キツツキというと、木を高速でたたく姿を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
キツツキという名前は木を叩く音に由来するともいわれています。
では、キツツキは何故木を叩くのでしょうか?また、あれだけ叩いても嘴を傷めないのは何故なのでしょうか?などなど、キツツキに対する疑問は尽きることがありませんね。
ここでは、そんなキツツキの疑問を暴いていきたいと思います。
その前に、まずは前触れとしてキツツキの種類を紹介していきます。
というのも、キツツキというのはあくまで「鳥のグループの名前」なんですね。勘違いしやすいポイントですので、少し掘り下げて見ていきましょう。
キツツキの種類や大きさ
キツツキと聞くと、鳥の種類の1つだと思っていた方がおおいのではないでしょうか?
といっても、実はキツツキという鳥は存在しないんですね。正確に言うと、キツツキ目キツツキ科までは存在します。
木を叩く鳥をまとめてキツツキと呼んでいる、そんな感じでとらえて頂ければよいかと思います。
アカゲラ

お腹の赤い模様が特徴的なアカゲラです。大きさは20~24cmほどです。
日本で最もよく見かけるキツツキ科の鳥は、このアカゲラですね。
北半球の広い範囲に生息しており、15の亜種が確認されています。日本では留鳥として北海道から本州、四国まで生息しています。
アオゲラ

アカゲラが世界の広範囲に生息している一方で、アオゲラは日本の固有種です。
「アオ」という名前がついていますが、色は厳密にいうと暗緑色という感じですね。
頭部の赤い模様も印象的です。
クマゲラ

日本最大のキツツキであるクマゲラです。
熊のように黒く大きな体が特徴的で、大きさは50cm前後にもなります。
学名Dryocopus martiusのmaetiusには「軍人の」という意味があります。これは、黒い毛が軍服を連想させることに由来しています。
コゲラ

名前の通り小型のキツツキで、大きさは15cmほどでスズメとほぼ同じぐらいです。
日本に生息するキツツキの中では最も小さい種類ですね。黒(灰褐色)と白のまだら模様をしており、色自体は結構地味な感じです。
日本をはじめとする東アジアに生息しています。
アリスイ

名前の通り「蟻」を食べるキツツキです。全長は18cmほどと、スズメより少し大きいぐらいです。
夏には北海道や東北といった涼しい地域で繁殖し、気温が低くなると本州の暖かい地域へ移動して冬越しします。
首を曲げて後ろを向くことから、不吉の象徴とされることもあるようです。
「ゲラ」とつくものが多いですが、これはキツツキは古語で「ケラ」というためだと考えられます。
キツツキの鳴き声
キツツキは鳴くこともあります。以下の動画は、アカゲラが鳴いているシーンの動画です。
鳴き声を上げることによって求愛行動を行ったりもします。
キツツキのドラミング
キツツキというと、何と言っても木を嘴で叩く姿が印象的ですよね。
まずは、キツツキが木を叩く姿を動画で今一度見てみましょう。
キツツキのこのような行動はドラミングと呼ばれています。
このドラミングは20回/秒とも言われる驚異的な速度で行われるんだ。自分が嘴を持った鳥だと仮定して、毎秒20回も嘴を上下させて物を叩く。とてもじゃないけど想像できないよね。
頭を打ち付けるときの力は重力の100倍とか言われているんだ。これだけの衝撃だと、眼玉が飛び出しちゃうよね。
でも、キツツキにはこういった行動を可能にするための様々なしかけが備わっています。
キツツキが高速で木を叩ける理由
キツツキと呼ばれる仲間には、上瞼と下瞼に加えてもう一枚内側にまぶたがあり、嘴を木に打ち付けるときにはこの内側の3枚目のまぶたが強く閉じてシートベルトの役割を果たしています。
また人間だったらむち打ちになりそうなスピードで首を動かしても大丈夫なようにキツツキの首は強靭な発達を遂げており、その筋肉を木に打ち付けるときには瞬時に緊張させているのです。
また、脳そのものが小さいのに加え、舌の骨が頭部の上方にまでくるりとのび、これもまたシートベルト構造をとっているのです。
この上下の構造と可動性の効果で衝撃が加わっても力を上手く受け流すことができるようになっているようです。
漢字表記の「啄木鳥」は「木を啄(ついば)む鳥」の意味で、日本では石川啄木を想像し、静かに書物に目を落とすような姿を思い浮かべるのですが、実は脳震盪を起こしそうな激しい振動の中で身を守るすべを身につけているのですね。
キツツキの食べ物

食性は動物食から動物食の強い雑食性で、主に昆虫を食しますが、鳥類のヒナ、果実などを食べる種もいます。
木の幹に垂直に止まり木の中の割れ目などにひそむ獲物を舌をのばして補食します。
キツツキは、木にとまるときは湾曲した鋭い爪に、楔形の尾で体を支えています。
だから、垂直な木に止まっても、体のバランスをしっかり保つことができます。
キツツキの生態

キツツキは「木を啄(ついば)む鳥」とされるように、多くの種では自ら木材に穴をあけたり、木に穴を掘って広げ巣を作り、その中に卵を産み雌雄交代で抱卵し、ヒナを育てます。
キツツキが木を啄む理由は木の中にいる昆虫をつついて見つけること、求愛行動や縄張りを知らしめるためのコミュニケーション行動、巣を作ることなどがあります。
さらに、木をつつくことで人間が爪を切るように嘴を程よい状態に保つこともできるらしいのです。また、この穴はキツツキが新たに巣を作るときにはリスや他の小鳥の住処としても使われるのです。
キツツキが木を叩く行為は、自分だけでなく生態系の中で生きている他の生き物の役に立つこともあるんですね。
最後に
最後に、当記事で紹介したことを簡単に纏めさせていただきます。
- キツツキには、様々な種類がいて、キツツキの古語「ケラ」が語尾につくものが多い
- キツツキが木を高速でたたくことができるのは、瞼の構造など様々な要素が重なり合っている
- キツツキが木を叩くのは餌の獲得だけでなく、様々な理由がある
キツツキの木をつつく行動の裏には、さまざまな秘密が隠されていたのですね。