これまで地球上に存在した生物の中で最大の動物であるといわれているシロナガスクジラ。鯨偶蹄目ナガスクジラ科ナガスクジラ属に属するクジラの1種です。
英語ではblue whale と呼ばれますが、日本では江戸時代から長身で海上に浮かび上がる際に白く見えることから「白長須鯨」と呼ばれてきました。
今回は、そんなシロナガスクジラについて解説していきたいと思います。
シロナガスクジラの大きさ
出典:http://oceana.org
シロナガスクジラの大きさは最大で28~30mほどになります。基本的に体重は45~136トンほどですが、極稀にもっと大きくなるものもいるようです。
これまで記録されたシロナガスクジラの体長の中で最大のものとしては、以下のようなものがあります。
- オス・・・31.7m(サウス・シェトランド諸島近辺,1926年)
- メス・・・33.6m,33.1m
これらの他にも30m以上のシロナガスクジラを捕まえたというレポートは多くあるようです。一方で30mを記録した個体の多くは、誤計測やわざと誇張されたものだと考えられています。
というか、正しいと考えられているデータのうち、28mを超えるものは稀なんですね。
そのため、30mを超える個体は殆ど居ないと考えるのが妥当のようです。
ちなみに、シロナガスクジラはメスのほうが若干大きくなります。
一方で、オスのほうが骨や筋肉が重いため、同じ大きさだとオスのほうが体重は重くなります。
出典:https://www.skyscrapercity.com
様々な動物とシロナガスクジラの大きさを比べるとこんな感じ↑になります。
大きい動物というと恐竜が思い浮かびますが、彼らと匹敵するか、それ以上の大きさになるのがシロナガスクジラなんですね。
全長でいうとシロナガスクジラと変わらないぐらい大きな恐竜はいますが、体重で比べると2~3倍になるので一目瞭然です(例えば、巨大な草食恐竜ディプロドクスの体重は10~40トンほどだといわれています。)
首や尾が長く細い恐竜と、楕円形のシロナガスクジラを比べるとサイズ感の違いは圧倒的ですね。
水中は陸上と比べると重力が小さいので、このような巨体を維持することが可能だといわれています。
シロナガスクジラがいかに大きいか、おわかりいただけるのではないでしょうか・・・?
未来の話になりますが、500万世代を迎えたシロナガスクジラはさらに大きくなっているという予想もあるようです。現段階で大きいだけでなく、今後さらに大きくなる可能性も秘めているということなんですね。
心臓の重さは・・・?
出典:http://www.bbc.com
シロナガスクジラの心臓の重さは180kgぐらいだといわれています。
心臓だけで標準的な人間の体重を大きく超えるんですね。
脳は人間より大きい
シロナガスクジラの脳は、体の大きさに比べると非常に小さく、重さは7kg弱です。
とはいっても人間の脳の重さは最大でも1500gほどですから、人間よりははるかに大きな脳を持っているんですね。
<シロナガスクジラの脳と人間の脳の比較>
出典:https://www.flickr.com
今のところ、人間の知能とシロナガスクジラのそれはくらべものにはなりませんが、科学者によっては人間以上の知能をもつだけの潜在能力があると考えている人もいます。
実際にシロナガスクジラは鳴き声でコミュニケーションをとったりする能力もあるといわれています。
シロナガスクジラの生態
シロナガスクジラの食べ物
シロナガスクジラの主食はずばり、オキアミです。他にもカイアシ類に分類される甲殻類などを食べることもあり、小魚やイカなども一緒に食べることがあります。
とはいえ、メインはあくまでオキアミです。
<オキアミ>
出典:https://ja.wikipedia.org
おとなのシロナガスクジラは、1日に4000万匹ものオキアミを食べるといわれています。
シロナガスクジラは、1日に150万キロカロリーのエネルギーを必要とするといわれています。体の大きさが違うので当たり前ですが、人間と比べるとその差は一目瞭然ですね。
昼間は深さ100mぐらいのところで狩りをすることが多く、海表で狩りをするのは夜のみになります。
オキアミを同じく主食とするミンククジラやイワシクジラなど他のクジラと餌を巡る直接的な競争関係があるといわれています。
歯はなく、鯨鬚と呼ばれる1枚70cmにも及ぶ髭板で、オキアミをこしとるようにして栄養をとります。
