イトトンボの種類と生態|ヤゴの特徴や飼育方法も紹介

その他小さな生き物

イトトンボは、糸のように細い体と透明な翅を持つトンボの仲間です。

池や水田、湿地などでは、水草や草の先に止まった小さなイトトンボを見かけることがあります。成虫は小さな昆虫を捕らえて食べ、水中で暮らす幼虫のヤゴもミジンコやボウフラなどを捕食します。

一見するとよく似ていますが、種類によって体色や生息する水辺、産卵方法、冬の越し方まで違います。

ここでは、イトトンボとはどのようなトンボなのか、生態や代表的な種類、ヤゴの特徴と飼育方法まで紹介します。


イトトンボとは

「イトトンボ」という名前は、少し広い意味で使われることがあります。

分類上、「イトトンボ科」というグループがあり、アオモンイトトンボやアジアイトトンボ、クロイトトンボなどが含まれます。

一方、細長い姿をしたアオイトトンボ科やモノサシトンボ科なども、見た目からまとめてイトトンボの仲間として紹介されることがあります。

これらはトンボ目の「均翅亜目」に属する仲間です。この記事ではイトトンボ科を中心に、よく似た均翅亜目のトンボにも触れていきます。

イトトンボ類には、

  • 細長い腹部を持つ
  • 左右の複眼が離れている
  • 前翅と後翅の形がよく似ている
  • 多くの種類は止まると翅を背中側へ閉じる

といった特徴があります。

ただし、アオイトトンボの仲間のように、止まったときに翅を半開きにするものもいます。

ヤンマやアカトンボとの違い

ギンヤンマやシオカラトンボ、アカトンボなどは、主に「不均翅亜目」に分類されます。

不均翅亜目では後翅の付け根が前翅より幅広く、止まったときも翅を左右に開いている種類が多く見られます。体もイトトンボ類よりがっしりしたものが多く、飛ぶ力にも優れています。

イトトンボ類は体が細く、植物の間をゆっくり移動する姿がよく見られます。

ヤゴの姿もかなり違います。

イトトンボなど均翅亜目のヤゴは細長く、腹部の先に3枚の葉のような「尾さい」があります。ヤンマやトンボ科のヤゴには、このような大きな3枚の尾さいはありません。

イトトンボはどこに暮らしている?

イトトンボ類は、さまざまな水辺に暮らしています。

身近な種類なら、

  • 池や沼
  • 水田
  • 湿地
  • 水路
  • 流れのゆるい川

などで見つけることができます。

水草が豊富な池では、成虫だけでなくヤゴも水草の間に隠れて生活しています。

ただし、生息環境は種類によってかなり違います。

アオモンイトトンボのように身近な池や水田でも見られる種類がいる一方、ヒヌマイトトンボは河口付近のヨシ原など、海水の影響を受ける汽水域に暮らします。

限られた湿地や寒冷な水辺など、特定の環境に強く依存する種類もいます。

イトトンボは何を食べる?

