ゾウリムシについて解説|大きさ・構造・餌・増え方・培養

その他小さな生き物

池や水田などの水を顕微鏡で観察すると、小さな体を動かしながら泳ぐ生きものが見つかることがあります。その代表的な存在がゾウリムシです。

ゾウリムシは、たった1個の細胞だけでできた単細胞の生きものです。しかし、その細胞の中には食べ物を取り込む仕組みや余分な水を排出する仕組みがあり、自分で泳ぎ、食べ、増えることができます。

学校の理科でもよく登場するゾウリムシですが、実際にはどのくらいの大きさで、どのような体のつくりをしているのでしょうか。餌や増え方、家庭での培養についても紹介します。


ゾウリムシとは

ゾウリムシは、繊毛虫と呼ばれる単細胞の生きものの仲間です。池や沼、水田、水路などの淡水環境に生息し、主に水中の細菌などを食べて暮らしています。

細胞の表面には「繊毛」と呼ばれる非常に細かな毛がびっしりと生えています。この繊毛を波打つように動かすことで、水中を泳ぐことができます。

細長く少し湾曲した体が、履物の「草履」に似ていることがゾウリムシという名前の由来です。

ゾウリムシの大きさ

ゾウリムシの大きさは種類によって異なりますが、長さ0.1〜0.3ミリメートルほどのものがよく知られています。学校教材などでも扱われる大型の種類では、0.2〜0.3ミリメートルほどになります。

非常に小さいため、肉眼では点のように見えることがあっても、草履のような形や内部の構造までは分かりません。詳しく観察するには顕微鏡が必要です。

ゾウリムシの構造

ゾウリムシは1個の細胞だけでできていますが、その内部には生きるために必要なさまざまな構造があります。

構造主な役割
繊毛水中を泳いだり、食べ物を口の部分へ運んだりする
口溝・細胞口細菌などの食べ物を取り込む
食胞取り込んだ食べ物を細胞内で消化する
収縮胞細胞内に入った余分な水を外へ排出する
大核普段の生命活動に必要な遺伝子の働きを担う
小核接合などで遺伝情報を次の世代へ伝える役割を担う
細胞肛門消化されなかったものを細胞の外へ排出する

繊毛を使って水中を泳ぐ

ゾウリムシの表面には、多数の繊毛が並んでいます。

これらの繊毛を波が伝わるように動かすことで、水中を進みます。繊毛は移動だけでなく、水の流れを作って細菌などを口溝へ運ぶためにも使われます。

顕微鏡で生きたゾウリムシを観察すると、素早く泳いだり方向を変えたりする様子を見ることができます。

余分な水を排出する収縮胞

淡水に暮らすゾウリムシでは、周囲から細胞内へ水が入り続けます。そこで働くのが「収縮胞」です。

収縮胞は細胞内に入った余分な水を集め、一定の間隔で外へ排出します。顕微鏡で観察すると、収縮胞が膨らんだあと、収縮して小さくなる様子を見ることができます。

大核と小核という2種類の核を持つ

ゾウリムシの特徴の一つが、大核と小核という役割の異なる核を持っていることです。

大核は、成長や運動、食べ物の消化など、普段の生命活動に関わる遺伝子の働きを担っています。

一方の小核は、普段の生命活動にはあまり関与せず、遺伝情報を次の世代へ伝えるうえで重要な役割を持っています。特に、2個体が遺伝情報を交換する「接合」では、小核が中心的な役割を果たします。

ゾウリムシは何を食べる?

ゾウリムシは、主に水中にいる細菌などを食べています。

繊毛を動かして水の流れを作り、細菌などを口溝へ運びます。取り込まれた食べ物は「食胞」と呼ばれる袋状の構造に包まれ、細胞の中を移動しながら消化されます。

消化できなかったものは、最後に細胞肛門から外へ排出されます。

一方、ゾウリムシ自身もほかの生きものに食べられます。たとえば、ディディニウムという単細胞の生きものは、ゾウリムシを捕らえて食べることで知られています。

また、ゾウリムシは非常に小さいため、メダカなどの魚の稚魚に与える生き餌として利用されることもあります。

ゾウリムシはどうやって増える?

