クツワムシとは|鳴き声・食べ物・生態・飼育方法を解説

バッタやカマキリの仲間

「ガチャガチャガチャ」と、夜の草むらから響いてくる大きな鳴き声。クツワムシは、秋に声を聞かせる昆虫の中でも特に存在感のある種類です。

幅の広い翅は葉のような形をしており、緑色の個体だけでなく褐色の個体も見られます。林の縁やクズなどが茂る草地に暮らし、夏の終わりから秋になるとオスが夜間に盛んに鳴きます。

ここでは、クツワムシの大きさや生息地、食べ物、鳴き声、成長、オスとメスの違い、飼育方法について紹介します。


クツワムシとは

クツワムシは、バッタ目に属する大型の鳴く虫です。

キリギリス類に近い仲間で、長い触角と発達した後脚、幅広い前翅を持っています。

体そのものの長さは3cm台ですが、翅の先端まで含めると5cm前後になり、秋に鳴く虫としてはかなり大型です。

体色には緑色と褐色を中心とした違いがあり、赤褐色や黄褐色に見える個体もいます。

前翅には葉脈のような模様が見られ、植物の葉の中にいると意外なほど目立ちません。

国内では本州、四国、九州、対馬などに分布しています。

林の縁や丈の高い草地に暮らす

クツワムシは、低く刈り込まれた草地よりも、植物が豊かに茂った場所を好みます。

平地から丘陵地の林縁、河原、畑の周辺、道路沿いなどに見られ、特に広葉植物やクズなどが繁茂する場所が代表的な生息環境です。

クズの群落はクツワムシにとって、食べ物を得られるだけでなく、昼間に身を隠す場所にもなります。

日中は葉の間などに潜んでいることが多いため、実際の姿を探すのは簡単ではありません。

一方、夏の終わりから秋の夜になると大きな声で鳴くため、姿を見る前に鳴き声によって存在に気づくことがあります。

「ガチャガチャ」と大きな声で鳴く

クツワムシを代表する特徴が、非常に大きな鳴き声です。

一般には「ガチャガチャガチャ」「ガシャガシャガシャ」などと表現されます。

スズムシのような澄んだ音色とはかなり異なり、近くで聞くと驚くほど力強い音です。

鳴くのはオスで、前翅をこすり合わせることで音を出します。

鳴き声にはメスへ自分の存在を知らせる役割があり、繁殖期になると夜の草むらから盛んに聞こえてきます。

多くの個体が同じ場所で鳴いていると、かなりにぎやかになります。

名前の由来は馬具の「轡」

クツワムシの「クツワ」は、馬の口に取り付ける馬具の「轡」に由来するとされています。

轡などの金属が触れ合ったときの音と、クツワムシの「ガチャガチャ」という鳴き声が似ていることから、この名前が付いたと考えられています。

鳴き声をそのまま表した「ガチャガチャ」という呼び名もあります。

童謡『虫のこえ』にもクツワムシが登場しており、日本では古くから秋の鳴く虫として親しまれてきました。

緑色と褐色の個体がいる

褐色のクツワムシのイメージ
AI生成イメージ

クツワムシには緑色型と褐色型があります。

緑色の個体は生きた葉の中にいると目立ちにくく、褐色系の個体は枯れ葉や枝のある場所になじみやすい色をしています。

色が違っていても別種ではありません。さらに、幅広い翅自体が葉のような形をしているため、植物の中に隠れている個体を見つけるのは簡単ではありません。

鳴き声がすぐ近くから聞こえているのに姿が見つからないことがあるのも、こうした外見と生活場所が関係しています。

クツワムシは何を食べる

クツワムシは、植物を中心に食べます。特によく知られているのがクズで、幼虫も成虫もクズなどの葉を食べます。

そのほかにも、さまざまな植物の葉を利用します。資料によっては雑食性とされていますが、食性は植物寄りで、野外では植物の葉が食事の中心です。

クズなどの植物が豊富に生えている場所は、クツワムシにとって餌場と隠れ場所の両方を兼ねています。

卵の状態で冬を越す

クツワムシは基本的に1年に1世代を繰り返します。夏から秋に成虫となり、繁殖を終えたメスは土の中へ卵を産みます。

卵はそのまま冬を越し、翌年の春になると幼虫が現れます。東京動物園協会の飼育記録では、5月ごろに幼虫が孵化すると紹介されています。

幼虫は成虫を小さくしたような姿をしていますが、まだ完成した翅を持っていません。クズなどの葉を食べながら成長し、脱皮を繰り返して夏には成虫になります。

幼虫は5回脱皮する

クツワムシの幼虫は、成虫になるまで5回脱皮します。

体が大きくなると、それまでの外皮では窮屈になるため、古い皮を脱いで新しい体へ変わっていきます。

脱皮するときには葉の裏などにつかまり、頭を下にしてぶら下がります。

古い皮から抜け出した直後の体は柔らかく、時間が経つにつれて新しい外皮が硬くなります。

脱皮を繰り返すにつれて翅も発達し、最後の脱皮を終えると成虫になります。

オスとメスの違い

成虫になると、オスとメスは比較的簡単に見分けられます。

最も分かりやすいのが腹部の先端です。メスには、卵を土の中へ産み込むための長い産卵管があります。一方、オスにはこのような長い産卵管がありません。

また、大きな声で鳴くのはオスです。そのため、夜の草むらから「ガチャガチャ」という声が聞こえてきた場合、その声を出しているのはオスということになります。

メスは土の中に卵を産む

交尾を終えたメスは、腹部の先にある産卵管を使って土の中へ卵を産みます。

卵は地中で冬を越し、翌春になると幼虫が孵化します。春に生まれた幼虫は植物を食べながら成長し、夏から秋に成虫となります。

