ナナフシの生態と特徴 | 種類や餌、飼育方法を解説

バッタやカマキリの仲間

木の枝を眺めていると、その一部がゆっくり動き出すことがあります。細長い体と脚を持ち、植物の枝に紛れて暮らすナナフシです。

ナナフシの仲間には、小枝そっくりの種類だけでなく、葉や樹皮のような姿をしたものもいます。動かずに植物へ紛れたり、風に揺れる枝のように体を動かしたりと、周囲の環境に溶け込む姿が特徴です。

日本にもナナフシモドキやエダナナフシ、ニホントビナナフシなどが生息しています。身近な種類は飼育することもでき、単為生殖や脚の再生など、興味深い生態を観察できます。

ここでは、ナナフシの特徴や日本で見られる種類、食べ物、繁殖、飼育方法などについて紹介します。


ナナフシとは

ナナフシは、ナナフシ目に分類される昆虫の総称です。英語では「stick insect」や「walking stick」などと呼ばれます。

世界では3600種を超えるナナフシが知られており、特に熱帯から亜熱帯に多くの種類が分布していて、現在も新しい種類の発見や分類の見直しが続いています。

日本にも複数の種類が暮らしており、北海道から南西諸島まで、地域の環境に応じてさまざまなナナフシを見ることができます。

枝や葉に似た姿

ナナフシで特に目立つのが、周囲の植物によく似た体です。

日本で身近なナナフシモドキやエダナナフシは、細長い体と脚によって小枝のように見えます。世界には体が幅広く、葉の形や葉脈まで再現したようなコノハムシの仲間もいます。

体色は緑色や褐色が中心ですが、同じ種類でも個体によって色に違いがあります。昼間は植物につかまって静止し、夜になると活動する種類も多く見られます。

歩くときに体を前後や左右へゆっくり揺らすこともあり、風に揺れる植物のような姿を見せます。

日本で見られる代表的なナナフシ

日本には姿や暮らし方の異なるナナフシが生息しています。

ここでは、コブナナフシ、エダナナフシ、ニホントビナナフシ、ナナフシモドキの4種類を紹介します。

コブナナフシ

コブナナフシは、南西諸島に分布するナナフシです。日本に自然分布する固有種として知られています。

体長は5cm前後で、ナナフシモドキなどに比べると体は短く太めです。体の表面には凹凸があり、褐色の姿は枯れ枝や樹皮によく似ています。

主に夜に活動し、昼間は植物などにつかまったまま静止しています。

オスとメスが見られ、交尾によって繁殖します。オスはメスより小さく、飼育下ではオスが長時間メスの背中に乗っている姿も観察されています。

エダナナフシ

エダナナフシは、本州、四国、九州などに分布するナナフシです。

オスは7.5cm前後、メスは9.5cm前後になり、名前の通り細い木の枝によく似ています。体色には緑色、褐色、灰褐色などがあります。

日当たりのよい雑木林や林縁などに暮らし、サクラ、ノイバラ、カシ、コナラなど、さまざまな植物の葉を食べます。

エダナナフシでは、オスとメスが繁殖する集団と、メスだけで増える集団の両方が知られています。低地や比較的暖かい地域ではオスとメスが見られ、標高の高い場所や寒冷な地域では単為生殖を行う集団が多く見られます。

ニホントビナナフシ

ニホントビナナフシは、本州、四国、九州、南西諸島などに分布しています。

オスは4cm弱、メスは5cm前後と、ナナフシモドキやエダナナフシより小型です。体は鮮やかな緑色をしたものが多く、成虫には翅があります。

シイやカシなどが生える森林で見られ、これらの葉を食べながら暮らします。

繁殖方法には地域差があります。本州などではメスが多く、単為生殖によって増える集団が知られています。屋久島より南ではオスもよく見られ、交尾による繁殖が行われています。

本州でもオスが現れることがあり、多摩動物公園では92匹を採集した際に1匹のオスが見つかったことがあります。

ナナフシモドキ

ナナフシモドキは、日本で特に身近なナナフシの一つです。単に「ナナフシ」と呼ばれることもあります。

本州、四国、九州に分布し、雑木林や林縁、公園などでも見ることができます。メスは8cm前後になり、体色は緑色から褐色までさまざまです。

サクラ、カシ、コナラ、エノキなど、多くの広葉樹の葉を食べます。

メスだけでも子孫を残せる

ナナフシモドキは、単為生殖を行うことで知られています。

メスはオスと交尾をしなくても卵を産み、その卵からメスの幼虫が生まれます。野外で見つかる個体もほとんどがメスです。

オスは非常に珍しく、2021年に長野県安曇野市で行われた調査では、採集された724匹のうちオスは1匹だけでした。

さらに2025年には、珍しく現れたオスの繁殖能力を調べた研究が発表されています。オスはメスと交尾しましたが、生まれた子にはオス由来の遺伝情報が確認されず、調べられたオスでは正常に機能する精子も確認されませんでした。