ゾウリムシには、個体数を増やす「二分裂」と、2個体の間で遺伝情報を交換する「接合」があります。

通常は2つに分裂して増える

ゾウリムシが個体数を増やす基本的な方法が「二分裂」です。

成長した1個のゾウリムシが分裂し、2個体になります。それぞれが成長すると再び分裂するため、環境がよければ短期間で数を増やすことができます。

このように、1個体から新しい個体が生まれる増え方を無性生殖と呼びます。

遺伝情報を交換する「接合」

ゾウリムシには、二分裂とは別に「接合」と呼ばれる現象があります。

接合では、対応する接合型を持つ2個体が一時的にくっつきます。その後、小核が減数分裂などを行い、そこから作られた核の一部を互いに交換します。交換された核は、それぞれの細胞内に残った核と融合します。

接合したからといって、その場でゾウリムシの数が増えるわけではありません。2個体の間で遺伝情報が交換され、新しい組み合わせが生まれることが大きな特徴です。

接合を終えた2個体はやがて離れ、その後は再び二分裂によって増えていきます。

ゾウリムシは家庭でも培養できる

ゾウリムシは比較的培養しやすく、学校での観察材料として利用されるほか、メダカなどの稚魚に与える生き餌として家庭で増やされることもあります。

培養には、もとになるゾウリムシと、ゾウリムシの餌となる細菌が増えられる環境が必要です。

ゾウリムシの培養液

ゾウリムシの培養には、さまざまな方法があります。

古くから知られているのが、わらなどの植物を水で煮出した培養液を利用する方法です。植物から溶け出した成分を利用して細菌が増え、その細菌をゾウリムシが食べます。

研究施設ではレタスを利用した培養液が使われるほか、酵母などを利用する方法もあります。

家庭でメダカなどの餌として培養する場合は、市販のゾウリムシ用培養液や培養資材を利用する方法もあります。

もとになるゾウリムシを用意する

培養液を用意するだけで、必ずゾウリムシが発生するわけではありません。確実に増やしたい場合は、もとになるゾウリムシを用意し、培養液に加えます。

ゾウリムシは観察教材や観賞魚用の生き餌として流通しており、培養用のものを入手できます。

培養するときの注意点

培養容器は、直射日光が当たり続ける場所や、極端に暑くなったり寒くなったりする場所を避けて置きます。

また、容器を完全に密閉した状態で長期間置くのは避け、空気の出入りができるようにします。

餌になる材料を一度に大量に入れると、培養液の状態が悪化してゾウリムシが減ってしまうことがあります。少量から始め、増え方を見ながら管理すると扱いやすくなります。

長く培養する場合は、すべてを一つの容器に入れず、複数の容器に分けておく方法もあります。一つの培養がうまくいかなくなっても、残った容器から再び増やすことができます。

培養したゾウリムシや培養液は、そのまま池や川などの自然環境へ放さないようにします。

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まとめ

  • ゾウリムシは、繊毛を持つ単細胞の生きものです。
  • 大きさは種類によって異なり、長さ0.1〜0.3ミリメートルほどのものがよく知られています。
  • 繊毛を使って泳ぎ、主に水中の細菌などを食べます。
  • 大核、小核、食胞、収縮胞など、1個の細胞の中にさまざまな構造を持っています。
  • 普段は二分裂によって増え、接合では別の個体と遺伝情報を交換します。
  • もとになるゾウリムシと培養環境を用意すれば、家庭でも増やすことができます。

ゾウリムシは顕微鏡でなければ詳しい姿を見ることができないほど小さな生きものです。しかし、1個の細胞だけで泳ぎ、食べ、余分な水を排出し、子孫を残すための仕組みまで備えています。

学校の理科ではおなじみの存在ですが、単細胞でどのように生活しているのかを知ると、その複雑な体のつくりが見えてきます。

主要参考文献

  • ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)ゾウリムシ「ゾウリムシ」「FAQ」
  • OpenStax, Biology 2e「Groups of Protists」
  • Mikami K. et al.「Microtubules mediate germ-nuclear behavior after meiosis in conjugation of Paramecium caudatum」
  • Scientific Reports「Endogenous physical regulation of population density in the freshwater protozoan Paramecium caudatum」
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