白と黒にくっきり分かれた体と、長く伸びた尾。カササギはカラスの仲間で、光の当たり方によって翼や尾が青や緑に輝いて見える美しい鳥です。
日本では特に佐賀県周辺との結びつきが強く、「カチガラス」の名前でも親しまれています。一方で、七夕の伝説や百人一首にも登場し、実際の生態だけでなく、日本や中国の文化とも深く関わってきました。
この記事では、カササギの特徴や生息地、食べ物、繁殖、鳴き声に加えて、人間との関係や七夕・百人一首に登場するカササギについて紹介します。
白黒の体と長い尾が特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 和名 | カササギ |
| 学名 | Pica serica |
| 英名 | Oriental Magpie |
| 分類 | スズメ目・カラス科・カササギ属 |
| 全長 | 約45cm |
| 日本での主な生息地 | 佐賀平野を中心とした九州北西部など |
| 食性 | 雑食性 |
| 主な食べ物 | 昆虫、ミミズ、果実、種子、穀物、小動物など |
| 巣 | 小枝を組み合わせた大きな巣 |
| 産卵数 | 5~7個ほど |
| 別名 | カチガラス |
カササギは全長約45センチメートルで、一般的なカラスよりもやや小型です。
頭から胸、背中にかけては黒く、腹や肩の部分は白色です。一見すると単純な白黒模様ですが、黒い翼や長い尾には金属のような光沢があり、日光を受けると青や緑に輝いて見えます。
特に目立つのが長い尾です。飛んでいるときだけでなく、地面を歩いているときにも長い尾がよく目立つため、ほかのカラス科の鳥と見分ける手がかりになります。
現在の日本鳥類目録では、日本で見られるカササギは「Oriental Magpie」と呼ばれる種に分類されています。以前はヨーロッパなどに暮らすカササギと同じ種として扱われ、学名も Pica pica とされていました。
日本では佐賀平野を中心に暮らす
カササギの仲間は世界各地に分布していますが、日本のカササギは少し変わった分布をしています。
日本で特に多いのが、佐賀平野を中心とした九州北西部です。佐賀県のほか、福岡県南部、熊本県や長崎県の一部など、有明海を取り囲む地域で見られます。
佐賀では昔から身近な鳥で、「カチガラス」の名前で親しまれてきました。1965年には佐賀県の県鳥にも選ばれています。
なぜ日本のカササギがこの地域に集中しているのかについては、長く議論されてきました。
有力とされているのが、17世紀初めごろに朝鮮半島から九州北部へ人為的に持ち込まれ、その後定着したという説です。江戸時代初期の記録などを調べた研究からも、この可能性が高いと考えられています。
ただし、誰がどのように持ち込んだのかまで確実に分かっているわけではありません。
また近年は、九州とは離れた北海道でもカササギが定着しています。特に苫小牧市周辺では1990年代以降に個体群が形成され、市街地や住宅地、公園などで暮らす姿が確認されています。
人の近くで暮らすことが得意
カササギは深い森林だけで暮らす鳥ではありません。
農耕地、草地、林の縁、住宅地、公園など、開けた場所と樹木が組み合わさった環境を好みます。地面で食べ物を探すことが多いため、低い草地や畑なども重要な生活場所になります。
人間が暮らす地域にも入り込みやすく、日本では道路沿いや住宅地の電柱に巣を作る姿も珍しくありません。
佐賀平野では、かつて樹木に作られる巣が多かったものの、1970年代後半ごろから電柱を利用する割合が高くなったことが知られています。人の生活環境をうまく利用してきた鳥といえます。
昆虫から果実まで食べる雑食性
カササギはさまざまなものを食べる雑食性です。
地面を歩きながら昆虫やミミズなどを探すほか、果実、種子、穀物なども食べます。カエルなどの小動物や、ほかの鳥の卵や雛を食べることもあります。
食べ物を一種類に頼らず、その場所や季節に応じて利用できるものを食べるのが特徴です。
佐賀県では、昆虫やミミズだけでなく、柿などの果実や穀物、豆類などを食べる姿も知られています。
地上で食べ物を探しているときは、歩いたり跳ねたりしながら周囲を調べます。カラス科らしく、見つけた食べ物をすぐに食べず、隠して後から利用することもあります。
大きな巣を作って子育てをする
カササギの巣は、小枝を大量に組み合わせて作られます。
一般的な鳥の巣よりかなり大きく、外側を枝で囲った球状に近い形になることがあります。内部には泥や細い枝、草などを使った産座があります。
本来は高い木に巣を作りますが、日本では電柱や鉄塔などの人工物もよく利用します。
佐賀では早い個体が秋の終わりごろから巣作りを始め、冬から春にかけて本格的な繁殖準備を進めます。産卵は主に春で、一度に5~7個ほどの卵を産みます。
