あなたは、クマムシという生き物をご存知ですか。クマムシは緩歩動物と呼ばれる生き物を指す言葉で、この緩歩動物の形を熊に見立てたことからクマムシと名付けられています。一部では「最強の生き物」とも呼ばれていて、その環境適応力のつよさから話題に欠かない生物です。ここでは、このクマムシについて紹介します。
大きさや外見の特徴
クマムシの大きさは平均すると0.5mmほど、最大でも1.5mmほどと、非常に小さな生き物です。最少のものだと0.1mmを下回り、最近は0.05mm以下のものも見つかっています。
クマムシは合わせて1000種以上が知られており、細かな外見は種類によって違いますが、全体的な特徴としては4対8本の足をもつことや、外部が硬いクチクラでおおわれていることなどが挙げられます。
名前の由来
クマムシは日本語にとどまらず英語でもwater bearと熊にちなんだ名前があり、この名前は歩き方が熊に似ていることから名付けられています。なお、クマムシが所属する緩歩動物門の学名はTardigradeといい、この名前はslow walkerを意味しています。
クマムシの生息域
クマムシは熱いところや寒いところ、陸にも海にもあらゆるところに生息しています。深海から高山、熱帯から北極、南極まであらゆる環境に適応して暮らしています。
このように至る所に生息しているクマムシですが、中でもクマムシを見つけやすいといわれるところは、地衣類やコケのある場所が挙げられます。とくにずぶぬれのコケのような場所でしばしば見つけられるとされています。他にも砂丘や砂浜などでも見つかることがあります。
クマムシの生態
クマムシの食べ物
多くのクマムシは植物食だったり、あるいは小さなバクテリアを食べて暮らしています。中には肉食のものもいて、それらのクマムシは自分より小さな種類のクマムシを食べたり、時として共食いをすることもあります。
クマムシの繁殖
クマムシの繁殖形態も種によって異なり、多くの種類は雌雄異体(多くの動物はこれですね)ですが、中には単為生殖(メスが単独で子をつくる)を行うものもいます。
卵は2週間程度で孵化し、おとなになるまで12回脱皮を行います。孵化した時からすでに大人になるためのすべての細胞をもっており、細胞分裂を行うことはありません。かわりに既に持っているそれぞれの細胞が肥大し、大人のサイズに育ちます。
乾眠状態って何?
クマムシは周囲の環境が限界を超えて乾燥状態になると、乾眠状態という状態に入ることが知られています。このような状態はクリプトビオシスと呼ばれます。
クマムシは乾眠状態に入る際、体中に持っている水分を数パーセント程度(もともとは体の85%が水分で構成されています)と極限まで減らします。さらに代謝もストップさせます。このような状態でまた水分を与えると、再度蘇生することができるとされています。
すべてのクマムシがこの乾眠状態に入れるわけではありませんが、このような凄い能力を持っているのもこのクマムシの特徴といえます。この乾眠状態になれる能力があるため、クマムシは通常の生き物が生きられないような非常に乾燥した条件下でも耐えられるのです。
そのほかのクマムシの凄い耐性
クマムシは乾燥に限らず温度や圧力などにも非常に高い耐性を持っています。例えば、クマムシは絶対零度(0K,-273℃)に近い超低温まで耐えることができ、100℃を超えるような非常に高温の環境でも同様に耐えることができます。
圧力に関してもほぼほぼ真空の条件下から75000気圧(地上の75000倍の圧力)でも耐えられるという研究結果があります。同様に、宇宙でも10日ほど生存できたという研究結果もあります。このように、地球上にいる生き物としては異次元の耐性の持ち主です。
クマムシの寿命
クマムシの寿命は通常長くても1年程度ですが、乾眠状態に入ると9年以上生きることができるといわれています。中には乾眠状態でもっと長く生きることができるともいわれていますが、現状確たる証拠はないようです。
最後に
このように、クマムシは非常に環境適応幅が広い生き物として知られています。