イトトンボの成虫は肉食性です。

ユスリカや小型のハエなど、自分より小さな昆虫を捕らえて食べます。

大型のヤンマのように広い範囲を高速で飛び続けるよりも、水辺の植物や草むらの間を移動しながら、小さな昆虫を探す種類が多く見られます。

ヤゴも同じく肉食性です。

水中では、

  • ミジンコ
  • ボウフラ
  • アカムシ
  • イトミミズ
  • 小型の水生昆虫

などを捕らえます。

小さなイトトンボのヤゴも、水中では立派な捕食者です。

ヤゴは伸びる口で獲物を捕まえる

トンボのヤゴには、獲物を捕らえるための変わった口があります。

普段は頭の下に折りたたまれている「下唇」という部分を、獲物が近づいた瞬間に前へ伸ばします。

イトトンボのヤゴも同じ方法で、ミジンコや水生昆虫などを捕らえます。

イトトンボ科のヤゴは小型で、終齢になっても尾さいを含めて1.5〜2cm前後の種類が多く見られます。

細い体で水草につかまり、植物の間に隠れて獲物を待っています。

お尻にある3枚の葉のようなもの

イトトンボ類のヤゴを見分けるとき、分かりやすい特徴が腹部の先です。

お尻には「尾さい」と呼ばれる、葉のような3枚の器官があります。

尾さいは呼吸にも関わると考えられているほか、水中を泳ぐときにも使われます。

ただし、トンボの幼虫は体内にも呼吸に関わる仕組みを持っているため、尾さいだけで呼吸しているわけではありません。

種類によって尾さいの細さや形、模様も異なり、ヤゴを見分ける手がかりにもなります。

オスとメスがつながって飛ぶ理由

繁殖期になると、2匹のイトトンボがつながったまま飛んでいる姿を見かけることがあります。

オスは腹部の先端でメスの胸の近くをつかみます。この状態が「タンデム」です。

交尾するときは、メスが腹部を曲げて、腹端をオスの腹部前方にある交尾器官へつなげます。

このとき2匹の体が輪のようになり、見る角度によってはハート形に見えます。

交尾のあと、そのままオスとメスがつながって産卵する種類もいれば、メスだけで産卵する種類もいます。

水草の中に卵を産む

イトトンボ類では、植物の組織の中へ卵を産む種類が多く見られます。

メスは産卵管を使って水草の葉や茎などに小さな切れ込みを入れ、その中へ卵を産みます。

産卵方法は種類によって異なります。

オスがメスをつかんだまま産卵するものもいれば、アオモンイトトンボのようにメスが単独で産卵する種類もいます。

さらに、体を水中へ沈めながら産卵する種類もいます。

細い体をしたよく似たトンボでも、繁殖行動にはさまざまな違いがあります。

卵からヤゴ、そして成虫へ

卵から孵化すると、水中で暮らすヤゴになります。

ヤゴは小さな生き物を食べながら何度も脱皮し、少しずつ成長します。

成長に必要な期間は種類や気温によって異なります。短い期間で成長するものもいれば、冬を越してから翌年以降に羽化するものもいます。

成虫になる時期が近づくと、ヤゴは水面付近へ移動します。

やがて水草や植物の茎を登って水上へ出ると、背中が割れて成虫の体が現れます。

羽化直後の翅はまだ柔らかく、時間をかけて伸ばしていきます。体が固まると飛び立ち、成虫としての生活が始まります。

イトトンボはどうやって冬を越す?