ナナフシモドキでは、オスが非常に珍しいだけでなく、メスだけで世代をつなぐ生活が強く定着しています。

エダナナフシとナナフシモドキの見分け方

エダナナフシとナナフシモドキは、どちらも日本の雑木林などで見られる細長いナナフシです。

見分けるときに分かりやすい特徴が触角です。

ナナフシモドキは触角が短く、頭の前に短い糸が伸びたように見えます。エダナナフシでは触角が非常に長く、頭部から細長く伸びています。

体色や大きさには個体差がありますが、触角は野外でも確認しやすい特徴です。

ナナフシは何を食べる?

ナナフシは植物の葉を食べて暮らしています。

利用する植物は種類によって異なります。さまざまな広葉樹を食べる種類もいれば、特定の植物の仲間をよく利用するものもいます。

ナナフシモドキではサクラ、カシ、コナラ、エノキなどが利用されます。エダナナフシもサクラやノイバラ、コナラなど、多くの植物の葉を食べます。

ニホントビナナフシはシイやカシなどの常緑広葉樹で見つかることが多い種類です。

野外でナナフシを探すときには、こうした植物の葉や細い枝をゆっくり観察してみましょう。体が枝によく似ているため、すぐ近くにいても気づかないことがあります。

卵も植物の種子のような姿

ナナフシは卵にも特徴があります。

多くの種類では、茶色や黒っぽい硬い殻を持った小さな卵を産みます。種類によって形や模様は異なりますが、植物の種子によく似ています。

産卵方法もさまざまです。ナナフシモドキなどでは、メスが植物の上から一粒ずつ卵を地面へ落とします。植物へ卵を貼り付ける種類や、土の中へ産む種類も知られています。

飼育中にケースの底を見ると、卵とフンが一緒に落ちていることがあります。卵はフンより硬く、種類ごとに特徴的な形をしています。

卵から成虫になるまで

ナナフシは、卵から生まれた幼虫が何度も脱皮を繰り返して成虫になります。

チョウやカブトムシのような蛹の時期はありません。孵化したばかりの幼虫も、成虫をそのまま小さくしたような細長い姿をしています。

日本のナナフシモドキなどでは、卵の状態で冬を越し、春になると幼虫が現れます。幼虫は植物の葉を食べながら成長し、夏から秋にかけて成虫になります。

成虫は産卵を続け、次の世代が卵として冬を越します。

種類や産卵された時期によっては卵の休眠期間が長くなり、孵化まで一年以上かかることもあります。

ナナフシの飼育方法

ナナフシモドキやエダナナフシなど、日本で身近な種類は餌となる植物を継続して用意できれば飼育できます。

飼育では、新鮮な餌と通気性に加えて、脱皮できる十分な高さを確保することが重要です。

高さのあるケースを用意する

ナナフシは脱皮するとき、枝やケースの上部につかまり、体を下へ垂らしながら古い皮から抜け出します。

飼育ケースには、ナナフシの体長の3倍程度の高さがあると脱皮するための空間を確保しやすくなります。

大きなナナフシモドキを飼う場合は、高さ30cm以上を目安にすると扱いやすくなります。

ケースの上部や餌の枝には、脚をしっかり掛けられる場所を作ります。ケース内の空気がこもらないよう、通気性も確保します。

小さな幼虫は細い隙間から出てしまうことがあるため、ケースの網目や隙間にも注意が必要です。

餌となる枝を入れる

野外で採集したナナフシを飼育するときには、見つけた植物を覚えておくと餌を用意しやすくなります。

ナナフシモドキやエダナナフシでは、サクラ、コナラ、カシ、エノキ、バラ類などの葉を食べます。

葉のついた枝を切り、水を入れた小さな容器に挿してケースへ入れると、葉を長く新鮮な状態に保てます。

水を入れた容器の口は、ティッシュや綿などでふさいでおきます。小さな幼虫が水へ落ちる事故を防ぐためです。

葉がしおれたり少なくなったりしたら、新しい枝に交換します。農薬が付着している可能性のある植物は餌には使いません。

水分の与え方

ナナフシは、葉の表面についた水滴から水分を取ることがあります。

飼育中は葉に適宜霧吹きなどを利用して水滴を作るとよいです。ケース内が長時間濡れた状態になるとカビが発生しやすいため、通気性のある環境を保ちます。

小さな幼虫では大きな水滴に張り付いてしまうこともあります。細かな霧を少量吹く程度で十分です。

脱皮中は静かに見守る

ナナフシは成長するまでに何度も脱皮します。

脱皮するときには枝などにつかまり、体を下向きにして古い皮から抜け出します。この途中で落下すると、脚や体がうまく伸びず、その後の生活に影響することがあります。

脱皮を始めた個体には触れず、ケースや枝を動かさずに見守ります。複数のナナフシを飼育するときは、それぞれがぶら下がれるだけの空間を用意する必要があります。

卵を産んだら

ナナフシモドキなどを飼育していると、ケースの底に卵が落ちていることがあります。

