上がります。
さらに110mm前後の大型個体や、特定の産地・系統では高値になることもあります。
そのため、単純に「ギラファは○円」と考えるより、サイズと産地によって価格差が大きいクワガタと考えると分かりやすいでしょう。
ギラファの名前の由来
「ギラファ」という名前は、キリンを意味する言葉と同じ語源を持っています。
長く伸びた大アゴを、首の長いキリンに見立てた名前です。英語でも「Giraffe stag beetle」と呼ばれています。
大型のオスを見ると、ギラファという名前が付けられたのも納得できる姿をしています。
外国産クワガタを野外へ放さない
ギラファノコギリクワガタは、日本には自然分布していない外国産の昆虫です。
購入した個体や繁殖させた個体は野外へ放さず、最後まで飼育します。
冬になれば生き残れないだろうと考えて放すのではなく、飼育ケースの中で管理するようにしましょう。
まとめ
ギラファノコギリクワガタは、世界最大級の大きさと長い大アゴを持ちながら、比較的飼育しやすい外国産クワガタです。
- 大型のオスでは110mmを超え、最大120mm前後になる
- 南アジアから東南アジアまで広く分布する
- 産地によって大きさや体色、大アゴの形に違いがある
- 成虫は昆虫ゼリーで飼育できる
- 20〜25℃程度を目安に管理する
- オス同士は争うため単独飼育する
- 羽化後1〜2か月ほどで後食を始める個体が多い
- 産卵は発酵マットだけでも狙える
- 産卵木を併用することもできる
- 幼虫は菌糸ビンでも発酵マットでも飼育できる
- 大型個体を狙う場合は餌や温度、容器の大きさが重要になる
- 大型オスでは幼虫期間が1年前後になることもある
- 成虫の寿命は半年〜1年ほどが目安
「世界最大級」という派手な見た目に対して、飼育や繁殖は比較的取り組みやすいギラファノコギリクワガタ。普通に繁殖させるところから、110mmを超える大型個体を狙うところまで、幅広く楽しめるクワガタです。
主要参照元
- Catalogue of Life / GBIF「Prosopocoilus girafa」
- Mizunuma & Nagai(1991)“A revisional synopsis of the Prosopocoilus giraffa”
- クワガタ類の形態・分類に関する研究資料
- 国内外のギラファノコギリクワガタ飼育・繁殖記録