髭板は左右それぞれ300枚程度が上顎の下側外縁に沿ってついています。体型は流線型で、背びれが吻部から長く位置し、大きな後縁中央がV字に切れ込んだ尾ひれを持っています。
ブリーチング
シロナガスクジラは、ブリーチングと呼ばれる急角度で水面から飛び出す行為を行うことがあります。このブリーチングを行うのは、主に若い個体だけです。
頭頂部には噴気孔が二つあり、大量に取り込んだ海水を吐き出すように噴気を上げます。量・高さともに他のクジラの比ではありません。
以下の動画でシロナガスクジラのブリーチングが観察できますので、是非見てみてください。
シロナガスクジラの鳴き声
シロナガスクジラは、155~180デシベルとも言われる鳴き声でコミュニケーションを取っています。
目覚まし時計の音量は80デジベルぐらい、飛行機の爆音であっても120デジベルぐらいです。
こう見ると、シロナガスクジラの鳴き声は本当に大きいことがわかるよね。シロナガスクジラは、動物の中でもっとも大きな鳴き声をあげる動物としても知られているよ。
鳴き声の周波数は10~40Hzほどになります。
大体人間が音として聞くことができる周波数は20~2万Hzといわれていますから、シロナガスクジラは人間が聞こえない低周波の音も鳴き声として発しているということなんですね。
この鳴き声は、150kmほど先の相手にまで届くといわれています。
鳴き声を出す理由は詳しくは分かっていないのですが、ある学者が可能性のある6つの説を出しています。
- 各個体間の距離を維持・修正するため
- 種や個体を認識するため
- 求婚や情報伝達のため
- 社会的な組織の維持のため
- 餌の場所を探すため
- 地理的な情報を得るため
ちょっとわかりにくいですが、シロナガスクジラはこのような目的を実行するために鳴き声を発すると考えられているんですね。
シロナガスクジラの寿命
シロナガスクジラの寿命は80年〜120年といわれています。われわれ人間よりも長く生きることができます。
シロナガスクジラは絶滅危惧種
出典:http://oceana.org
もともとシロナガスクジラは、その大きさと高速に泳げることから、捕鯨は困難な存在でした。
ですが戦前、高速捕鯨船が実用化されるとその状況は一変します。シロナガスクジラの鯨油を求めて世界中で乱獲が相次ぎ、30万頭ほどいたシロナガスクジラは激減してしまいました。
20世紀初頭には、人類は南極にまでシロナガスクジラを捕獲しに行くようになりました。
このように人類がシロナガスクジラを求めて捕鯨をし、シロナガスクジラの個体数は激減します。そのこともあり戦前から徐々に捕獲規制の動きが進んでいました。
さらに戦後において、1960年台には全ての海においてシロナガスクジラの捕獲は禁止されました。その後、ごく一部の例外を除き、シロナガスクジラの捕獲はされていません。
その背景には、シロナガスクジラが激減したことにより、共通の餌を食するミンククジラが増殖し、ミンククジラに餌をとられてしまうことが一因であるとする報告もあります。
捕獲禁止を受けてシロナガスクジラの個体数は徐々に回復していますが、それでも個体数は1万~2万5000ほどといわれており、捕鯨が始まる前に比べるとはるかに少ない個体数となっています。
最強の哺乳類!?天敵はいる?
世界史上最も大きな哺乳類であるシロナガスクジラは、世界最強の哺乳類の1種としてかんがえられています。
しかし、
- マッコウクジラには歯があるのに対しシロナガスクジラには歯がない
- シャチは集団で狩りをするので、自分より大きな動物へ挑むこともある
などの理由で、文句なしの最強とはいえないようです。
ただ、シロナガスクジラは何と言っても巨大ですから、そうそう襲われることはないのも事実です。実際にシロナガスクジラの天敵というと、人間かシャチぐらいのものです。
さらに言うとシャチの大きさは6m前後なので、緊急時でもない限りわざわざシロナガスクジラを襲うことはないと考えられます。
そう考えると、少なくとも最強の生物の一角と考えても問題ないかもしれません。
最後に
最後に、当記事で紹介したことを簡単に纏めさせていただきます。
- シロナガスクジラの大きさは最大で30m近くになり、史上最大の動物といわれている
- 主食はオキアミで、大量に食する
- 低周波の大きな鳴き声を出す
- その大きさから、地球上で最強の生物の1種と言われることもある
史上最大の生物というと、それだけでもロマンを感じますね。一度、実物をじっくり見てみたいところです。