オスとメスはつがいを作り、繁殖期には巣の周辺を守りながら子育てを行います。
巣立ったばかりの若鳥はしばらく親の近くで過ごし、その後はほかの若い個体と集まって生活することもあります。
「カシャカシャ」と響く鳴き声
カササギはよく声を出す鳥です。
代表的なのが、「カシャカシャ」「カチカチ」と聞こえる、短い声を続けるような鳴き方です。
佐賀県で使われる「カチガラス」という呼び名も、この「カチカチ」と聞こえる鳴き声に由来するとされています。
実際の声にはさまざまな変化があり、短く鳴くこともあれば、何度も連続して激しく鳴くこともあります。仲間とのやり取りだけでなく、周囲に危険があるときにも声を出します。
興味深いことに、日本の佐賀県と韓国各地のカササギの鳴き声を比較した研究では、地域によって鳴き声の特徴に違いが見つかっています。
人間の方言とは仕組みが異なりますが、離れた地域の個体群で声に違いが生じることがある鳥です。
電柱に巣を作るカササギと人間
カササギは人間の生活圏を利用する一方、それによって問題が起こることもあります。
特に佐賀県では、電柱に巣を作るカササギが多く見られます。
巣そのものは小枝を中心に作られますが、ときには針金やハンガーなど人間が捨てた物を巣材として運ぶことがあります。金属が電気設備に触れると停電などの原因になる可能性があるため、電力設備との共存は地域特有の課題となっています。
一方で、カササギは佐賀を代表する鳥として長く親しまれてきました。
佐賀県と福岡県の一部では「カササギ生息地」が国の天然記念物に指定されています。カササギという種そのものではなく、カササギが暮らす地域を指定して保護しているのが特徴です。
近年の調査では、佐賀平野のカササギは1990年代以降減少していることも報告されています。
非常に身近な鳥でありながら、その数や分布は時代とともに変化しています。
七夕で天の川に橋を架ける鳥
カササギは、東アジアの文化にも古くから登場します。
特に有名なのが七夕です。
中国から伝わった伝説では、年に一度、七夕の夜に出会う織女と牽牛のために、カササギたちが集まって天の川に橋を作るとされています。
カササギが翼を並べて作るこの想像上の橋は「鵲の橋」や「鵲橋」と呼ばれます。
日本では織姫と彦星の物語として知られる七夕ですが、その背景にはカササギという鳥が重要な役割を持つ物語があるのです。
実際に日本でカササギを見たことがない人でも、古典文学を通じて「かささぎ」という名前を知っていることがあります。
百人一首にも登場するカササギ
カササギは『小倉百人一首』にも登場します。
中納言家持の名で収められている第6番の歌です。
かささぎの
渡せる橋に
置く霜の
白きを見れば
夜ぞふけにける
「かささぎの渡せる橋」は、七夕の夜にカササギが翼を並べて天の川に架けるという中国の伝説を踏まえた表現です。
歌については、白く輝く天の川を霜が降りた橋に見立てたという解釈があります。
一方で、「橋」を宮中の階段になぞらえ、冬の夜、宮中の階段に降りた白い霜を眺めた歌とする解釈もあります。七夕の伝説と宮中の風景を重ねたものと見る考え方もあります。
この歌が興味深いのは、百人一首に登場するカササギが、佐賀平野などに暮らしている実際のカササギを観察して詠んだものではない点です。
現在の九州のカササギ個体群は17世紀ごろに定着した可能性が高いのに対し、「鵲の橋」という言葉はそれよりはるか以前から中国由来の故事として日本文学に取り入れられていました。
カササギは、日本では実物を見る機会が限られていた時代から、空想上の天の川の橋を作る鳥として知られていたのです。
まとめ
カササギは、白黒の体と長い尾が目立つカラス科の鳥です。
- 日本では佐賀平野を中心とした九州北西部に多く、北海道にも定着した個体群がいる
- 昆虫やミミズ、果実、穀物、小動物などを食べる雑食性
- 木だけでなく電柱などの人工物にも大きな巣を作る
- 「カシャカシャ」「カチカチ」と聞こえる声で鳴き、佐賀ではカチガラスとも呼ばれる
- 七夕では天の川に橋を架ける鳥として登場し、百人一首にもその伝説をもとにした歌が残されている
身近な野鳥として人間のそばで暮らす一方、古くから文学や伝説の世界にも登場してきたことが、カササギの面白さの一つです。
主要参照元
- 日本鳥学会『日本鳥類目録 改訂第8版』
- 佐賀県「カササギ(カチガラス)の紹介」
- 国立環境研究所 侵入生物データベース
- Eguchi & Kubo, “The Origin of the Magpie in Japan”
- Ecology and Evolution「Population Declines of the Oriental Magpie in the Saga Plain, Japan」
- 全日本かるた協会「小倉百人一首」