冬の越し方も種類によって違います。

卵で冬を越すものもいれば、ヤゴのまま水中で過ごすものもいます。

さらに、日本には成虫で冬を越す均翅亜目のトンボもいます。

代表的なのが、

  • オツネントンボ
  • ホソミオツネントンボ
  • ホソミイトトンボ

です。

ホソミオツネントンボは冬の間は褐色ですが、春になって成熟すると鮮やかな水色へ変化します。

「トンボは秋になるとすべて死んでしまう」というわけではなく、種類によって卵、ヤゴ、成虫と異なる姿で冬を過ごしています。

日本で見られる代表的なイトトンボ

日本には多くのイトトンボ類が生息しています。

アオモンイトトンボ

池や沼、水田などで見られる身近なイトトンボです。

成熟したオスは黒っぽい腹部の先に水色の部分があり、本州では岩手県以南から南西諸島まで広く分布しています。

アジアイトトンボ

アオモンイトトンボによく似た種類です。

北海道から南西諸島まで広く分布しています。

オスでは腹部の水色になる位置がアオモンイトトンボと異なり、見分けるポイントになります。

クロイトトンボ

北海道、本州、四国、九州などに分布します。

成熟したオスは黒っぽい体に青白い粉をまとったような姿になります。

水草のある池などでよく見られるイトトンボです。

キイトトンボ

腹部の黄色がよく目立つイトトンボです。

本州、四国、九州などに分布し、水草の豊富な池や湿地などで見られます。

ベニイトトンボ

成熟したオスの赤い体が特徴です。

本州、四国、九州に分布しますが、生息地は比較的限られています。

ヒヌマイトトンボ

河口付近に広がるヨシ原などを代表的な生息地とする小型のイトトンボです。

汽水域を利用する珍しい暮らしをしており、生息地は限られています。

イトトンボに似た仲間

細い体を持つ均翅亜目には、イトトンボ科以外にもよく似たトンボがいます。

モノサシトンボはモノサシトンボ科の仲間で、腹部に目盛りのような模様が並んでいます。

アオイトトンボやホソミオツネントンボはアオイトトンボ科です。

見た目はどれも細長いため、野外ではまとめてイトトンボのように見えますが、分類上は別の科に分かれています。

イトトンボのヤゴを飼育するには

イトトンボの成虫は、生きた小さな昆虫を空中で捕らえるため、長期間の飼育は簡単ではありません。

一方、ヤゴは小さな容器でも観察でき、環境を整えれば羽化まで育てることができます。

飼育容器

小型のプラスチックケースや水槽を利用できます。

イトトンボのヤゴは小さいため、水を深くする必要はありません。水草や枝などを入れて、ヤゴがつかまりやすく、様子も観察しやすい環境にします。

水は採集場所の水や、塩素を抜いた水を利用できます。

水草や落ち葉などを少量入れると、ヤゴがつかまったり隠れたりする場所になります。

直射日光が当たる場所では水温が急激に上がるため、明るい日陰などで管理します。

基本は1匹ずつ飼育する

ヤゴは肉食性なので、ほかのヤゴを食べてしまうことがあります。

特に体の大きさが違う個体を狭い容器へ一緒に入れると、共食いが起こりやすくなります。

確実に羽化まで観察したい場合は、1匹ずつ分けて飼育する方法が管理しやすいでしょう。

複数飼育する場合は十分な広さを確保し、水草などの隠れ場所を多くします。

ヤゴの餌

イトトンボのヤゴには、体の大きさに合った小さな動物を与えます。

利用しやすい餌には、

  • ミジンコ
  • ボウフラ
  • アカムシ
  • イトミミズ

などがあります。

小さなヤゴにはミジンコなどの小型の餌が向いています。

冷凍アカムシを利用する場合は、そのままでは反応しないことがあります。解凍したアカムシをピンセットでつまみ、ヤゴの目の前で軽く動かすと捕らえることがあります。

餌は一度にたくさん入れず、食べ残したものは取り除きます。

水が汚れたら一部を交換し、急激に環境を変えないように管理します。

羽化するための足場を用意する

ヤゴを羽化まで飼育するなら、水から登れる足場が欠かせません。

飼育容器には、

  • 水草
  • 細い枝
  • 割り箸

などを立て、水面から十分上まで伸びるようにします。

羽化が近くなると、ヤゴは餌を食べなくなったり、水面近くへ頻繁に移動したりするようになります。

やがて足場を登って水から出て、そこで羽化します。

成虫が翅を伸ばす空間も必要なので、足場の上には十分な高さを確保しておきます。

羽化中は触らない

羽化直後のイトトンボは、体も翅も非常に柔らかい状態です。

しわのある翅を少しずつ伸ばし、時間をかけて体を固めていきます。

この途中で体に触れたり、容器を大きく動かしたりすると、落下したり翅が変形したりすることがあります。

羽化が始まったら、そのまま静かに観察します。

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まとめ

イトトンボは、細長い体と繊細な翅を持つ均翅亜目のトンボです。

  • イトトンボ科のほかにも、よく似た均翅亜目の仲間がいる
  • 左右の複眼が離れている
  • 前翅と後翅の形がよく似ている
  • 成虫はユスリカなどの小さな昆虫を食べる
  • ヤゴも肉食性で、ミジンコやボウフラなどを捕らえる
  • ヤゴの腹部の先には3枚の尾さいがある
  • 多くの種類は植物の組織の中に卵を産む
  • 冬を卵やヤゴで越す種類のほか、成虫で越冬するものもいる
  • ヤゴは小さな容器でも飼育できる
  • 共食いを防ぎ、羽化用の足場を用意することが大切

一見するとどれもよく似ていますが、体色や暮らす水辺、繁殖方法、冬の過ごし方には種類ごとの違いがあります。

身近な池や水田で成虫を見つけたら、水草の間に暮らす小さなヤゴにも目を向けてみると、イトトンボの生活をさらに深く知ることができます。

📚主要参照元

  • 神戸のトンボ「デジタルトンボ図鑑」
  • 神戸のトンボ「トンボの生態学」
  • 神戸のトンボ「兵庫県の幼虫ガイド」
  • 墨田区「ヤゴ救出作戦マニュアル」
  • 甲賀市「ヤゴ(トンボ)を飼う」
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