ナナフシモドキでは交尾をしていないメスも産卵し、その卵から幼虫が生まれます。

卵はフンと混ざりやすいため、繁殖させる場合はケースを掃除するときに分けておきます。

卵は通気のある容器へ移し、極端な乾燥や水分の多い状態を避けて保管します。日本の温帯に暮らすナナフシモドキやエダナナフシでは卵で冬を越し、春に孵化します。

孵化までに必要な期間は種類や産卵時期によって異なり、長期間休眠する卵もあります。

ナナフシの寿命

ナナフシの成長期間や成虫として過ごす期間は、種類や気温によって異なります。

日本のナナフシモドキやエダナナフシでは、基本的に一年に一世代が育ちます。春に孵化した幼虫が夏にかけて成長し、夏から秋に成虫となって産卵します。

冬になるころには成虫の多くが姿を消し、次の世代は卵の状態で春を待ちます。

海外には温暖な地域で暮らす種類や大型種も多く、飼育下では成虫になってから半年以上生きる種類もいます。

ナナフシに毒はある?

日本で身近なナナフシモドキやエダナナフシには、人を刺すための毒針や毒牙はありません。

一方、海外には外敵から身を守るため、胸部にある器官から刺激性のある分泌液を出すナナフシがいます。敵へ向かって液体を噴射する種類も知られ、目や粘膜に入ると強い刺激を受けることがあります。

身近なナナフシを観察するときにも、脚や体を強くつかまず、手の上へ自分から歩かせるようにすると傷つけにくくなります。

脚を切り離して逃げることがある

ナナフシには、外敵につかまれた脚を自ら切り離して逃げる種類がいます。この行動は「自切」と呼ばれます。

幼虫の時期に脚を失うと、その後の脱皮によって新しい脚が生えてくることがあります。

再生した直後の脚は小さく、脱皮を繰り返しながら次第に大きくなります。成虫はその後の脱皮を行わないため、成虫になってから失った脚は再生しません。

ナナフシを採集したり移動させたりするときは、細い脚をつままず、体を歩かせながら移動させると安全です。

ナナフシが身を守る方法

ナナフシは、植物に似た姿を生かして外敵から身を守ります。

日中は枝や葉につかまったままほとんど動かず、周囲の植物に紛れます。歩くときに体をゆっくり揺らす動きも、風に揺れる枝を思わせます。

敵に気づかれたときには地面へ落ちて動かなくなるものや、脚を切り離して逃げるものもいます。海外には翅を広げて鮮やかな色を見せたり、刺激性のある分泌液を放出したりする種類も知られています。

姿だけでなく行動にも、外敵から逃れるためのさまざまな特徴が見られます。

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まとめ

  • ナナフシはナナフシ目に属する昆虫で、世界では3600種を超える種類が知られています。
  • 木の枝や葉、樹皮などに似た姿で周囲の植物に紛れます。
  • 日本ではナナフシモドキ、エダナナフシ、ニホントビナナフシ、コブナナフシなどが見られます。
  • ナナフシモドキは主に単為生殖によって増え、オスは非常に珍しい種類です。
  • エダナナフシにはオスとメスがいる集団と、メスだけで増える集団があります。
  • エダナナフシとナナフシモドキは触角の長さが見分ける手がかりになります。
  • ナナフシは植物の葉を食べ、利用する植物は種類によって異なります。
  • 日本の身近な種類では、卵で冬を越して春に孵化するものが多く見られます。
  • 飼育では新鮮な餌、通気性、水分、脱皮するための高さが必要です。
  • 幼虫の時期に失った脚は、その後の脱皮によって再生することがあります。
  • 海外には防御のために刺激性の分泌液を出すナナフシもいます。

枝そっくりの姿で植物に紛れるナナフシですが、単為生殖や卵での越冬、脚の再生など、暮らしの中にもさまざまな特徴があります。

雑木林や公園で探すときには、葉の上だけでなく細い枝にも目を向けてみてください。

主要参考文献

  • Phasmida Species File Online
  • Nozaki et al. (2021) “Development of microsatellite markers for the geographically parthenogenetic stick insect Phraortes elongatus”
  • Nozaki et al. (2025) “Lack of successful sexual reproduction suggests the irreversible parthenogenesis in a stick insect” Ecology
  • Australian Museum「Care of Stick Insects」
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