そして成虫が再び交尾と産卵を行い、次の世代が卵で冬を越します。

クツワムシは、この一年のサイクルを繰り返しながら生活しています。

タイワンクツワムシとよく似ている

クツワムシによく似た仲間に、タイワンクツワムシがいます。どちらも大型で、幅広い翅を持ち、大きな声で鳴くため、慣れていないと見分けにくい昆虫です。

両種を詳しく見分けるときには、オスの前翅や発音器の形、メスの産卵管、胸部の模様などが手掛かりになります。

単純に「大きい」「緑色」「声が大きい」といった特徴だけで判断するのは難しい場合があります。

クツワムシの飼育方法

緑色のクツワムシ
AI生成イメージ

クツワムシは家庭で飼育することもできます。

大型で植物の上を生活場所としているため、十分な広さと高さのある容器を用意すると観察しやすくなります。

大きめの飼育ケースを用意する

クツワムシは翅の先まで約5cmあり、触角や後脚も長い昆虫です。

そのため、小さな容器へ多数を入れるより、ある程度余裕のある昆虫用ケースを使用します。

ケースの中にはクズの葉や枝などを入れ、つかまったり隠れたりできる場所を作ります。

直射日光が当たる場所ではケース内が急激に高温になることがあるため、日差しの強い窓辺などは避けます。

また、蒸れを防ぐために通気性を確保します。

餌はクズなどの葉を与える

飼育では、野外でも利用しているクズなどの新鮮な葉を与えます。

食べ残した葉が枯れたり傷んだりしたら、新しいものへ交換します。

野外から餌となる植物を採取するときは、殺虫剤や農薬が使われている可能性のある場所を避けます。

クツワムシは成長した個体ほど食べる量も増えるため、複数飼育する場合は十分な餌を用意します。

水分とケース内の蒸れに注意する

クツワムシは新鮮な植物から水分を取ることができます。

植物を長持ちさせるために茎を水へ差す場合は、虫が水の中へ落ちないよう、容器の口をふさぐなどの工夫をします。

ケース全体を常に湿らせる必要はありません。

特に暑い時期は、湿度だけでなく高温と蒸れにも注意します。

オスの鳴き声はかなり大きい

室内でオスを飼育すると、夜になると大きな声で鳴くことがあります。

クツワムシの鳴き声はもともとかなり大きいため、近距離では想像以上に響きます。

鳴き声を観察したい場合でも、寝室など静かさが必要な場所にケースを置くと気になる可能性があります。

飼育を始める前に、置き場所を考えておくとよいでしょう。

繁殖には土が必要

クツワムシのメスは土中へ産卵します。

成虫を繁殖させたい場合は、産卵管を差し込める土をケース内に用意します。

産み付けられた卵はすぐに孵化するのではなく、卵の状態で冬を越して翌春に幼虫が現れます。

そのため、成虫を秋の間だけ観察する飼育と比べ、次の世代まで育てる場合は長期間の管理が必要になります。

地域によっては生息地が減っている

クツワムシは本州から九州まで分布していますが、どこにでも同じように多く生息しているわけではありません。

クツワムシが好む林縁や丈の高い草地、広葉植物が茂る場所は、土地の開発や草地管理の変化などによって失われることがあります。

愛媛県ではクツワムシが準絶滅危惧に分類されており、平野部の開発による生息地の消失や分断が指摘されています。

一度地域から姿を消すと、飛翔によって遠くから再び移り住む能力が高くないため、生息地だけが回復しても個体群がすぐに戻るとは限りません。

秋の身近な鳴く虫という印象がありますが、地域によって生息状況は大きく異なります。

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まとめ

クツワムシは、大きな鳴き声と葉のような翅を持つ、秋を代表する鳴く虫のひとつです。

  • 体そのものは3cm台で、翅の先まで約5cmになる
  • 緑色型と褐色型がいる
  • 本州、四国、九州、対馬などに分布する
  • 林縁や丈の高い草地、クズなどが茂る場所で暮らす
  • オスは夜に「ガチャガチャ」と大きな声で鳴く
  • 名前は馬具の「轡」の音に由来するとされる
  • クズなど植物の葉を中心に食べる
  • メスは土の中へ卵を産む
  • 卵の状態で冬を越す
  • 春に孵化した幼虫は5回脱皮して成虫になる
  • 家庭で飼育することもできる
  • 地域によっては生息地の減少が問題になっている

大きな鳴き声ばかりが注目されやすいクツワムシですが、その姿を見ると、葉に似た幅広い翅や体色など、植物の中で暮らす昆虫らしい特徴も持っています。

昼間は葉の中に隠れ、夜になると一転して大きな声を響かせます。春に卵から生まれ、夏まで成長し、秋に鳴いて次の世代を残すという一年の暮らしを知ると、その「ガチャガチャ」という声も秋の草地の営みのひとつとして聞こえてくるでしょう。

主要参考資料

  • 国土交通省 中国地方整備局「クツワムシ」
  • 東京動物園協会「ぶら下がってじっくりと…クツワムシの脱皮」
  • 愛媛県「愛媛県レッドデータブック クツワムシ」
  • 京都府「京の虫の音ブックレット」
  • Orthoptera Species File「Mecopoda niponensis」

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